注目
「よく分かったね。結構探したんじゃない?」
「いや、ここじゃないかと目星をつけて来ました。」
彼はステージを見ながら、口角を上げた。
「こんな大きいハコでやるのは?」
「初めてです。」
「だろうね。…こんな上の方にもお客さん入るって凄いよね。」
「はい。」
「俺はここらへんの席の人たちにも届くようにやる。まぁ実際ステージから見えるのは、前から10列目くらいまでだけど。」
「1万5千人があのステージに注目するんですね…。」
自分で言いながら、小さい田舎町の人口くらいならすっぽり収まるんじゃないかという規模に、今更圧倒される。
「…大丈夫、恐れることはない。俺がついてるから。…なんて、俺も緊張してるんだけどね。」
サナダさんは立ち上がって、わたしの肩をぽんと叩いた。
「一番最後、客席がライトアップされて、ステージから全体が見渡せる。それ想像すると、ヤバいね。息できなくなる。深呼吸の練習しといたほうがいいかも。」
そう言いながら、階段を降りてアリーナを出た。そんなことが言えるサナダさんは、まだまだ余裕があるように見えた。わたしも遅れないよう、その後ろをついて行った。




