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晴天

何日か経ち、ついにプリーメルのライヴの日がやってきた。色んな気持ちに整理をつけるのは、この日が終わってからにしようと思っていたので、ライヴの事以外は考えないようにしていた。


おそらく父は、母がわたしに離婚の件を話したということは知っていたと思う。でも父は何も言わなかったし、わたしも何も言わなかった。言わなくても伝わるものがあったから。この日は爽やかに晴れていて、プリーメルの門出にふさわしい天気だった。聞くところによると、彼らのライヴが行われる日は必ず晴れていて、ファンの間では「晴れバンド」とも呼ばれているらしかった。本番に立つステージは、1万5千人入る、大規模なアリーナだ。


朝、父と一緒に控え室に入ると、プリーメルのみんなが談笑していた。


「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」


わたしは頭を下げた。


「ついに来たね。今日は盛り上げるから、よろしくね!」


コウイチさんはこないだの時のように、親指を立てた。


「あんまりハメ外して、最後声出なくなんねぇようにな!玲香ちゃんの出る幕なくなるから。」


ユッキーさんがコウイチさんの肩に手をかけた。


「大丈夫。今日は完璧な仕上がりだから。」


コウイチさんもユッキーさんの肩に手をかけた。ふと気づくと、サナダさんの姿が見えないことに気づいた。


「…あの、サナダさんは?」


「多分あいつ、客席にいる。いつもそうなんだ。そこで気持ち作ってる。」


マシロさんが答えてくれた。


「…そろそろ打ち合わせだから、玲香呼んできてくれ。」


父から言われ、「うん」と頷いた。控え室を出て客席に続く廊下を歩く。歩きながら、うんとは言ったものの、1万5千人の客席の中から、サナダさんを見つけ出すことなんて至難の業ではないかと不安になった。でも不思議と見当がついた客席に近い、岩のように大きくて重い扉を開けた。


次の瞬間、ステージからぶわっと風を受け、思わず目をつぶった。目を開けると客席から向かって右手側にステージが見渡せた。照明の確認をしているので、キラキラ色んな色で輝いていた。あれがわたしが立つステージ。こんなに遠くからでも、会場が一体になる様子が想像できた。扉近くの階段を上ると、やはり彼が客席に座っていた。近づくとわたしに気づいて、微笑んだ。


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