盗族者
まずは、食事を。
俺は、夜中にパン屋へ忍びこんだ。
「今日はもう誰もいないはずだ。何か一つ盗んで、
帰るか…。」
俺は事前に調べておいた情報を口に出しながら、店に入った。
「誰だ?お前は、ウィリか⁉︎」
なっ⁉︎嘘だろ!今日はいないって‼︎
俺は急いで店を出て、走り出した。
「待て〜クソガキ!」店にいたおっさんは、怒鳴っていたが
追いかけて来なかった。
ラッキー!神様ありがとな。
って、神なんて信じてねぇけど…。
俺は店を出る際に盗んだパンを食べながら、適当に歩いていると
見た事がない屋敷の前に来た。
「なんだよ…ここ。初めて見た。
いつの間に出来たんだよ。」
その屋敷は、見るからにお金持ちの貴族様方が住んでいそうな
雰囲気が漂っていた。
壁は赤いレンガと白いレンガで作られ、所々金が使われている大きな屋敷だ。
その屋敷を囲うように広がる大きな庭園は、色々な植物が綺麗に手入れされていた。
「ッチ‥いいよなぁ、金持ちはこんなでけぇ屋敷に住んで、美味しい飯を腹いっぱいに
食えて。…俺には、一生縁のない所だな。」
俺は呟いて歩き出そうとすると、屋敷の扉が開いた。
「………………んだよ、これ。入れってか?」