表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【夢、実現いたします】  作者: 石田あやね
3/12

第3話『再会』

 画面にニュースキャスターの女性が映り、淡々とした口調でニュースを読み上げる。


『前日の未明、谷山和真(たにやまかずま)くん(13)が自宅の寝室で遺体となって発見されました』


 そのニュースを耳にした途端、美由紀はテレビに釘付けになった。


『和真くんはベッドで仰向けの状態で、死因は口の中に土が詰め込まれたことによる窒息死だと断定されました。警察はこれを殺人事件とみて捜査すると発表し、詳しい原因を調べるため、和真くんの両親に事情を確認している模様です』


 ニュースのコメンテーターが事件の内容を語り始める。


『口の中に土を詰め込むなんて残虐極まりない。一体何が起きたんでしょうか? やはり、両親が関わってるんでしょうかね?』

『家の中で起きたなら、身近な人間の仕業としか考えられません……和真くんがどれほど怖かったか、心が痛みますね』


 すでに、その子の親が犯人だと疑っているかのような言動が飛び交う。


「可哀想にな」

「梨花、口に土なんて絶対に嫌っ」


 やっと朝食に口を付けながら、ふたりは他人事のように話していた。だが、美由紀は違う。


 美由紀は谷山和真を知っていた。

 正確には、和真の母親を知っていた。


 あの神社の話題が出た瞬間から、背筋が凍るような恐怖感が美由紀を襲う。自分にも何かが起こると、なぜかわからないが直感した。






 子供と夫を送り出し、美由紀は未だに感じる不安に怯えながらリビングへと戻る。すると、それを狙ったかのようにしてスマホから着信音が鳴り響いた。


 画面に表示された名前は“高籏鐙子(たかはたとうこ)”。


 少し出たくない衝動に駆られるが、美由紀は嫌々ながら通話のマークに指をスライドさせる。


「はい」

『美由紀、久しぶり』

「久しぶり……朝からどうしたの?」

『テレビ見たわよね』


 さっきのニュースを差しているんだと、美由紀はすぐに悟った。


「ええ、見たわ」

『それについて話があるの……今日すぐにでも会えない? 場所はあの神社で』

「えっ? 別に神社じゃなくてもいいでしょ!」

『確かめたいことがあるのよ』


 正直、鐙子とは関わり合いたくなかった。

 彼女とは小学校時代からの腐れ縁。昔から自己主張が強く、傲慢で、人を見下すようなタイプ。けれど、当時はどうしても彼女に逆らうことができなかった。


 あの時も、そうだったように……


『ねぇ、聞いてる?』


 なかなか返事をしない美由紀に、少し苛立った口調で言う。


「わたし、今からパートに行かなきゃいけないのよ」


 やんわり断ろうとしたのだが、鐙子はそれを許さなかった。


『だったらパートが終わってからでいいでしょ? 何時に終わるの?』

「二時だけど……夕食の準備もあるし」

『そんなの適当でいいでしょ! いい? 待ってるから必ず来なさいよ!』


 そこで強制的に通話が終了されてしまう。

 別に行くことはない。彼女と無理に会わなきゃいけない理由はないのだ。なのに、昔から染み付いた習慣のようなものなのだろうか。鐙子を拒んだ後のことを考えてしまい、行くしかないと思ってしまっている自分がいた。





 午後二時をまわり、パートを終えた美由紀は結局、神社へと足を向ける。嫌々ながらも来てしまう自分が情けなく、自己嫌悪に苛まれた。


 かなり、気が重い。

 本当なら、二度と来たくはなかった。


 「美由紀っ」


 神社の前に来た途端、階段の上から手を振る鐙子の声が届く。顔をゆっくり上げると、美由紀の表情が違う意味で曇った。


 二十年も経てば、老けるのは当然のこと。だが、現れた鐙子はあの頃とあまり変わっていなかった。高級ブランドの服を着こなし、メイクや髪型も流行りを取り入れた若々しいスタイル。同じ三十代後半を迎える女性とは思えず、自分との大差にショックを覚えた。


 無意識に乱れた髪を耳にかけ直し、俯きながら階段を上っていく。鐙子と向かい合ったと同時に、美由紀は軽く会釈した。


「お久しぶりです」

「なーに? 他人行儀ねぇ……私たち友達でしょ?」


 同級生なのは認めるが、友達だなんて一度も思ったことはない。頭の中でそんなことを考えながら、美由紀は話を切り出した。


「それで? 確かめたいことってなんなの?」

「あれよ、あれっ」


 鐙子が指を差した方へと顔を向ける。そこには変わらず、あの大きな杉の木が聳え立っていた。嫌な記憶と重なったせいか、ひどい寒気を覚える。美由紀は少し震える腕を静かにさすった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ