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リリスと三国同盟①


「ダムザ様、全てのテレス聖教関連施設の破壊及び、聖教徒の粛清が終了致しました」


 謁見室の玉座に座るダムザに対し、片膝を突いたアドバン・ラザールが報告する。本来、近衛隊長が実行すべき職務ではないが、ダムザによる勅命を受け、任務を遂行してきたのである。


「良くやった」

 満足気に頷くダムザが、アドバンに声を掛ける。

「それで、イリアはどうした?」

 続いた言葉に対する対応は、アドバンの背後に立っていた第一夫人であるララが言った。

「イリアは何があってもダムザ様には従わぬと申しましたので、灰にして参りました」

 ダムザはほんの一瞬表情を歪めたが、直ぐに鷹揚に片手を上げた。

「御苦労だった。下がって休むが良い」

「ハッ」

「畏まりました」


 2人が去った後、ダムザは傍らに控えるリリスに向かって右手を出した。リリスは、要求されるよりも先に用意していたグラスを渡す。その深いガラス製のグラスには、溢れるほどに深紅の飲み物が注がれていた。ダムザはそれを口に運ぶと、いつもとは違う声音で言葉を紡いだ。


「リリスよ、余の支配率が50パーセントを超えたようだ」


 闇夜において、どこまでも響き渡るようなバリトンの声がリリスの耳に届く。その瞬間、リリスはダムザの前に回り込み、片膝を突いて涙を流した。


「ああ、ああ・・・お帰りなさいませ、御主人様」

「うむ。オマエも無事で何よりだ」

 涙を流しながら満面の笑みを浮かべるリリスは、先程までの怠惰な娼婦とは全く違う気配を纏っている。それは、歴戦の戦士と遜色のないものだった。


「しかし、余の力は半分しか戻っておらぬ。まだ暫く時間が必要であろう。とはいえ、最早、この身体の主導権は完全に余のものだ。もう心配はいらぬであろう」


 手にしたグラスを呷りながら、ダムザがリリスに直接命令する。

「力が完全に戻ると同時に、余は世界を滅ぼす!!」

「はい」

「そのためには、一刻も早くこの大陸を掌握する必要がある。ガザドランはアニノートでゲリラ戦の真っ只中。アドバンとララは、ここで余の護衛をさせねばならぬ。

 リリスよ、オマエが行って、三国同盟を傘下に収めて参れ」

「容易い御用です。お任せ下さい御主人様」


 リリスは頭を下げると、背中かから漆黒の翼を生やし舞い上がった。そして同時に、不可視の魔法を唱え始める。

「行って参ります」

 その言葉を最後に、リリスの姿が見えなくなった。



 三国同盟―――それは、強大国であるユーグロード王国に対抗するため、ムーランド大陸南部の小国が手を結んだ軍事同盟である。加盟国は、アニノート国に隣接するトラトス王国、その南に位置するエルトリア共和国、最南端のマギアテクノ魔道国だ。


 ある意味、獣王の国であるアニノート国が防波堤の役割を果たしていたが、約定違反の急襲により壊滅。それにより、ユーグロード王国と直接対決する形になってしまった。だが、三国全体の軍事力を考えれば、即座に侵略されるとは考え難かった。


 トラトス王国の王都ホメロ。ムーランド大陸においては、ユーグロード王国の次に歴史があり、王都を守護する1万人の重装歩兵は、純粋な兵力では列国最強と言われている。

 その王城の最上階、ユーグロード王国の侵攻に対する戦略を練っていた国王の耳元で、不意に女性の声が聞こえた。妖艶なその声は、耳朶を震わせるだけで腰に力が入らなくなった。


「だ、誰だ!?」


 最上階の国王の個室には、本来ならば誰もいないはずである。扉の向こう側には近衛兵が控えてはいるが、室内には入れていない。

 壁に掛かっていた剣を手に取り、鞘から剣身を引き抜く。その鋭利な輝きは、その剣に何らかの魔法効果があることを物語っている。腰を落とし、周囲の気を探る様は、国王というよりは豪勇を誇る騎士のようだ。


「フフ、そんなに力まなくても、私はここにいますよ」


 再び聞こえた声は、やはり国王のすぐ傍からであった。 国王は手にしていた剣を横薙ぎにしようと力を込めたが、白い細腕に抑えられただけで微塵も動かすことができなかった。


「そんなに焦らなくても、まだ時間はたっぷりあるから」


 姿を現したリリスは、国王の背後に回り込むとその肢体を絡み付かせる。廊下に控える近衛兵を呼ぼうとする口をリリスは自分の唇で塞ぎ、国王の目を紫に輝く瞳で覗き込んだ。

 束縛から離れようと暴れていた国王の身体から徐々に力が抜け、暫くするとダラリとその手が下がる。その様子を確認したリリスは拘束を解き、国王が座っていた椅子に腰を下ろした。


「我が主リリス様、何なりとお申し付け下さい」

 床に這いつくばり、リリスの足先を舐める国王。それを見下ろしながらリリスは命令する。

「三国同盟を破棄し、エルトリア共和国に宣戦布告しなさい」

「我が主の仰せのままに」

 国王はリリスの足に抱き付いたまま、その指示に従った。


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