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帝都クレタ②

「え、3人?」

 シャルルはパテトと顔を見合す。どう見ても、1、2でパーティ人数は2名だ。


「あの、パーティには僕達2人しかいないんですけど・・・」

 シャルルの言葉に、今度はギルドの受付担当者が首を傾げた。

「そう申されましても―――これ、ここを見て下さい」

 そう言いながら、ギルドの受付係がシャルルの冒険者カードを指差した。するとそこには、現在パーティを組んでいる人数と、ランクの上限が記載されていた。


 そこを凝視するシャルルは、ムムムと唸ることしかできない。ついでにパテトの冒険者カードも確認すると、やはり同様に3名、ランク上限がCになっている。


「えっと・・・どういうことなんでしょうか?」

 苦笑いしながらシャルルが訊ねると、ギルドの受付係も苦笑いをする。どうやら、初めてのケースらしい。

「さあ・・・としか、申し上げようがございません」

 ギルドは冒険者を統括はしているものの、管理をしている訳ではない。誰がどこのパーティに属していようと、全く関心がないのだ。


「ギルドは基本的に、誰が誰とパーティを組もうと自由である、という立場です。冒険者カードにも、パーティメンバーの名前が記載されている訳ではございませんし。それに、パーティメンバーの立ち会いがなければ、加入できないという決まりもございません。

 ただ、パーティメンバーとして登録するには、リーダーの名前等の個人情報を知っておく必要があります。ですから、全く知らない人という可能性は低いかと思います」


「なるほど」

 全く気持ちが込もっていない相槌を返し、シャルルは追求を諦めた。納得はしていなかったが、シャルルを仲間として登録するような物好きはマリアくらいしかい。そうであるならば、特に問題もない。


 兎にも角にも、ギルドの本登録を終えたシャルルは、パテトと共に建物の3階に向かった。いつも通り、ギルドの宿屋を利用することに決めたのだ。


 宿屋に向かう途中、2階を通り掛かったシャルルは、1階とは全く違う豪奢な調度品の数々に目を見開いた。

 立ち止まっていると、2階の入口に立つ執事風の男性に声を掛けられた。

「Bランク以上の方ですか?」


 なるほど―――と、シャルルは瞬時に理解した。Bランク以上は、国も重用する高レベル冒険者達だ。Bランク以上は特別扱いし、囲い込んでいるのだ。

「いいえ」

 そう言うと、シャルルは階段を上って行った。


 翌朝、宿屋に併設された食事屋で朝食を済ませたシャルルは、パテトを伴ってロビーへと下りた。クレタ周辺の地図を入手することと、緋色の騎士が言っていた中央の塔に関する情報を入手するためだ。早速、受付カウンターのギルド職員に声を掛ける。


「すいません。クレタ周辺の地図とかあれば、それが欲しいんですけど」

 シャルルが声を掛けると、ギルド職員は慣れた様子で、カウンターに2種類の地図を置く。どこかで目にした光景に、シャルルは思わず苦笑した。


「あ、高い方で」

「金貨5枚ですよ?」

 1階の冒険者が高価な方の地図を選択することが珍しいのか、自分で出しておきながらギルド職員が確認する。その目の前に、シャルルはポケットから金貨を5枚出して、カウンターに1枚ずつ並べる。

「1、2、3、4、5枚」


 地図を受け取ったシャルルはすぐに開くと、その内容を脳裏に焼き付ける。明確に覚えてしまえば、行ったことがない場所であっても、マップスキルで地図の表示が可能になるのだ。


 一通り目を通し街中の道路を記憶したシャルルは、もう1つの重要な用事を思い出した。

「ああ、それと、無料の情報で構わないんですけど、この街の中央に建っている塔って、一体何なんですか?」

 シャルルの質問を聞いたギルド職員は、目を丸くして驚いた。

「もしかして、あれが何かご存知ないんですか?」

「初めて来たので」


 ギルド職員は先程までの事務的な口調とは打って変わり、熱っぽく語り始めた。

「あの塔は、帝都クレタのシンボルであるテレス聖教の大神殿です。世界中に存在する教会の中心です。つまり、女神テレス様に、最も愛された場所なのです。しかも先日、妖精の小道が現れたんですよ!!」


 身を乗り出して説明するギルド職員から身を引き、シャルルは聞き慣れない言葉を繰り返した。

「妖精の小道?」


 ギルド職員は、喜色満面で説明を続ける。

「知らないんですか!?

 妖精の小道は、妖精王が認めた相手を、運命の場所に導くために創造する道です。妖精王に認められた者が、その運命を果たすために、このクレタの大神殿に現れたんです。どうです?凄いと思いますよね!!」

「は、はあ・・・」

「是非、行ってみて下さい!!」


 よほど妖精の小道が出現したことが嬉しいのか、半狂乱で話し続けるギルド職員。情報が大量に入手できたが、流石にシャルルの愛想笑いが引き攣っていた。


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