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緋色の騎士③

 近付いて来る者達の数は10名程度。人数的には足元に転がっている襲撃者達と大差はないが、大きく違う所が1箇所だけある。襲撃者の服装や職業は多様で、冒険者のパーティに見えた。しかし、シャルルを取り囲むように停止した者達は、銀色の甲冑を装備した騎士にしか見えなかったのだ。


「動くな!!」

 騎士団の中央にいる大柄な男が、大剣を構えて叫ぶ。シャルルとしては、全くもって面白くない状況だった。盗賊を討ち取ったにも関わらず、見ず知らずの連中に襲撃され、尚且つ、今度は騎士団に威圧されている。流石に、シャルルは少しイライラし始めていた。

 騎士団を潰すと色々と面倒かも知れないが、礼を言われて然るべきであり、尋問される筋合いはない。さっさと片付けて、街中に駆け込んでしまえば誰にも分からないだろう。


 シャルルは大きな溜め息を吐くと、パテトに念話で告げる。

『蹴散らして、街に飛び込むぞ』

 パテトは親指を立て、了解の意を示した。


 さて、と。面倒臭いが、一気に片付けよう―――シャルルがそう思うと同時に、抑えていた気が一気に膨らむ。そして、いざ剣の柄に手を掛けて抜こうとした瞬間だった。


「待て!!」

 騎士達の背後に控えていた、全身鎧フルプレートを装着した騎士が口を開いた。


 1人だけ緋色の甲冑に身を包んでいることから、この騎士が一団のリーダーであることが容易に想像できる。緋色の騎士が放った言葉によって、全ての騎士が頭を垂れて剣を収めた。それを見て、シャルルも剣の柄から手を放した。


 緋色の騎士はシャルルの背後に転がるワイバーンと盗賊、それと、足元で昏倒する襲撃者達を眺めて口を開いた。


「大変申し訳なかった」

 その声は中性的な声音ではあったが、凛として品に溢れたよく通る声だった。

「盗賊団を討ってくれたのは貴殿であろう。それと―――」

 足元の襲撃者達を見下ろし、鉄仮面の中で苦笑する。

「この者達は、ある物の護衛としてギルドを通して雇っていた冒険者だ。勘違いして、貴殿を襲ったようだ。まあ、返り討ちにあったようではあるが」


「いや、まあ、驚きはしたけど、大した連中ではなかったし・・・」

 それを耳にした緋色の騎士は、一拍置いてクツクツと笑い始めた。しかし、周囲を取り囲む騎士達は、逆に落ち着きを失くす。


「大したことがなかった、か。この者達は、ギルドの格付けでいうと、Aランクだったのだがな」


 その言葉を聞き、逆にシャルルが驚いた。

 この程度でAランクなのか?

 そう思ったものの、自分には無関係だということに気付き、シャルルは気にするのを止める。それと同時に、懐に仕舞い込んでいた小箱のことを思い出した。


「・・・ああ、これ」


 シャルルは懐に手を突っ込み、ラスカの瞳が盗んだであろう小箱を取り出した。その瞬間、それに異変が起きていることに気付いた。小箱の隙間から、金色の光が漏れ出してしたのだ。それを目にした緋色の騎士がシャルルを見詰める。


「なるほど」

 そう呟きながら、下馬した緋色の騎士は小箱を受け取る。シャルルが手を放すと同時に、その輝きは徐々に薄くなり、やがて消滅した。


「ところで、帝都に来た目的を教えてもらえないだろうか?」

 小箱を懐に収め、緋色の騎士が訊ねる。特に隠す理由もないシャルルは、現在の予定をそのまま伝えた。

「ギルドへの本登録と、歴史の探究のために・・・いや、違うな。魔王の調査をするためかな?」


「うむ」

 緋色の騎士は一度頷き、シャルルに道を示す。

「それでは、ギルドで本登録の手続きをした後、街の中央に建つ塔に向かうが良かろう。そこに行けば、何か得る物があるだろう。もし、危険を顧みないというのであれば、その後、西にある廃都を目指してみても面白いかも知れぬな」


「・・・廃都?」

「それは―――」

 口を挟もうとする騎士を制止し、緋色の騎士が懐から白金のメダルを取り出す。それをシャルルに手渡しながら、その説明をする。

「廃都は危険度が高いため、Bランク以上の冒険者でなければ入場を許可していない。しかし、2つのAランクパーティを1人で撃破した力と、宝物を奪還してもらった謝礼を兼ねて特別に許可しよう。ギルドで廃都に向かう旨を伝え、そのメダルを見せれば、地図と許可証を受け取れるはずだ」


 正直なところ、帝都にすら入っていない状況で説明されても全く要領を得ない。しかし、好意として差し出された物を突き返す訳にはいかない。とりあえず、シャルルは白金のメダルを受け取った。


 それを見届け緋色の騎士は、片手を上げて背を向けた。

「半数はラスカの瞳の捕縛。残りは冒険者の回復を!!」


 直立不動で指示を聞いた騎士達は、それぞれの役割を果たすために行動を開始する。シャルルは駅馬車の元に引き返しながら、冒険者に向け密かにヒールの魔法を放った。


「・・・ええと、それでは出発します」

 状況が飲み込めないまま、御者が手綱を引いた。


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