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神都リーベと神竜②

 ギガンデル神国の都リーベは、アナライから南へ駅馬車で3日ほどの距離にある山岳都市である。山にある都市ではあるが、斜面に築かれた都市でも谷間に造られた都市でもない。山頂を削って平らにし、そこに都市を建設したものだ。


 リーベがある山を臥竜山と呼ぶ。

 かつて、竜が世界の調停者として君臨していた時代に、この山の頂上から臥して下界を見下ろしていたことから、その名が付けられた。


 臥竜山の標高は約2千メートル。現在の竜士族とは違い、基本的に竜は飛翔する。そのため、徒歩しか手段がない者達にとってどんなに不便な場所であろうと、特に問題はなかったのだ。

 しかし今となっては、山頂に都を築くなど迷惑以外の何ものでもない。



 麓から続く石畳を上ること半日―――

 ようやく、リーベの長大な防壁が、シャルルの目に写った。ランズフロントの防壁と同様に、高さが30メートルはあろうかという頑強な造りである。麓からリーベまで続く石畳にも驚いたが、山頂の都市、それも国の都を丸ごと取り囲む防壁を築くなど竜種にしかできない所業である。


 シャルル達は石畳に従って進み、ついにリーベの門に辿り着いた。高さ15メートル、幅20メートルという強大な門は、防壁をくり貫くように設置されている。かつて地竜種が通行していたことを鑑みれば、こと大きさにも納得できる。


 街の規模からすると、門を通行する人達の数は多くない。現状、竜士族以外の入国が厳しく制限されているため、この状況もある程度予想はできていた。


 シャルル達の順番になり、門を守護する兵士の前に立たされる。

「お前は・・・人間だな。人間は入国自体を制限しているはずだが、どこからか侵入したのか?そいうことであれば、それなりの対応というものがあるが」

 門番に睨み付けられたものの、シャルルはその威圧を軽く受け流した。


「ランズフロントから入国した時には、竜士族の仲間がいたんですよ。でも、白竜に連れ去られてしまって・・・」


 シャルルの説明を聞いた門番が、もう1人の門番と顔を見合わせて高笑いする。

「ハッハッハ!!白竜様に連れ去られただと?」

「そんなことが、あるはずがないだろう!!」

 2人の反応に、シャルルは少しだけムッとした表情を見せる。フィアレーヌが連れ去られたことは、シャルル達にとって笑われて黙っておけるような話ではないのだ。


「お前達のような人間は知らないだろうが、白竜様は四竜と呼ばれる序列二位の―――何だ?」

 まだ説明をしている途中で、シャルルが門番に歩み寄った。

「どうせ、竜士族の付き添いがいても、腕試しとかするんでしょ?」

シャルルの問いに、門番が満面の笑みを浮かべて答えた。それとは対照的に、シャルルの表情は険しい。


「さあ、どこからでもかかって―――ブハアッ!!」

 話しの途中であったが、門番の頭が石畳を突き破って地面にメリ込んだ。多少力を込めて、飛び上がったシャルルがぶっ飛ばしたのだ。


 呆然とする片方の門番。その視線の先で埋まっているもう1人は、ピクリとも動かない。

「お前・・・一体何者だ?こいつは鬼竜・・なのに・・・」


 鬼竜とは、神竜と四竜に次ぐ第三位の竜士族のことである。その力、魔力ともに膨大であり、竜化と共に飛翔する能力を持っている。国都だけに、その高い戦闘力を見込まれて、鬼竜が守衛を任されているのである。そんな竜士族の中でも屈強の兵士が、人間によるたった1発の打撃で沈むなどあってはならない事なのだ。


 しかし、暫く待ったものの門番に動く気配はなかった。仕方なく、もう1人の門番が懐から回復薬ポーションを取り出す。そして、それを埋まっている門番に振りかけた。

 すると、地面に埋まっている頭から、大きな笑い声が聞こえてきた。状況を分かっていない人が見たら、ゾンビ復活としか思えない。


「ハーハッハッハ!!その戦闘力・・・信じよう。お前達には、竜士族の仲間がいたことを!!筋肉は、絶対にウソを吐かないのだよ!!」


「意味が分からない・・・」

 それを聞いたイリアが左右に首を振るが、その隣でパテトは門番の言葉にウンウンと何度も頷いている。

「もういっそ、脳筋族に改名すれば良いのに・・・」


 しかし、とりあえず力を示したことで、会話がスムーズに流れ始める。竜士族との交渉は、まず最初にぶっ飛ばすことが重要だ。気持ち良く、問答無用でぶっ飛ばしても問題ない。どうせ、最終的には殴り合いになるのだ。


「能力的には問題ない。ここ100年以上もの長い間、我々門番に勝った者はいなかった。個人的には、もう自由に通行させてやっても良いくらいだ。

 ―――しかし、同行する竜士族がいないとなると、ここを通すわけにはいかないのだ。これは国の法律だからな。我々にはどうすることもできない」


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