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シャンテリー山脈の秘密④

 ステンノーと激闘を繰り広げた広場からは、2本の通路が伸びていた。1本はシャルル達が入ってきた通路であり、もう1本は更に奥へと続いている。当然のことながら、シャルル達は奥へと続く通路を選んだ。


 その通路は進んでいくうちに傾斜がつき、次第に上へと登っていった。

 歩き始めて半日、代わり映えのない景色が続き、普段よりも一層無言になる3人。時間が曖昧になり、既に今が朝なのか昼なのかも判別できなくなる。ストレスが溜まってきたパテトの足音が突然大きくなった。


「あああああっっっもおおおおおおおお!!

 い―――――ったい、いつまで歩けば良いのよおっ!!」

 ついに爆発した。

 しかし、その勢いはすぐに熱を下げていく。魔光石に照らされた場所に、階段が見えたのだ。


 これまでにない展開に、パテトだけではなくシャルルとイリアも表情を明るくする。正直なところ、2人とも疲れ果てていた。3人の歩く速さは常人とは比較にならない。その速度で歩き続けて半日。しかも、心なしか空気が薄くなっているようだ。通路の角度的に考えても、そこそこの山を1つ2つ登っていても不思議ではない。


 階段まで到着し、意気揚々と見上げた3人の顔から表情が消える。階段の終わりが見えないのだ。果てしない通路の次は、終わりなき階段。今更引き返す訳にもいかず、もはや進む以外に道はない。

 再び無言で階段を上がり始める3人。これを造った者達を逆さ吊りにして、延々と文句を言い続けたい。3人の思いは珍しく同じだった。


 やはり階段は果てしなく続き、途中の踊り場でついにビバークすることになった。

 シャルルがアイテムボックスから食料を取り出し、その場に並べていく。それらを炎系の魔法で食料を温めると、出来立てと変わらぬ匂いが周囲に漂い始めた。食事を前にしたパテトは、既に機嫌を直しニコニコと笑みを浮かべている。余程疲れていたのか、温かいミルクを飲みながらイリアも笑みを浮かべる。


 それにしても―――と、シャルルは通路と階段を思い浮かべながら考える。

 やはり、これだけ巨大な構造物を、手作業で造ったとは考えられない。しかし、これを魔法の助力で造ったとしても、途方もない魔力と技術が必要になるだろう。この条件を満たす者は限られている。


「エルフ―――でしょうか?」

 シャルルが考えていることを、イリアが口にする。

「恐らく。それ以外に、これだけのことができる種族はいない。それに、このシャンテリー山脈に、エルフが潜んでいるという話もあったし」



 階段の踊り場で一眠りした後、3人は再び階段を上り始めた。この通路はダンジョンと違い、魔物がいないだけ早く進むことができる。もしここに厄介な魔物でもいれば、出口まで何日かかるか分からない。


 上り始めて3時間は経過した頃、ようやく階段が終わり通路が平坦になった。壁面が剥き出しの岩から加工された石材に変わり、明らかにこれまでとは雰囲気が異なっている。

 そろそろ、本当に出口に辿り着いたのかも知れない。

 そんなことを考えながらシャルルが進んで行くと、唐突に通路が岩で塞がれて行き止まりになった。


「ちょっと、ちょっと、こんなに歩いて来たのに、行き止まりなの?何これ、信じられない!!」

 通路が終わっている状況に、パテトがゲシゲシと壁を蹴りながら叫ぶ。そんなパテトを放置し、突き当たりの岩にシャルルが手を触れた。


「なるほど。行き止まりというよりは、封鎖されているって感じかな?」

 イリアもシャルルの隣で先を見詰めながら、同じ内容の感想を述べる。

「そうですね。多分、巨大な岩石で通路を塞ぎ、封印の術式で固定しているみたいですね」

 シャルルとイリアの目が合い、お互いに頷いた。


「とりあえず―――解呪ディスペル

 シャルルの解呪魔法により、封印の魔法が解かれる。そして、そこに続けて魔法を打ち込んだ。

「―――雷撃」

 シャルルの手から雷が迸り、目の前の岩を粉砕しながら突き進む。雷は全ての岩を打ち砕き、更にはその向こう側へと稲光を発しながら飛び出して行った。そして、最終的にシャルルが放った紫電はどこかに激突したのか、その先の空間で轟音を響かせた。


「とりあえず、外には出らそうだ。・・・ただ、嫌な予感しかしないけど」

 そう呟くシャルルに、イリアも苦笑いを浮かべながら答える。

「私も、そんな気がしてなりません。えっと・・・帰りますか?」

「やったー!!外じゃん、外に出られる。嬉しいっ!!」

「「あ・・・」」

 2人の心配を余所に、一目散にパテトが光の下へと飛び出して行く。その時点で、パテトを追い掛ける、という選択肢しか2人は残されていないかった。盛大に溜め息を吐きながら、パテトの後を追って通路を先へと進む。


 そこは、一面が緑に覆われた世界だった。

 豊かな草原が広がり、少し離れた場所には深い森が見える。更にその森の奥には、天辺が雲に覆われて見えない巨大な木が聳え立っていた。


 ―――そして、煙を上げて燃え上がる木々。


 シャルル達は、数十人を超える臨戦態勢のエルフに、完全に取り囲まれていた。


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