表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/231

シャンテリー山脈の秘密①

 風神の谷から戻ったシャルル達は、報告のためギルドを訪れていた。


「―――では、風神の谷は・・・」

「もう、暴風は吹いてません。のどかな谷になってますよ。それに、道中の砂地にいたサンドワームは討ちましたし、暴風を巻き起こしていたガーゴイルは去りました」


 ノームのことは伏せ、冒険者が戻らなかった原因であるサンドワームとガーゴイルについての報告をする。カラルから距離はあるが、あの谷間は穏やかで土地も肥沃だ。住み着く人さえいれば、十分に暮らしていけるだけの自然がある。


「シャルル君達が帰って来たというのは本当か!?」


 ギルドの扉が開くと同時に、荒々しい男性の声が響いた。シャルルに駆け寄って来るのは、アルフォート子爵だ。息を切らせている様子から、かなり急いで来たことが窺えた。


「そ、それで、護符は、護符は頂けたのかね?」


 シャルルはアイテムボックスに収納していた地の護符を取り出す。それは、縦10センチ、横5センチほどの石板で、仄かな黄土色の光を放っている。


「おお・・・これで、これがあれば、シャンテリー山脈に入れるのか」

 目を輝かせ護符を見詰めた後、シャルルの顔を覗き込む。

「これを持っている者は、地面の隠された入口や、地中の通路が見えるらしいです。まだ使用していないので分かりませんが、多分、その通りの効果があると思います」

 シャルルの話を耳にし、子爵がウンウンと何度も頷く。


「それで、エルフの情報は・・・」

 今度はシャルルが子爵に訊ねた。仮にステンノーを討って脅威を払ったとしても、石化が解けなければ意味がない。子爵はシャルルの問いに、目を伏せて答えた。


「う、うむ・・・様々な所に人をやって調べているのだが、明確に場所を特定することができない。ただ、シャンテリー山脈のどこかに潜んでいる、という話だけは間違いなかろう」


「そうですか・・・」

 シャルルはそう答えたきり、何も言えなくて黙り込む。


 そんなシャルルを目にし、子爵がパンパンと手を叩いた。

「とりあえず、ステンノーを討伐する手筈は整った訳だ。ここは、我が精鋭を大挙させ―――」

「子爵様」

「て、ん?何だ?」


 子爵の言葉を遮り、シャルルが口を開く。

「僕達が行ってきます。必ず帰ってきますので、子爵様は待っていて下さい」

 正直なところ、兵士など足手まといにしかならない。それならば、3人で行く方が安全に早く処理できる。

「う、うむ。分かった」



 カラルに戻った翌日、シャルル達は再び石像を発見した場所に向かった。どう考えても、あの場所に何か手掛かりがあるはずだ。


 森の中を歩いていると、パテトがシャルルに訊ねた。

「で、ステンノーだっけ、それって、どんな魔物なの?美味しい?」


 とりあえず食べよう、という発想は止めて欲しい。そう思いながら、その問いに答える。

「ゴルゴーン、というのは知ってる?」

「青カビが生えてて、ちょっと辛いヤツ?」

「それは、ゴルゴンゾーラだろ!!」

 シャルルの裏拳が、パテトの側頭部を的確に捉える。


「そうじゃなくて、ゴルゴーンというのは、上半身が人間で、下半身が蛇という半身半獣の魔物だ。その顔を見た者を石に変える、と言われている。ギルドのランクはS以上。これほどの魔物を、子爵の先祖は2体も倒したというのだから本当に凄いと思うよ」


「ふうん」

 パテトは分かったような、分からないような曖昧な受け答えをする。「何だ食べられないのかあ」という呟きを、シャルルは聞こえないふりをした。


 森に入って2時間足らず。直線距離を進んできたシャルル達の眼前に、シャンテリー山脈の断崖が広がった。当然のことながら石像は見当たらす、ステンノーらしき魔物の気配もしない。流石に警戒しているのだろう。

 前回、石像を発見した辺りに到着すると、シャルルはすぐに索敵を開始した。元々持っているマッピングのスキルに、護符の力を融合させて探る。


「どうですか?」

 傍で待機していたイリアが、シャルルに顔を近付けて訊ねた。シャルルの頬にイリアの吐息がかかる。


「うん、大まかな見当は付いたよ。前回、魔法を放った場所―――」

 シャルルが、窪地になっている地面を指差す。

「あの奥の地中に、隠し通路がある。その先が巨大な洞窟に繋がっているみたいだ」

 シャルルが顔を上げると、イリアと目が合った。そのまま、横に顔をスライドさせ、パテトとアイコンタクトする。

「よし、行ってみようか」


 シャルルが先頭を歩き、何もない場所で立ち止まる。そして、懐から地の護符を取り出した。


 するとオレンジ色に輝き始めた護符が、その光で周囲を照らし始める。オレンジ色に染まる大地。突然その一角に、音も無く巨大な穴が開いた。隠蔽の魔法が強制的に解除され、地下通路の扉を開いたのだ。地に関するあらゆる魔法と結界の解除。それが、ノームの生成した護符の効力である。


 シャルルは躊躇することなく、その中に飛び込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ