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アポネ遺跡②

 煙が上がっているということは、何者かが生活しているという証である。しかも、こんな場所に人が住んでいるということは、その建物がアポネ遺跡の管理事務所である可能性が高い。


 建物に近付いたシャルル達は、その建物の端が結界の中に繋がっていることに気付く。ここが目的地の管理事務所で間違いないようである。


 帝都クレタから遠く離れているにも関わらず建物は石造りで、随分と手間と費用が掛けられていた。それに、建物は2階建てであり、地方都市のギルドと遜色がない大きさだ。シャルル達が扉を開けると、内部はロビーになっており、ギルドとほぼ同じ構造になっていた。


 冒険者による突然の訪問に、カウンター内の職員が目を丸くして固まった。カウンターの向こう側には受付以外に3名いるが、全員同じ表情のまま止まっている。


「あの、ここがアポネ遺跡の管理事務所ですか?」

 シャルルが発した声に、ハッとした受付係がようやく動き始める。

「あ、ああ、そうです。いらっしゃいませ」

 あからさまに動揺する受付係。ギルドマスターの話が本当ならば、もう3年以上の間誰の訪問もなかったはずである。しかも、トップクラスのパーティ連合が攻略に挑み全滅したのである。ギルドの職員も、誰も挑戦しに来るとは思っていなかったはずだ。


 シャルルはカウンターに歩み寄ると、受付係に訊ねた。

「アポネ遺跡を攻略に来たのですが、どうすれば良いんですか?」

「え・・・本当に、遺跡に挑戦されるんですか?」

 観光でこんな場所に来るはずがない。そもそそも、ギルドが地図を発行してくれなければ、ここまで辿り着くことはできないのだ。


「何か、問題でもあるんですか?」

「あの・・・このアポネ遺跡に入場するためには、入場許可証が必要なんです。しかも、Bランク以上いでなければ、その許可証も発行されません。拝見したところ、2人組のパーティですよね。それでしたら、Dランクが上限だと思いますけど・・・」


 丁寧に営業スマイルを浮かべ、「お呼びじゃないから帰りなさい」と匂わせる受付係。その態度にイラついたパテトが片足を上げ、思い切り床を踏みしめた。ダンッという音が鳴り響くと同時に、石造りで頑丈なはずの建物が大きく揺れ動く。パテトの足下の床に、巨大な亀裂が入っていた。


 驚愕する受付係。その様子に溜飲を下げたシャルルが、無詠唱で復元魔法を行使し、床を元通りに修復する。そして、懐からギルドマスターが特別に発行してくれた入場許可証を取り出した。


「これでも、ダメなんですか?」

 受付係りが、今度は口を開けたままで固まった。


 常人では有り得ない力をパテトが見せ、無詠唱の上級魔法で修復したシャルル。しかも、ギルドマスターが直々に特例として入場許可証を発行したとあっては、流石に受付係も、シャルル達が特別な人間だということに気付く。

 しかし、一般の受付係に判断できるはずもなく、背後にいる上司に助けを求めた。すると、一部始終を見ていた上司らしき年配の男性が、直ぐにカウンターまで歩いて来る。


「どうぞ、あちらに」

 男性が示したのは、カウンターの横にある簡易の相談スペースだった。


 促されるまま相談スペースに移動したシャルル達は、早速、アポネ遺跡に入場するための方法を訊ねる。ここに、長居をするつもりはないのだ。


「どうすれば中に入れるんですか?」

 このまま突入しそうなシャルルに、男性はゆっくりと首を左右に振った。

「直に日が暮れますし、今日の入場は許可できません。それに、遺跡の仕組みを聞かれておいた方が良いと思いますが?」

「確かに・・・では、よろしくお願いします」

 素直にシャルルは頷くと、男性に説明を頼んだ。


 先程の受付係が飲み物を運んで来て、男性の隣に腰を下ろした。簡素な作りとはいえ、相談スペースにはテーブルを挟み、両側に2脚ずつ椅子が用意してある。


「まず、ご存知かとは思いますが、ここアポネ遺跡は、その昔に、帝都であったアポネが放棄されたものです。何者かが滅んだ帝都に結界を張り、不可侵の遺跡となりました。旧アポネには、この場所にある入口から入る以外に方法はありません。

 この中には、この世界の秘密が眠っている―――という話も、ギルドマスターから聞かれた思います。なぜ、そう言われているのか。その根拠は、3年前に遺跡の完全攻略に挑んだS級パーティの証言です」


「全滅した、そう聞きましたが?」

 シャルルの率直な疑問に、男性が淡々と答える。

「全滅したのは、第2の試練に挑んだ者達です。偶然にも、第1の試練で大怪我をし、脱落した者がいました。その者から、遺跡の中で何が起きたのかを知らされたのですよ」


 それはそうだ。全員が無傷で先に進めるはずがない。シャルルはそう思い、男性の説明に首肯する。


「これ以降は、その冒険者の言葉です。

 中には、自然発生する魔物もアンデットもいない。ただ、試練という名の、強大な神獣がいるだけだ。我々が遭遇したのは、第一の試練であるユニコーンだった」


「え、神獣?神獣が、なぜこんな場所に?」


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