1話 知らない場所にゾンビ1人
読みにくかったら意見お願いします。色々試していきたいと思います。
「ここはどこだろう」
気がついたら知らない町にいた。さっきまでどこにいたのか、何をしていたのか思い出そうとしても頭が働かない。
「たしか…なんか大変な目にあっていたような…」
そうだ、さっきまでなにか事件や事故のようなものに巻き込まれていたような気がする。しかし、何も思い出すことが出来ない。なんか頭も痛いし、さっきから体に痒みもある。
無意識に体を掻いてるとなにか違和感に気づいた。なんか体が柔らかい?柔らかいと言うよりめっちゃ指が食い込むような。
体の違和感がすごい気になり見てみると自分の体がすごいことになっていた。
「腐ってる…?」
その時、なんか色々と思い出した。そういや俺、さっきゾンビに殺されたんだった…
そうだ。町中がゾンビの大群に襲われたんだ。
俺は普通の学生で普通に学園生活を楽しんでいたはずだったんだよな。
なのにいきなりアイツらが現れて俺の日常を壊しやがった。
─
「陸斗!早く乗ってよ!」
「へへっ、ここで俺が止めてないとすぐに追いつかれまうからな。先に行ってな!こいつらは俺がどうにかしてすぐに追いつく!」
俺の周りにはゾンビが何体も群がってきている。さすがにこんな状況じゃ俺も助かることもないだろう。ただ、ここで情けない姿を見せるのも格好がつかないもんな。
「彩花、もう車を出すぞ!これ以上待ったら俺たちまで襲われちまう!」
運転席には担任の須藤がすぐにでも車をだそうと気を張っている。須藤先生も人間だ、そりゃ周りのことなんて気にしてられない。
「すぐに追いつくから先に行ってろ!俺を信じろ!」
かっこいいセリフを言ったが、俺の体は数体のゾンビによって押し倒されている。こんな状況じゃ助からないなんて誰が見ても分かるだろう。
俺だってほとんど諦めていた。けど、最後までかっこつけるのはやっぱり男としてのプライドなんだろうな。
そのまま俺はゾンビに襲われて死んだ。ゾンビになってからの記憶なんてないし、あれから俺がどうしてたかなんて分からない。
気づいたらこの場所にいたんだ。
─
「それにしてもここはどこなんだ。」
周りを見渡したら人が住んでそうな建物はあるし、どこかの街なのだろうか。
それとも天国?ゾンビに噛まれて死んだからそのまま天に登ったのだろうか。
街の風景は明らかに日本ではないし、レンガ造りの家が多く、どちらかと言えば中世の国みたいなイメージだ。
「とりあえず、歩いてみるか」
ほとんど腐りかけている体を持ち上げて歩き始めた。改めてこの体は動きにくい。自分がゾンビってことを実感させられるぜ。
しばらく歩いていると、なにか声が聞こえてきた。体の感覚が少しずつ戻ってきてるような気がする。
内心少し安心していた。このだるさはゾンビになったからじゃない、ただ何かの影響で感覚が麻痺していたからだ。
「…叫び声?」
耳を澄ませてみると辺りから叫び声が聞こえてきた。「助けてくれ!」「こっちへ来るな!」そんな叫び声が絶え間なく耳に入ってくる。
「もしかして、ここでもゾンビがいるのか?」
まぁ、自分がいるくらいだ。他にゾンビがいたっておかしくはない。しかし、今ゾンビにあったらどうなるのだろう。襲ってくるのだろうか、それとも仲間として受け入れられるのか。
「うーん、分からない…」
「とりあえず逃げようか」
わざわざ危ない真似をすることもないし、なによりも自分の体が一番大事だ。
そして俺は出口を探して歩き始めた。
ドンッ!
「え、なに!?」
急に何かにぶつかった。いや、何かがぶつかってきた。驚いて尻もちをついた俺は咄嗟にあたりを見渡す。一体何が起こったんだ。
混乱しながらも原因を探しているとそこには鎧を着た人がいた。鎧と言っても革で出来たような安っぽい革だ。
「いてて…、ってああああああ!」
そいつは転んだ時にぶった頭を撫でながら顔を上げると俺に気づいたようだ。
「く、くるな!私を食べても美味しくないぞ!」
向こうを相当混乱してるらしい。そんなに怖がらなくてもいいのに。…そういや俺ゾンビだったのか。
「いや!食べないから!けん振り回すのやめて!」
「嘘つけ!他の仲間はお前らアンデッドに食われたぞ!」
アンデッド?アンデッドってあの死んでるやつ?まぁRPGとかだとゾンビもアンデッドの括りだよな…やっぱり他にゾンビがいるのか。
「俺はそんなことしないから!ちゃんと喋れてるだろ!?」
苦し紛れにこんなことを言ったが、喋れたところで見た目がゾンビなのは変わらない。ほとんど意味の無いことだと分かってる。
「あ、そうか。なら良かった。」
こいつ単純すぎないか?もし俺が喋れたとしてそのまま襲われる可能性もあるだろうに。
まぁいまはそんなことはいいか、俺もはやくこの場から離れたいしな。
「それよりも、ここから逃げないとやばいだろ?」
「一緒に逃げよう」
「あ、そうだ!早くしないと追いつかれる」
「ここから1番近い出口はどこだ?案内してくれ」
「わかった!こっちに行けば国の外に出れるよ」
俺は頼もしい仲間を手に入れることが出来た。幸運にも楽に逃げることができそうだ。
「そういえばお前名前はなんて言うんだ?」
しばらく歩いてふと思った。まだ自己紹介をしていなかった。少し落ち着いてきたし、多少の会話をする余裕はあるだろう。
「あ、まだ名前言ってなかったね。私はアリシア」
「よろしくね、アリシア。俺の名前は陸斗」
「名前あったんだ。アンデッドなのに。」
「俺だって名前くらいあるさ。一応元々は人間だぜ?」
「え!人間なの!?モンスターじゃないんだ!」
「いやね、俺がいたところだと薬かウイルスかまぁ原因は分からないけどこんな姿になる病気が流行っちゃってね。ちなみに俺たちはアイツらのことをゾンビって言ってるよ」
「ふーん。じゃあさっきのアンデッド…ゾンビ?も元は人間だったんだ。」
アリシアは少し考えてるように見えたがすぐに頭をあげた。それは何かを理解したような表情だった。
しかし、俺の疑問は何も解決していない。いったいこの状況はどういうことなのだろう。
「てかさ、ここは一体どこなの?それで俺はなんでこんなとこにいるの?」
「あー、それね…」
アリシアはこれまであったことを説明してくれた。つまり俺たちを召喚してこき使おうとしたらタイミングが悪くバイオハザード真っ最中の街の人間を召喚してしまったわけか。
本来ならこんな自分勝手な状況に憤りを感じるわけだが、なんだかんだ俺は生きてるし地味に良かったのかもしれない。
「まぁこうなったのはしょうがないか。こっちでどうにかするしかないか。」
ただ、やっぱり向こうのクラスメイトたちがどうなったのかが気になる。とにかくどうにかして向こうへ帰る手段を見つけないと。
「そういえば、アリシアは行くあてはあるのか?」
「いや、物心ついた頃からこの国で兵士として育てられたから他に行く場所は…」
「なら、俺もあてがないからちょっと付き合ってくれよ。こっちの世界のことは全然知らないしさ。」
「うーん。そうだね、もうこの国もダメそうだし、ついて行こうかな。もともと外の世界には興味があったし。」
「おお、ありがとう!じゃあとっととこの国から脱出しますか。」
もう少しで国から出られる扉に着くらしい。それまでに何も起きないことを祈ろう。