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ユウとショータと○○

ユウとショータと平成最後の夏

作者: リレイ

「平成最後の夏、終わっちゃったな……」

 ユウがセンチメンタルな様子で、ポテトを頬張った。

 本日は始業式。午前中で下校になったのでショータと二人で昼食をとっていた。ファストフードの店内には、彼らと同じような学生が多くいる。

「そうだね」

 ハンバーガーにかぶりつくショータは、あまり興味がなさそうだ。

「なんだ、薄情な奴だな」

 ポテトでさし棒のように友人をさす。

「まだ暑い日は続くし、まだ終わった気がしないんだよね」

「確かに」

 夏はいつ終わるのだろうと、思いをはせるユウ。

「でも、夏休みは終わっちゃったけどね」

「正しくは、平成最後の夏休み、が終わったと」

 さし棒ポテトを口に含む。

「ま、平成最後であってもなくても、夏休みの終わりはさみしいもんだな」

 シェイクを振ってみるが、まだ溶けていないようだ。ユウはもう一本、ポテトを食べる。

「そうだねー」

 ショータはコーラなので、溶けるのを待たずに飲むことができた。

「なんかまわりがいろいろ言ってるから平成最後、とか思うけど、実際平成が終わるとどうなるん? よくわかんないんだけど」

「僕もよくわからないな。どうなるんだろう?」

「俺らには関係ない感じ?」

 シェイクにリトライ。まだ駄目そうだ。

「それもよくわからないな」

「昭和最後ってどんな感じだったんだろう」

 バーガーの包み紙を開きだしたユウ。シェイクを飲んでから食べようと思っていたが、その試みはあきらめた。

「普段と変わらなかったんじゃないかな。そもそも昭和が終わるって、その時は知らなかったと思うし。普通天皇が亡くなったら変わるんでしょ?」

「そっか……。じゃあ最後のって実感できている俺ら、トクベツなのか……」

 しみじみとユウはうなずく。

「今生きてる日本人、みんなそうじゃない?」

 ショータの言葉に、ユウはうなだれる。

「そんなにいるとトクベツ感ないな……」

「きっと生きてる中ではトクベツだと思うよ。こんなこと、もうないかもしれないし。今まで生きてきた人も初めての経験だし」

 ショータはハンバーガーを食べ終えた。

「結局なんなんだろ、平成最後って」

「平成が終わってみればわかるかもね」

 のんびりとコーラを飲むショータ。

「今はわかんないかー」

「終わると言えば、宿題はもう終わらせた?」

 彼らの学校では、宿題の提出は始業式ではなく夏休み明けのテストの日に行うことになっている。まだ若干の猶予があるのだ。

「あっ、まだ」

「よかったじゃん、平成最後の夏休みの宿題、まだ終わってないよ」

 ユウは何も言わず、意識をシェイクのみに向けた。

 このシェイクも、平成最後のシェイクになるかもしれないのだ。

END

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