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千年と一夜の物語  作者: 和泉
3/3

大木と年老いた小鳥の噺

大木が沢山の名前を貰ってから、暫く過ぎた頃


灰色の空から一滴の雫が落ちてきた

雫は次第に数を増した

人間の言葉で表現するなら『雨』


あれは雨の日の話だった


土砂降りの雨のなか1羽の小鳥が飛んできて言った

「おお、これはなんと立派な大木なのだろうすまんが雨が止むまで休ませてくれぬか?老いぼれの身体にはこの雨はちと強過ぎてな…」

大木は久しぶりの訪問者に嬉しくなっていたので小鳥の頼みを聞いてやった

「なんじゃ、お主は何も喋らないのか?」

大木は喋ると言う事を少し疑問に思った


今までは村の人間の話し声を聞き

楽しい話を聞けば

楽しくなり

悲しい話を聞くと今度は

悲しい気持ちになった


大木は今まで喋った事が無かった


話を聞く度、一喜一憂していたが


大木には友達がいなければ、喋る者もいなかった

だからまさか自分も喋れる事に気づくことは無かったのだ


そんな大木に小鳥は喋ることの喜びと人間の言葉を沢山教えてやった


気づいたら雨はすっかり止み、小鳥はどこかに飛び去っていた


空には七色の美しい帯が架かっていた

小鳥の話で聞いたこの帯は確か...


そう『虹』だ!


虹の根元にはとても良い物があると小鳥は言っていた

「良いものってどんな物?」と聞き返した大木に

小鳥は「それはお腹いっぱいのラズベリーに決まっている」と返した事を思い出した大木は

正直ラズベリーなんてものを知っていませんでした


ラズベリーとは一体なんなのか考え

考えに考え数日たった頃


大木は根元の地面から出ているなにかに気づいた


後から知った事だが、それはラズベリーの木だったらしい


あの小鳥にはもう会えないが、もしも会えたなら沢山のラズベリーを腹いっぱい食べさせる事が出来たのに...

と大木は残念に思った


木の根元には大粒のラズベリーが落ちてしまっていた







小鳥の噺を聞き終えた華は老木に疑問を投げつけた

「らずべりぃ、って何のこと?小鳥のおじいさんは、"お腹いっぱい"と言ったけど食べ物かしら」

「ああ、そうだよ食べ物だ赤く甘酸っぱい木の実の事さ」

「甘酸っぱい?それはどんな物?」

「味の事さ、でも私達には関係の無いことさ」

「貴方は本当にいろんな事を知っているのね!」


「そんな事も無いが、次の噺をしよう」

「大木が伐られそうになった噺を」


すると老木は苦々しそうに語り始めた

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