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第四話 人生に必要なのは運のみです

≪無事、レベルは上がったみたいですね≫


 そうなんだろうか。自分では全然感じない。

 言われても見れば、何か上がったような気がする程度のもの。

 思い込み(プラシーボ)と言われたら、そうかも知れないと思わず頷いてしまいそうなくらい微妙な変化だ。


≪まぁ、職業が村人ではそんなものでしょう。問題はスキルのほうです≫


 ……おい、ちょっと待て。何その衝撃の事実。

 俺って職業は村人だったん?

 いや、他に何かあるのかって言えばないんだけど。

 むしろ、今日まで立派に村人をやっていたんだけどさ。


 いやいや、何はともあれ今はスキルだ。

 思わず身構える。

 自分の思うカッコいいポーズで身構える。


 そして、身構えて10分ほど待った。


「……で、どうすればいいのよ」


≪いや~、行き成り変なポーズを取り始めた時はどうしようかと思いましたが、よかった、まだ会話が出来る程度にはまともそうですね≫


 その言い草に思わずイラッときたが飲み込む。

 大丈夫、俺、大丈夫。もう、大人だからね。

 見た目5歳のガキだけど、中身はもう大人だから。

 後で刻印のある俺の鳩尾付近に、自爆覚悟で落書きするだけだから。


「ああ、まともだよ。超まともだよ。普通にまともだよ。で、どうすればいい?」


≪お、珍しく素直ですね。何だか裏がありそうですが、まぁいいでしょう。“スキルオープン”と唱えてください≫


「えっ、そんだけいいのか? ……えっと、“スキルオープン”?」


 言った瞬間、脳裏に文字列が浮かんだ。


こん棒(初級) Lv1 必要ポイント30

銃器 必要ポイント1


 ただ、銃器の文字は、文字色がくすんでいるというかグレーアウトしているように見える。


≪そのグレーアウトしているところが、取得可能かつまだ取得していないスキルですね≫


「あんまり関係ないんだけどさ。こん棒ってスキルがあるんだけど、これいつ取得したのよ」


≪さっき山ウサギを木の棒で殴っていたでしょうが。まぁ、初級レベル1で次のレベルまで30ポイント必要な時点で、才能はまったくないので気にしないほうがいいですよ≫


 レースト曰く、何でも才能がありゃここは最初っから中級だったり、レベルに必要なスキルポイントが1とかになるらしいね。

 何それ。どんだけこん棒のセンス無いのよ、俺。

 ただ棒持って振り回すだけじゃねーか、あんなの。


≪そういうところがセンスの無い証拠だと思いますが。ま、いいとして、スキルにポイントを割り振るには、上げたいところを思い浮かべて解除と念じればいいだけです≫


 なるほど。では、と。

 銃器の文字に対して解除と強く念じる。

 するとグレーアウトしていた銃器の文字がくっきりとした後ツリー構造化し、銃器の下に新たに四つの文字列が追加された。


「えっ?」


 何だこれ。銃器のスキルを解除したら違うスキルが出てきたんだけど。

 銃器の下に出た文字は、手持ち火器(ノーマル)、手持ち火器(レア)、手持ち火器(スーパーレア)、据え置き火器(ノーマル)、据え置き火器(レア)、据え置き火器(スーパーレア)。

 必要スキルポイントはそれぞれ、ノーマルと表記された物は2ポイントで、レアと表記された物は5ポイント、スーパーレアと表記された物は50ポイントと記載されている。

 ……何このとても嫌な予感しかしない表記は。

 もしかしなくてもコレって、解除したらランダムで何かが貰える系の奴じゃないですよね?


≪もちろんその貰える系です。よかったですね! 射幸心を擽りまくるルースト様の粋な図らいですよ!≫


「何してくれてるの!? 異世界にガチャとかいらないんですけど!?」


≪いいじゃないですか、あなたが元居た匣で大流行しているとルースト様がドヤ顔で話してましたよ≫


 やべぇ俺の中にあったルースト様の出来る奴像が一気に崩れた。もうポンコツの勢いだ。

 何故に異世界にきてまでガチャを引かなきゃならないんだよ。

 しかも、スーパーレアはレベルアップ10回分かよ。ボリ過ぎだろう。


「俺の世界の最近の流れを汲んだってことは、これって失敗が連続で続いたら補填とかあるんだよな?」


≪ルースト様は基本的に大雑把な方ですから、そんなものはもちろんありませんよ?≫


 おまえ、よくもそんな淡々と冷静に。

 これからの俺の人生が掛かっているんだってのに。


 くそ、やべぇな。正直、俺の引き運はよくない。

 商店街のクジとかでも、ポケットティッシュしか貰った例が無いっていうね。

 というか、ありえねー。人生ガチャで決まるとかありえねーよ。


≪あなた、今まで生きてきて何を学んできたんですか? 人生に必要なのは運のみですよ。そこら辺にルースト様の深い考えを感じ取ってみてください≫


 おまえ、さっき俺の世界で流行していたから取り入れたとか言ってたじゃねーか。

 おまえんとこの神様はそんなこと絶対考えてないから。ただの流行り物好き(ミーハー)だから。


「はっ!?」


 待て待て落ち着け。落ち着くんだ俺氏。

 これはルースト様の罠なのではないだろうか。

 俺を試しているのかもしれない。

 実は引いたら良いのしか出ないとか、そんなノリなのかもしれない。

 であるならば、先ほどの文句も取り消さねば。

 いや、ルースト様は最高です。もう最高の神です。


 よし、引いてみるか。

 ここは手堅く手持ち火器(ノーマル)だろうか。恐らくハンドガンとか出るんだよな、これ。

 まぁ最初だしここは王道に行くべきだろう。

 心にルースト様最高の文字を浮かべつつ、手持ち火器(ノーマル)の文字列を注視し解除と願う。


 と、頭の中に何やらファンファーレが鳴り響き、脳裏に展開していたスキル一覧が閉じた。


「な、なんだ!? 当たったか!? “スキルオープン”ッ!」


 急ぎスキルの一覧をもう一度出す。

 すると、銃器の下側に新しく文字列が追加されていた。

 そこにはこう書かれている。


 水鉄砲。


「最早、火器ですらねーよ!?」


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