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第十一話 やばいものを召喚してしまったのかもしれない

 どうやら召喚術というのは、普通のスキルのように念じるだけじゃ発動しないらしい。


 レーストが言うには、召喚とは召喚契約の履行。

 即ち、召喚士が契約に基づき、呼びかけることで召喚するのだとか。

 だから、ぶっちゃけて言えば契約さえ出来てしまえば、召喚士のレベルとかまったく関係なしで呼びだせちゃったりする。

 ただ、問題がある。


「……俺、契約とかしてないんだけど」


 そんな、よくわからん書類に判子押した覚えは無いですよ。


≪まぁ、この場合はルースト様を媒介として契約していますから、本来の契約主はルースト様です。あなたは借りるだけですね。呼ぶための魔力すら必要ありません≫


 そう言うのばっかだな俺。

 にしても呼ぶための魔力すら必要ないとは、何て素晴らしいんだ召喚術。いや、ルースト様式召喚術。


「で、どうすればいいのよ。ルースト様に貸してって言やいいの?」


≪その通りです。と、言ってもルースト様本人は流石に無理なので、代弁者である私にということになりますが≫


「えー」


≪何でそんな露骨に嫌な顔をするんですか≫


 いや、だって素直に貸してくれるとは思えないんだもの。

 貸してくださいって言ったら、すいません、今、他に貸しちゃっててとか平気で言いそうだし。


≪私をなんだと思っているんですか! ……はぁ、安心してください。これは仕事の一環なので真面目にやりますよ≫


 観察と一緒です、とレーストが続けた。

 召喚と観察が同じってなんだそりゃ、意味がわからん。

 ……わからんが、どうせ聞いても教えてくれないのだろうね。

 ま、触らぬ神に祟りなし


「じゃあ、いっちょ召喚してみようか。レースト、[イオタ・略式機関砲]をプリーズ!」


≪了解です。で、場所はどこにです?≫


「んー」


 どこがいいだろうかと辺りを見渡しつつ、決めたのは結局のところ真正面ど真ん中。

 初めての召喚なのだから、見える場所が良いに違いない。


 指で指し示しつつレーストへと場所の指示を出す。


「そこのポイントアルファにゴーだ!」


≪また、前の匣の言葉ですか。――ふむ、理解しました。ポイントアルファ了解。申請受理、代理承認完了。3分後に[イオタ・略式機関砲]を召喚します≫


「ノリノリだな、て、おい! 3分も掛かるんかい!」


≪当然でしょう。逆に聞きますが、あなた、出て来いって言われて、急に出てこられる程いつも準備万端なんですか?≫


「うぐ」


 確かにその通りだ。

 家のチャイムを行き成り鳴らされて、お前の出番だぜって言われても即座には対応できないだろう。

 飯食ってるかもしれないし、トイレしているかもしれないしね。

 そう考えたら3分って早いな。超頑張ってるよ、[イオタ・略式機関砲]。


 にしてもあれだ、召喚準備時間短縮ってのが何か分かった気がするわ。

 この召喚するまでの時間を早くするってことなんだろうね、たぶん。

 でも、早くなるにしても、トイレとかしてたらどうすんだろうな。

 トイレとかいいから、はよ来いって脅す感じか。

 だとすると、それって召喚された側は大丈夫なんだろうか。

 こっちとしては便意を我慢してまで戦って欲しくはないのだけど。

 いや、戦場でギリギリの戦いをしていたら、そんなことも言ってられないのか。

 糞尿撒き散らしてもいいから戦って欲しい。そんな日が来るのかもしれないな。


 うん、頑張れ、[イオタ・略式機関砲]!


≪……あなたは相変わらずアホですね≫


「なんでだよ!」


≪いえ、いいと思います。ルースト様の加護を受けるに相応しいですよ、あなたは≫


「それ、褒めてるの? 褒めてないよね? 貶しているように聞こえるんだけど?」


≪いえいえ、とんでもない! ルースト様の加護を受けるに相応しいと言っているのだから、最上級の褒め言葉ですよ?≫


 どうにも、そう聞こえないから聞いたわけだが。

 まぁ、いいや、それにそろそろ体内時間計測で3分経つ。


「さて、おいでませ、[イオタ・略式機関砲]!」


≪――3分経過、[イオタ・略式機関砲]、ポイントアルファへ召喚≫


 レーストが言った瞬間、目の前に50cm程の大きさで、頭に砲台、そして、虫みたいな節足型の4つ足が付いたメタリックな奴が顕現した。


「おお、こいつが[イオタ・略式機関砲]か……!」


 思わず、[イオタ・略式機関砲]へ近づいていき、ペタペタと触っていく。

 いいね。俺の世界基準のものが出てくると思いきや完全に架空の物だ。

 全身金属でよくわからないテクノロジーが使われているっぽい。


 しかし、据え置き火器というぐらいだからタレットだろうとは思ったが、まさかこんな大きい奴が出てくるとは思わなんだ。

 これ、砲身は穴的に俺の手のひらの4分の一程度はありそうってことは、砲弾は40mm超えてるぐらいか?

 え、マジか? 俺はミリタリーオタクじゃないからそこら辺詳しくないが、確か30mmでもやばくなかったっけか。

 それより小さくても触れたら、ていうか掠めただけで、その部位の周辺無くなるとかそんなレベルだったような気が。


「ッ――」


 思わず、後ずさる。

 そして、慎重に[イオタ・略式機関砲]の後ろに回った。


≪……何をやっているんですか≫


「やばいものを召喚してしまったのかもしれない」


≪はぁ?≫


「レースト、こいつの威力ってしってる?」


≪知らないですね。ルースト様が作りましたから、そこら辺の情報は共有されてないんですよ≫


 そうで無ければルースト様が楽しめないとのことですよと、レーストがどこか他人事のように続けた。


「あっ、やば――」


 [イオタ・略式機関砲]の砲身が動いたのと同時、それに釣られて俺は砲身の先にいる20m程離れた木の陰から出てきた山ウサギを発見してしまう。

 こいつって自動で敵を捕捉するのねとか、今まで散々狩ってきた山ウサギに対して山ウサギさん逃げてとか、そんな取り留めないことを頭の片隅で考えた瞬間――


 ――轟音と共に、山ウサギが出てきた木ごと吹っ飛ばした。







「……マジか、これ」


 山ウサギが出るたびに変わっていく地形。

 その音に釣られて出てくるモンスター達。

 そして、そのモンスターを倒す為にまた変わっていく地形。


 どこの地獄絵図だコレ。


 あ、レベルが上がった。


「……ルースト様に借りてるのにレベルは上がるのな」


≪この匣での最終的な召喚の執行者はあなたですから≫


 なるほど、よくわからん。

 借りて倒したけど、元の持ち主ではなく借りて使った方に経験値はいくよって、とりあえず思っとけばいいのだろうか。


「召喚する時に魔力を使わなかったけど、この出している弾も俺の魔力は使ってないよね」


 魔力を使ったときに発生する、あの独特のクラッとする感覚が無い。

 それに、水鉄砲を1回空にしたぐらいで底を尽きてしまう俺の魔力である。

 今の目の前の光景は間違いなく俺の魔力は使っていない。


≪そうですね、これはルースト様の魔力を使っています。まぁ、元々召喚士が召喚した後は、召喚された側の魔力を使うことが多いので、召喚士は魔力は使わないことのほうが多いですけどね≫


 さよか。てことは、これってこの威力で呼び出すのに魔力を使わなけりゃ、使ってる最中も魔力は使わない。

 何、このバランスブレイカー。完全にこの世界のバランス崩れちゃってるよ、これ。

 これは流石にあかんのじゃないだろうか、ルースト様。

 明らかに世界に異物が混ざっちゃった感じになってるぞ。


≪まぁ、ルースト様は大雑把な方ですから≫


「いや、大雑把にも程があるだろう!」


 もちっと全体のバランス考えよーよ。

 条件付で使用すら出来ないスキルの後に、これだよ。

 幾らなんでも極端すぎるだろう。


 あ、またレベルが上がった。


≪後、残り2分ですね≫


「え、何が?」


≪[イオタ・略式機関砲]がこの世に顕現できる時間が15分程度なので、後2分で召喚時間の限界が来ます≫


「ふーん」


 なんだろうか、もう後出しの情報でも全然怒る気になれない。

 目の前のスガーン、ズガーンやってる[イオタ・略式機関砲]を見てると、どうでも良く思えてきてしまう。

 魔法の弾を撃っているからか、撃つ時はそんなに煩くない[イオタ・略式機関砲]を見て思わず思ってしまう。


 もう、こいつ一つで何も考えなくていんじゃね、と。


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