第十話 ポイント消費は正義です!
とりあえず、サクッと山ウサギを狩ってレベルを上げてみた。
「“スキルオープン”」
手持ち火器は一旦除くとして、据え置き火器(ノーマル)、据え置き火器(レア)、据え置き火器(スーパーレア)のいずれか。
ノーマルが2ポイント、レアが5ポイントだから一応、レアだったら1回、ノーマルだったら2回使えることになる。
……ここはレアで行くべきだろうか?
何と言うか最早駄目で元々である。
ならここは盛大にポイントを突っ込んで見るべきではなかろうか。
≪その考え。私、嫌いじゃないです≫
おまえは寧ろ大好きだろうが。
「……ま、やってみっか」
気楽にいこう、気楽に。
駄目でも死ぬ事はないんだからさ。……ないよな?
≪さぁどうでしょう? まぁ、ルースト様の性格を考えると、もしかしなくもないですね。ここでスキル発動、自爆! ドーン! 面白いッ! とか言いそうではあります≫
……何で初めて会ったときに、そのポンコツ具合に気づかなかったかな。
結構、まともそうに思えたんだけどな。
≪あなたも長く付き合えばわかってきますよ、どんな方なのか≫
正直、あんまり分かりたくない。
いや、俺を救ってくれた神様ではあるんだけどさ。
何ていうか、すごそうな感じで実は……、とかそんな要素いらない。
ま、今更言っても仕様が無いか。
それに、今のところ使えないが、スキルだってくれたんだから。
元の俺の能力を考えたら、元々何も無かったはずだ。
で、あるならば、スキルが増えた分だけ得したとも言えるはずである。
そう、得した、超得した。俺はめっちゃ得したぞー、と。
「よしゃッ!」
心は前向き、気合は十分。
ならば、後はやるだけ。
脳内に浮かぶ、据え置き火器(レア)の文字に対して解除と強く念じる。
と、頭の中に聞いた事の無いファンファーレが鳴り響き、脳裏に展開していたスキル一覧が閉じた。
……また、えらい荘厳なファンファーレだったな。
何ていうか重要な式典とかで流しそうな、そんな楽曲。
手持ち火器(ノーマル)は軽い感じだったのに何この違い。種類の違い? いや、レア度の違いか?
だとしたら、こんな格差つけていいのかよ。
≪いいんですよ。これぞ、神の思し召し! ポイントをつぎ込んだ者が正義なんです!≫
「課金は正義! みたいなの止めて貰えます?」
≪課金がどうかはわかりませんが、ポイント消費は正義です!≫
「……さいですか」
ま、いいとして、さて、何が出たのかな、と。
「“スキルオープン”」
脳内にスキルの一覧を出して新しいスキルを探した。
「ん? んー? ――へ? ……何これ」
最初、スキル一覧の一番下にある銃器ツリーを見に行ったのだけど、そこには何も追加されて無かった。
首を傾げながらスキル一覧を上へと辿っていくとあった。それも大量に。
(召喚術)
イオタ・略式機関砲
召喚術強化・攻撃 Lv1 必要ポイント1
召喚術強化・防御 Lv1 必要ポイント1
召喚術強化・体力 Lv1 必要ポイント1
召喚術強化・速度 Lv1 必要ポイント1
召喚術強化・魔力 Lv1 必要ポイント1
召喚術強化・知力 Lv1 必要ポイント1
召喚術強化・魅力 Lv1 必要ポイント1
召喚術強化・探知 Lv1 必要ポイント1
召喚術強化・隠蔽 Lv1 必要ポイント1
召喚術強化・回復 Lv1 必要ポイント1
召喚術強化・制御 Lv1 必要ポイント1
召喚時間延長 Lv1 必要ポイント1
召喚準備時間短縮 Lv1 必要ポイント1
複数召喚 Lv1 必要ポイント1
新たに召喚術ツリーなるものが出来ていて、その中に全部で15個のスキルが新規で追加されていた。
≪……なるほど、こうなりました、か。いや~、本当に当たり、しかも、大当たりを引いてしまいましたね、残念≫
「大当たり引いて何で残念だよ!? ていうか、これ何だよ!? 何か知らんけどスキルがいっぱい増えたぞ!」
今までが今までだっただけに、こんだけ増えてしまうと何か裏がありそうで怖い。
何らかの死亡フラグだったりしないよな、これ。
≪大丈夫ですよ。召喚術を覚えただけです。とりあえず、おめでとうございます。これで晴れて村人からも卒業ですね≫
「はい?」
≪召喚術を覚えましたから、強制的に職業は召喚術士です。まぁ、本来であれば、召喚術士は生まれた時からその才能が無ければ無理なんですけどね。……それにしても、見る限りかなりルースト様の加護の跡が見られますね≫
ルースト様の加護?
……確かに、必要ポイントが1だったり、覚えたスキルの量も多いしでかなり仕事をしている感はある。
ていうかこれ、俺こうなったら無才ではないよね?
≪そうですね。もう能無しとは呼べないです。これからは、ルースト様の七光り野郎と呼んで差し上げましょう≫
「おい、ちょっと待て!」
≪冗談ですよ、ルースト様を信じなかったくせに、その力だけはちゃっかり借りる召喚士モドキさん?≫
「やべぇ、酷い言われ様なのに大概合ってる!」
すんません、ルースト様。これからは信心致します。
我ながら現金な奴だなと思いつつも心の中でルースト様への懺悔を行う。
≪まぁ、ルースト様はあなたが信じようが信じまいが間違いなく気にしませんが。そんなことより試さなくていいのですか?≫
「あ、ああ、そうだな」
言われて気づいたが、スキルの量は確かに増えたけど肝心のスキルがどれだけ役に立つかが分からない。
召喚士ってことは、何かを召喚するわけで、この場合はこのスキル一覧にある“イオタ・略式機関砲”て、奴だよな。
これだけレベルはないし、世界的に一般的ではないってことで、つまりは、固有のスキルのはずである。
レースト、あってるよな?
≪合ってますよ。後のスキルは全て召喚士の職業スキルです。ただ、あなたのレベルで覚えるべきじゃない、この匣のルールに反したスキルも結構含まれてますけどね≫
レーストが普段とは違う、若干冷たい口調でそう告げた。
……何だ? 怒ってるのか?
これ決めたのルースト様だからな? 俺じゃないからな?
≪別に怒ってませんよ。ルースト様は良くも悪くもいつも通りだと思っただけです≫
「んー?」
よくわからんと首を捻る俺に、ルーストはなんでもない無いですよと、どこか呟くように返した。