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魔闘場編終了

 草木も凍りついたちょっとした銀世界、炭になった木、荒れた大地・・・・・・明らかに戦場跡地になった大通りには、自分で解毒したユリに、治療を今か今かと待ち構えている戦士たちが群がっていた。


 弁水「鈴蜂先輩、大丈夫ですか? ・・・・・・なんで・・・・・・・何で竹刀を敵に渡したんですか?」


 「・・・・・・わからない・・・・・・体が勝手に動いたんだ。きっと奴の術にかかった」と、自分の額を、持っていた竹刀で、ぐりぐりかきむしりながら鈴蜂は答えた。


 「馬鹿もん!!!! 幅!! なぜ闘わなんだ! お前がちゃんと闘っていたら、虎狼も捕縛できたはずだし、あのバカ健二の性根も叩き直すことだってできたはずだ!」と、バカ健二が出した木に縛られている先生が、自分の足をじたばたさせながら怒鳴っていた。


 幅「もうっやっだなあ先生! あんなダブルチート相手に、俺が敵う分けねえじゃありませんか。中途半端に攻撃なんてしてみてくだせい、あいつら怒り狂って、やっぱ今敵をお亡くなりにしちゃおうっなんてことなったら最悪ですよ」


 先生「全く・・・・・・終わったことは仕方ない! それよりこの木燃やしてくれ。幅!」


 幅「燃やすなんて、危なっかしい! それにこの木・・・・・・ちょっと特殊っすね」


 そう幅が言った後、彼はその木に触れた瞬間、木が魔法陣に変わった。先生は解放され、一息つく。


 先生「お前、そんなこともできたのか! 応用力に関しては半端が無いな、それ」


 幅「術者本人に意識が通ってない魔法のみ、魔法陣や術式に変化させることができるんっすよ」


 その魔法陣は、今まで幾通りの魔法陣を観察してきた幅が驚くほど、これまで以上にないくらい複雑な術式で構成されていた。


 幅はその魔法陣を、自分の顔の至近距離まで近づけ、ぶつぶつ唱えた後、これまで弁水に見せたことのない最高のいやらしい笑みを出していた。


 弁水「幅君・・・・・・?」


 幅「先生、この後時間よろしいっすか? あの金髪小僧を倒せる算段を伝えたいと思うっす」


 先生「はぁっ!?」


 「ただし・・・・・・鈴蜂と先生軍団だけ、伝えます。それ以外の歩行者は、興味を持たないように・・・・・・てめえら好き勝手に休日を堪能すればいい」と、幅は自分の持っていた光り続ける魔法陣を、丁寧に四つ折り曲げて、先生に渡そうとした。


 先生「なぜ、わしに渡す!?」


 弁水「誰が歩行者ですか!? 同じ部活の中でしょう!! なんで鈴蜂先輩と先生だけ伝えるんですか!? あいつらは誰なんですか!? 幅さんとあいつら・・・面識があるんですよね? 聞きたいことは山ほどあります」


 「そう一気に問うな、面倒くせえ・・・まあ、健二 杉田 と 虎狼 シャル・・・」と、幅は何かを言おうとしたが、視線を天に向け、しゃべる途中だってのに口を閉じた。


 ルナルは自分の額から、熱を奪う塩水を少量流している。


 「もしかして・・・シャルナル家の者なのですか・・・彼は!?」と、ルナルは自分の震える手を、もう一つの手で抑え合いながら、うつむいた状態で語っていた。


 「ルナル君は知らなくて当然だ・・・名門家が自分とこにいた無差別大量殺人事件の下手人を表沙汰にするかよ、てめぇらは気にすることねえぞ」と、くせ毛を不衛生的にかきむしる幅。


 続けて幅は「安心しやがれ、俺が死人を出さねえように守ってやるよ!・・・全員な!!」と、言った後、頭頂部から湯気を出すかと思わせるくらい、自分の顔を真っ赤にしたかと思えば、全力疾走でその場からダッシュして去って行った。


 現見「何なんだ・・・あいつ」


 ユリ「あいつから、あんなキザなセリフ聞くの初めて・・・」


 「きっと、言った後、すごく恥ずかしくて逃げたしたんでしょう」と、自分の口角を軽めに握った拳で隠し、クススッと笑っている弁水。


 幅が持っていた魔法陣は、無造作に地面に落ちていた。それを眺めていた先生は、何かを思い出すかのように・・・「ああああああああぁぁぁあああああぁあああああああ!!!」と、叫んでいた。


 黒烏「どうしたんですか!? いきなり!! 先生」


 先生「あいつだけしか、虎狼を倒す算段を知ってんだ!!・・・さっさとあのバカを探せ!」


 弁水「携帯の番号知ってるから大丈夫ですよ! それよりバス乗って、一息つきましょう・・・もう精神的に限界まで疲れ切りました・・・もう昼ですし」


 鈴蜂「残念だけど・・・それができそうにねえな・・・幅だけじゃねえ、バスも逃げてるぜ」


 そう、虎狼たちを運んでいたバスの運転手は、彼らの戦闘を見るや否や、一目散に逃げ出したのだった。


 それから彼らは、どう見ても気づかれした顔で、本校舎に行くため、4キロの道のりを歩きだしたのだった。


 その後、とりあえずみんなは、何故か鍵が開いていた部室で、昼食と取ろうとしたときに、ユリの揚げパンが入っていた袋を、何者かに盗まれていた。彼女は少し眉を逆八の字にして、泥棒を探していた。・・・・・・その9時間後だった、毒針が大量に刺さった状態の幅が、この校庭の草陰で転がってるのを、糸尼高校御用達の警備員が発見した時が。 





 



 

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