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因幡の実力

 「ごめんよ、幻ちゃん・・・許してよ・・・彼女に色目使ってないよ・・・信じて・・」と、痛みで頭を左手で抑えながら誰もいない方に向かって、言う現見。

 

先生は、魔闘場の台から離れ隅で地べたに座っている現見を横目に、次の試合の対戦相手の組み合わせを考えていた。


 「次は私にいかせてください! 3-1のクラスの威厳を取り戻すために闘わせてください!」と、やる気を先生に故意に見せる金髪の女性。


 「ルナルか・・・わかった! 2回戦の出場を許可しよう、ルナルと闘いたい奴はいるか?」と、先生は承諾し、対戦相手を考えるのは面倒臭くなった感情を起こし、乾いている大きな声で呼びかけた。


 「ルナルさん!? 白糸家(ユリの所属している名門家の名前)と並ぶほど有名なシャルナル家のお嬢様!? さすがに私でも知ってるよ! 超有名人じゃん!」と、ユリの正体を知った時ほどではないが、驚きを隠せない弁水。

 

「次はおれが行くぜ、鼻頭伸ばした天狗を翻弄してやるよ、この魔王自らな!」と、いやらしい笑みをこぼしながら悪役が纏っていそうなオーラを発して言った幅。


 「っと、その前に・・・」と、現見の方にスキップで近づく幅。そしていきなり弱っている現見の首に向かって、格闘家顔負けのクロスチョップの連打を喰らわした。哀れ現見よ・・・どんなにあなたが憤慨しても、奴の愚行がやめぬ限り慟哭や断末魔も言ないのだ・・・


 弁水や先生、鈴蜂は驚愕したが、黒烏は「やっぱり優しいんですね、部長」と、珍しく訳の分からないことを言っていた。


 被害者の現見は弁水たちよりも比べ物にならないくらい驚き、なぜ自分は今日こんなにひどい境遇に遭うのだろうか・・・と、考えていたのだが・・・。


 幅からの攻撃は止んだ・・・クロスチョップの連打によって起きた彼の首の痛みは、なんと一瞬にして無くなった。(実はルナルに足蹴にされた時も同じようなことが起こった)それだけではない、さっきユリの魔力を浴びすぎることによって起こった頭痛も、だいぶ治まってきた。


 「お前・・・いったい何を・・・」と、何から何まで理解不能に陥っている現見。

 

 「ああっすっきりした・・・腹立つならちゃんと後で訴えろよ、羨ましいリア充め。」と、現見に背中を見せて、魔闘場の台に向かう幅。 

 

  弁水「幅君は何をやったの?」


 黒烏「現見さんの魔力アレルギーを少しでも抑えるために、ダメージを与えたのでしょう・・・」


 弁水「言ってる意味が分からない・・・」


 ユリ「私のさっきの技は、相手の体に治癒の魔力を大量に入れる技、なにもなく布団にくるまっていたら本当に3日は治らないけど、ダメージ等を受けた場合、容れられた魔力でそれらを修復し、現見さんの魔力アレルギーをできるだけ抑えようとしていますね・・・害虫め、余計なことを」


ルナル「茶番は終わりましたわね・・・」


 幅「茶番だけじゃない・・・今何時だ?」と、台の上に乗った幅。


 ルナルは片側のみの眉をひそめながらも、自分の腕時計を見て、時刻を幅に教えた。「10時57分ですわ・・・」


 幅はなぜか落ち込んでいたが、ルナルは気にせず、先生に「試合始めていいでしょうか?」と、言った。


 ちなみに弁水は、幅の・・・彼の使う攻撃魔法はなんなんだろうと考えていた・・・確か弁水の能力で、幅の魔力限界値を計ったところ、マイナス√0,2であった。


 「おう、では第2回戦・・・開始!!」と、第一回戦と言った時よりも激しく叫んだ先生。

 

 先生が叫び終えた瞬間だった・・・・・・「ドグアアアァアアン!!!」、幅の体が激しく爆発したのだ! 3メートル程彼に離れたルナルは熱風を肌で感じたが、ダメージは受けていない。


 目を点にしてる弁水たちを横目に、全身黒こげになり、黒煙を纏っている幅は「・・・さすがだぜ、ルナル君・・・・・・俺・・・はもう・・・ダ・・・メだ・・・いい魔導士になり・・・な・・・ガク・・・」と言った後、倒れて力尽きた・・・?


 「えっ!?・・・・・・えっあっ???」と、頭の中がクエスチョンマークいっぱいになり、周りを挙動不審に見渡すルナル。実は彼女は爆発魔法を始め、炎属性の魔法を使えないのだ。しかし対戦相手の彼は、爆炎によって倒れてる。


 ユリはおもむろに幅に近づく。(台の上には立っていないが・・・)


 ユリ「・・・部長、いい加減にしてください、ふざけて自爆・・・しましたよね? 早く起きないと、毒針で部長の心臓を停止させますよ・・・?」と、彼女は相変わらず眉と口角を動かさない状態で語ったが、雰囲気は言葉通り、殺す気満々だ。


 幅はいやいや起き上がり、「ちょっとした冗談じゃん? ほら俺、シリアスがあんま好きじゃねえのよ・・・わーったよ!次、 真面目にやるからちょっと回復してくれる?」と、テヘッと舌を出し、自分の頭をこつんと右手でたたいた。


 ユリはため息をこぼし、ポケットから出した金属製の8㎜の針を、幅の首めがけて投げ捨てた。その針に刺された幅の全身火傷を負った肌は一瞬で、元通りの茶色い肌に戻った。(本来は試合のルールでは、他人に回復させてはいけないのだか、誰もそのルールに触れる隙がなかった。)


 ルナルは彼の自爆の目的が、彼女が一番許せない理由・・・冗談だと分かり、さっき出したユリの殺意の数倍禍々しい殺気を発し、唐突に幅に向かってシャレにならないくらいどでかい氷塊を飛ばした。


 気付いて避けようとした幅だったが、彼の二つの足元が、いつの間にかがっちり凍らされている。・・・・・・動けない。


 彼の手から魔法陣を出したが、間に合う気配はない。氷塊はもはや幅の目の前だ。


 幅の体にでかい氷塊がぶつかった。氷塊は粉々に壊れ、生々しい「グシャっ」という音が響き渡った。・・・氷によって舞った霜と砂埃が幅の安否を隠す・・・。  


 ルナルは生々しい音を聞いた瞬間、彼女の血の気が引いた・・・しまった、やりすぎた・・・っと。


 少しの間、魔闘場は、鳥や風の音がうるさい静寂に包まれた。


 「あ~安心してくださいよ~パツキンのお姉ちゃん・・・おれぁ常日頃から鍛えてるんで、ガタイは自信があるんっすよ、っていうか俺より自分を心配しろ、天狗君」と、野太い声が聞こえてきた。


 弁水たちはもちろん、ルナルは自分のハートの鳩に、豆鉄砲を喰らってしまった。


 霜と砂埃が、風に流される・・・幅がルナルの視界に表れた。服や肌はぼろぼろだが、浅ましい悪党みたいな余裕の笑みをこぼしていた幅・・・。


 「貴様・・・どんな魔法を使ったのですか!?・・・普通あれに当たりましたら死ぬはずでは・・・」と、冷や汗を流し、臆するルナル。


 「なんか足元の氷、あんだろ? あの氷塊喰らっちまったらさすがの俺でも、場外! っつうなるからそれだけを強化したんだよ。攻撃を全部魔法で防御したら体が貧弱になるぞ! 諸君!」と、みんなに向かって人指し指を向ける幅。


 呆然とするも、信じきれないルナルは、自分の胸ポケットから、長さ12㎝の魔法杖を出し、攻撃態勢に出る。


 しかしいつの間にか、彼女の四方八方から、「ゐ」や、「ゑ」、「@」の羅列で構成された汚い茶色に光る複数の台形型魔法陣が発生した。


 ルナルはそれに危険を感じ、足元から美しく青色に光る、一般的な丸型魔法陣を出し、「ハイジャンプ」と叫んだあと、3m上空に跳んで、台形魔法陣群から脱出するはず・・・だった・・・。


 だが、なんとその複数の平面な魔法陣そのものが、生き物みたいに彼女に向かって飛んでいき、おもちみたいにグニョーッンと伸びて、彼女の胴、両腕、両足に張り付き、縛り付けた。


 「な・なんですのこれは!? なんで魔法陣そのものが私を縛れるのですか!? 魔法陣とは魔力・・・形の無い物なのですよ!??」と、完全に混乱した状態で、床にしりもちで何とか着地して、もがいてるルナル。


 弁水と現見は、自分の見てる光景が信じられなかった。魔力を全く変質されてないで、できた魔法陣が人に触れれるなんて魔導士にとってはばかばかしい夢物語なのである。


 「なんや、知らなかったのか・・・俺の使う属性・・・」と、呆れたとでもいうような顔をしている幅。


 一瞬間をおいて開いた幅の口からとんでもないことを言い始めた。


 「俺の使う魔法の属性は魔・・・(火も使えるが・・・)。魔法陣そのものを好き勝手に操り、魔物を自在に創造し、魔力限界値を自分の意志で伸ばせたりとかもできる・・・歴史上でも19人しか使えなかった超レアな属性さ」と、幅は自慢げにドヤ顔した。


 属性という言葉がある・・・魔導士は、自分の持っている属性と呼ばれた物質しか自在に創造できないのだ。弁水は水、ルナルは氷・・・まるぼうろ屋の堂さん(誰だよ!?)は雷といったところか・・・


 バカげた説明を受けていた弁水は、一瞬頭の中が真っ白になったが、もしや・・・と思いながら、耳にかけているレンズの大きいメガネをはずした。


 ぼやけた幅の顔の横にマイナス√0,2ではなく・・・・・・1万8千と書かれた数字が映ってあった。


 「そんな・・・こともできるんですか・・・?」と、呆然として、息が上がっている弁水。


 そうなのだ! 彼女が幅の顔を裸眼で見たとき、・・・彼が自分の魔力限界値を、何らかの方法で見られた場合、偽の値を代わりに見せるといった能力を使っていた。


 物語の視線は再び魔闘場の台に戻る。ルナルが張り付いた魔法陣をはずそうと、縛られている腕や足をばたつかせ、はずそうとしたが、対象は全く変質されてない魔力でできている魔法陣・・・はずれられる予感どころか触れられている感覚もない。


 「おーい、おねえさ~ん。魔法陣だから、魔法でしか取れないよ~、どう? 参ったと言っちゃいなよ~・・・楽になりな・・・俺以外は誰も君の失態を表面上では嘲笑わないよ~」などとほざく幅。


 「馬鹿にして・・・無礼ですわ・・・」と、血が出そうなほど歯ぎしりした彼女は、両腕は縛られてあるが、何とか動かせる両手で、台形の魔法陣を氷漬けにした。


 幅の魔法陣はもろいもので、凍らされたそれは、すぐに崩れ・・・茶色から赤色になった。


 「ふふ・・・結構もろい物ですね・・・」と、自分の眉毛を逆八の字にして、笑みをこぼすルナル。


 「あ~あ、取れちゃったか・・・ああっそうそう、その魔法陣は崩れたときに発動するよ、気を付けてね」と、真顔で語る幅。


 「え」と言ったルナルの周辺にある魔法陣から前の3倍以上に光りだした。


 その後、ルナルを縛った崩れてる魔法陣から爆発が起きた。激しい爆音も聞こえる。


 ルナルの服の一部が灰になり、黒煙を纏い、全身火傷まみれに衰弱してるルナル。


「ふざけるなああああああああああああああぁあぁああああぁぁぁぁあああああああああああああああ」

と、ルナルは今までにないくらい天に向かって激昂し、幅の足元にでかめの魔法陣を生みだした。


 「名門家の私が・・・私が・・・こんな奴に・・・」と、もはや正気でないルナルが、明らかにやけを起こし、幅だけでなく、ルナル自身・・・そして弁水たち全員の足元まで魔法陣が肥大化した。


 焦りだす弁水たちを横目に、身をかがめる幅。


 「氷漬けになれえええええええええぇぇぇぇええええええええええええええええええ」と、ルナル。


 「びりっびりびり」


 弁水は、自我を失っているルナルから妙な音がする幅のところにに視点を戻した。そこには信じられない光景が映っていた。


 幅がルナルの仕掛けた魔法陣を、シールか何かみたいにひっぺはがしたのである。


 その後幅が、まるで掛布団を敷布団にかけようかなのごとく、両手で左右に伸ばした状態でルナルの魔法陣を持っていた。(ちなみにその魔法陣は、誰もいない方向に幅が向けていた)


 余談だが、その魔法陣はベロンと、垂れ下がっており、大半の部分が地面にへばりついている。


 そしてその魔法陣から、さっきルナルが出した氷塊の何倍もの大きな氷が、至近距離で幅の体にぶつかり、そのまま彼は腹が氷漬けにされた状態で、台の外側の床に強打した、それでも氷が止まることは無く、幅が魔闘場の周りにあるフェンスにぶつかるまで止まらなかった。


 魔研部のみんなはあんぐり口を開く。


 「ありり・・・負けちった・・・向きを間違えちゃった」と、苦笑して言う幅。


 ルナルが正気を戻した。周りの状況を見渡す・・・どうやら自分が勝ったことを悟ったらしい。


 「場外!!  第2回戦・・・ルナルの勝利!!」と、先生が叫んだ。


 ルナルが幅の方に歩みよる。


 「今回は私が勝ちましたわ、しかし・・・度重なる侮辱・・・次、私と闘うときは、ふざけずにやってください! 私ももっと強くなりますから」と、照れ臭そうに視線を右にそらしながら話すルナル。


 幅「・・・分かった。ふざけずにやるよ・・・・・・今な!!!」


 ルナル「え」


 幅の手から、今度は丸型の魔法陣を出した。その陣の真上にある空の何かが、彼らが当たるはずであろう太陽の光を遮ったのだ。


 空にいる何かとは、顔しかない白ひげのオッサン・・・先端が垂れ下がってる革製の三角魔法帽をかぶっていた。その15メートル超えてる化け物はじっと、ルナルを見つめ、ニタニタ笑っている。

 

 「誰が・・・ふざけずにやれだあ!? せっかくできるだけ相手を怯えさせずに闘いを終えさせようと思ったのに・・・ここまでルナル君が驕るとは! 俺のボケを止める奴は、このおれ『モンスタークリエイター』の真の力を見ることであろうぞ!!!」と、口角は笑みをこぼしているが、ものすごいプレッシャーをを出している幅。


 弁水たちは夢でも見てるのかと疑問を持ち、ルナルはとうとう口から泡を出し、失神してヘタヘタと、座ってしまった。


 幅「いっけね、やり過ぎた・・・テヘッ」



 


 


 


 


 




 


 


 


 


 


 


 

 


 


  


 


 


 


 


 


 


 


 

読んでくれてありがとうございます。

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