花火に散る夜
花火の音を聞くと
祖母のことを思い出す
みんなで花火を見に行ったとき
祖母が泣いた
理由はそのときは言わなかった
ただ、笑って
いいから思い切り楽しみなさい
そう言っていた
その理由を知ったのは
祖母が亡くなるほんの数日前だった
暑い夏
遠くで花火の音がして
祖母はおびえた目をしていた
花火嫌いってきいたら
怖いのよとぽつりともらした
爆弾や機関銃の音に
聞こえてしまうのだと
いろんなことを
忘れてるのに
消えてくれないんだと
祖母はそれでも生きてた
私は生きていたと
つぶやく
だからね
たくさん楽しい思い出を作ったの
おじいちゃんと二人で
一生懸命作ったの
それでも消えてくれないの
だからね
あんたたちしっかり生きなさい
ただ そう言い残して
この世を旅立った
花火の音を聞くときに
祖母の涙を思い出す
消えない記憶
わたしの記憶