生徒会長登場
一言あらすじ
流佳を落としました。
花は流佳が泣き止むまで抱き締めて撫でてやろうとしたがここは教室だ。当然周りにも生徒がいるわけで……
「あの…進道君そろそろ依頼について教えてもらってもいいかな?」
一人の生徒が少し気まずそうに聞いてきたことで花は現状の生暖かい空気に気がついた。慌てて流佳を離すと何事もなかったように話をはじめた。
「ギルドの依頼についてだよな。依頼は危険度で分けられていて危険性の高いものからA、Bとなっていって一番下がGってなってる。だから今回は中間だな」
「結構高いのね。大体どんな依頼があるの?」
「大体は小型の魔物の討伐、ちょっと珍しい物の納品とかかな。特に難しいものはないけど。あ、魔物はわかるよな?」
花の問いかけに数人の生徒は首を傾げる。仕方なく花は魔物について簡単に説明した。内容は以下の通りだ。
魔物とは普通の動物や植物と違い魔力を身体に秘めている生物でその外見はほとんどが醜悪なもので代表例はゴブリンやオークなどである。また、魔物としての位が高くなるに連れて人に近くなっていき、ある魔物は一国の王になるまで気づかれなかったという説もある。
魔物を殺すにはその魔物の核を完全に破壊する以外に方法はなく、核を壊されなければどんな怪我をしていても時間をかければ直ってしまう。また、魔物は戦うほど強くなり、死にかけるほど強くなる。だから魔物は最初の一回で倒すことがセオリーとなっている。
「……っとこんな感じだ。まだわからないことはある?」
今度は誰も首を傾げることはなかった。それを確認した花はこれから依頼を受けに行くと言って流佳の手を引っ張って教室から出ていった。
「進道君、ちょっと痛いよ」
「ん、悪い」
花は流佳を離すとゆっくりとしたペースに変えて学園内の依頼の受け付けに向かった。流佳はその後ろを歩く。
「あの…進道君。ちょっといいかな?」
「どうした、改まって。別に普通でいいって言ったろ」
「ありがとう。……何で私のことを許してくれたの?」
流佳が立ち止まったので花も止まって振り返る。流佳は潤んだ左目を花に向けて不安な表情でたずねた。
「さっきも言ったろ。それと同じだよ。ただ…俺のせいでハブられたやつのことをほっとけなかったっていう自己満足だよ。…恥ずかしいからこの話題はもう終わりだ。わかったな」
「きゃっ!」
花は照れていることを隠すために流佳の頭を乱暴に撫でる。流佳は短い悲鳴をあげて、だが嫌ではないようでその手を払いのけるようなことはしていない。花は落ち着くと手をどけた。流佳はそれを名残惜しそうに見ているが花は受け付けに向けて歩きだしたので流佳もすぐに続いた。
花達が受け付けに着くとそこにはすでに他の生徒が来ていて賑わっていた。学年が関係なく人数がいるので人のいないところを進んでいると目の前に槍が通りすぎた。特に驚かず槍が来た方向を向くと通香がいた。
「何か用ですか?通香センパイ?」
「何か用ですかではないだろう!!お前その子にしたことをもう忘れたのか!!これ以上何かすると言うのならこの私が許さないわよ!!」
通香が花を睨み付け、もう一度斬りかかろうと槍を構える。そこに銃弾が飛来してきて通香は後ろに飛んで避けた。
「何のつもり?翼」
「……少し落ち着いて。……花君はもうこの子を傷つけたりしないよ」
そして、銃を下ろすと花に向かって飛びついた。花も余り身長が高い訳ではないが翼は花の胸くらいしかないためしっかりと受け止めることができた。
「翼ちゃん久し振り」
「……花君~。……スリスリ」
花が近くにいることが嬉しくで花の胸に頭をすり付けて幸せそうにしている。その光景に流佳は嫉妬して、通香は怒りを露にして槍を構える。余談だがこのときこの光景を見ていた男子生徒は花に向けて呪うような視線を送っていた。
充分堪能したのか暫くすると翼は頭を離して嬉しそうに頬を緩めていた。ようやく終わったと花が再び歩き出そうとしたが今度は背中に流佳が張りついて体を密着させてきた。翼のときにも少し欲情しそうになっていたが流佳の胸が背中に当りこのときにも花は理性を保とうとを頑張っていた。流佳は案外すぐに離れてくれたのでなんとか自制心が勝つことができた。
今度こそ依頼を探そうと歩く花にまたも後ろからきた。槍が。
真後ろから来る槍を見えているかのようにかわすと銃を素早く抜き通香を向けて撃つ。しかし、それは翼に撃ち落とされてしまった。彼女の中では戦闘行為はダメらしい。
「翼が私の邪魔するのも私がイライラしてるのも全部全部あんたが悪いのよ進道花!!!!」
それでもまだ通香は花に襲いかかるが突如彼女の姿が消えた。そして変わりに通香のいた場所に見知らぬ男が立っていた。
「まったく困ったもんだ。勝手にやりたいほうだいしやがって。誰が責任とると思ってんだか」
男はため息を吐いて目に見えてだるそうにしている。男が花のほうに歩こうと足を一歩だしたとき花は無意識の内に一歩後ずさっていた。
(何で今俺は後ろに下がった?)
自分が後ずさっていたことに気づいた花はそれでも男が近づいてくるにつれじりじりと下がっていく。
「そんなに怖がらないでくれ。悲しいだろ」
「……誰だお前は?」
花は目の前の男が自分より遥かに格上であることは見た瞬間にわかっていた。しかし、それとは別の部分で得体のしれない何かが花の心を蝕んでくる。かろうじで踏みとどまっている花の様子に気づき男は珍しいものでも見たように笑う。
「へえ。俺を見ただけで本能的にわかるか。お前あの馬鹿、通香よりも強いみたいだな。名前は?」
「……進道 花」
男は花の名前を聞くと目を細める。そして思い出したようで頭の上に!マークが見えそうなくらいに目を見開いた。
「君が進道君か。話は聞いてるよ。一度会ってみたいと思ってたんだけど……」
男は花を見下ろす(男の方が身長が高いため)と不思議なようで。
「話と大分違うな。……なあ、進道君。俺達の仲間にならないか」
「は?」
花は突然の勧誘に驚いたがまず男が何者なのかを知らない。それに気づいた男は謝って自己紹介をした。
「悪い悪い。俺は結城 竜魔。生徒会長だ。もう一度聞くよ。進道君、俺達の仲間にならないか?」
こうしてこれからなんども相対する花と竜魔の初邂逅となった。