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第3話 異世界到着・・・・・・此処は何処?

異世界行きの特典である【魔法】【詠唱破棄】についてですが、主人公クロウが魔法を憶えるのは、もう少し先の事になるので今はまだ特典の証明には至りません。

死神の鎌によって切り付けられて出来た七色に輝く空間の裂け目に入って歩き続けること十数分後、漸く目の前に出口と思われる光が微かに見えてきた。


微かな光が見えた瞬間、やっと変な空間から抜け出せると思った俺は急ぎ足で一気に駆け抜ける。


「抜けた! ここが異世界か…………って何だ此処は?」


俺が記念すべき、異世界第1歩目の場所は雲を掴めるほどの切り立った山の頂上のような場所だった。

目の前には草木1本生えない荒れ果てた大地が広がっており、目下には生茂った密林のような深い森が広がっている。


この世界に来るために歩いてきた道は如何なっているのかと振り返って見てみるも、其処には空間の裂け目は存在せず、代わりに底の見えないほど深い崖が口を開けていた。


『おや? もう到着していたのか。待たせてしまって悪かったね』


今現在、於かれている現状を確認していると何処からともなく厳かな声が聞こえてきた。


「だ、誰だ!」


俺は声の主が何処に居るのか確認しようと、四方八方に視線を漂わせるも何処にも姿は見つけられなかった。


(声だけで姿を見せないなんて失礼な人だな。それとも人に見せられないほどのブ男なのか?)

『何か失礼な事を考えてないか?』


心の中で思っていただけなのに、まさか相手に筒抜けになっていたのか? 


『まぁ良い。私の姿を必死に探しても無駄だよ。私は君たち人間が俗にいう神の世界(天上界)から、直接君の心に話しかけているだけだからね』

「天上界から? それじゃ貴方が俺を異世界に送るための切欠を作った神様で間違いないんですか?」

『切欠を作ったのは私ではなく、君の世界の最高神ゼウスと、この世界の最高神の御二方だ。御二方には私とミカエルによって然るべき罰を与えているので、残念ながら此処に姿を現すことは出来ない』

「それで貴方は?」

『これは度々申し訳ない、私はこの世界の最高神に仕える天使だと思ってくれれば良い』

「その天使様が何故此方に?」

『なんだ、聞いていないのか。私は君に世界の事を大まかに説明するために参ったのだ』


そういえばヘルと名乗った死神の少女が、別世界の事を説明してくれる人が居るって言ってたっけ。

あれ? 天使は人とは言わないような気がする…………。


『では説明を始めるぞ? この世界は君が今まで生活していた世界とは大きく異なり、人間に害を及ぼす魔物や、魔族といった者達が蔓延っている。更には人間と動物を足して2で割った様な亜人達も多く生息しているが、此方は先に言った魔物のように、有無を言わさずに襲い掛かってくることはないだろう。後は当然だが、この世界では君の世界での硬貨、貨幣は使えない。此方では価値が低い順に鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨となっている。最後に此れだけは覚えておいて欲しいのだが、この地で君が何をしようと我等は一切関知する事はないが唯一つだけ例外がある。もし君が天上界に弓引く様な事があれば、私は神の代行者において君の魂を消滅させる。以上だ』


説明で分かったことは害を及ぼす存在である魔物が居るという事、友好的か敵対的か分からないが多くの亜人達が存在している事、あとは鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨という金の単位があることか。

異世界に渡る時の特典で【記憶能力】を貰った御蔭か、一度の説明で全てを理解することが出来た。


『これで本当に最後となるが君のステータスを確認したところ、魔力値と体力値が一般人よりも遥かに低く設定されていた。これでは少し歩いただけで息切れをしてしまうし、魔法も初期魔法を放っただけで魔力切れを起こしてしまうだろう。謙虚なのは良いが、それは時として身を滅ぼす。しかも今回は我々が一方的に迷惑を掛けたのだ、君が遠慮する事は何もない』


死神の少女が『打ち間違えた』とか『これで良いか』と言っていたのはこういう事だったのか…………。

というか、ちゃんと見てくれているんだな。結果として謙虚な人間と見られたのは良い事なのか悪い事なのか。


『そこで私の独断ではあるが、神々の戯れに巻き込まれた君に謝罪する意図も込めて、魔力と体力を考えうる最大値にまで引き上げておいた。これで並大抵の事では倒れる事はないだろう。では、今後の君の活躍を楽しみにしている。さらばだ』


と、その言葉を最後に何処からともなく聞こえてきていた声は聞こえなくなった。


「にしても、あの天使様の御心遣いがなければ俺はこの世界に於いて、ひ弱な人間でしかなかったわけじゃないか。確かに異世界に渡る時の特典の中に【身体能力の向上】だけを入れて【魔力量】や【体力量】の増加を望まなかった俺も悪かったかもしれないけど…………」


俺はそう独り言を口にしながら、自分が居るこの山を下りだした。

遥か眼下には鬱蒼とした森が広がっているものの、俺が居る場所は草木一本すら生えていない岩と土の大地。


これでもかと言うほどに姿勢を低くして、恐る恐る第1歩目を踏み出した。


「異世界まで来て足を滑らせた挙句に、岩に身体や頭を打ち付けて当たり所が悪くて死んでしまい、あの世行きなんてなんて洒落にもならないからな」


この世界に住んでいる人が見たら、確実に笑われるであろう姿勢で只管、道なき道を進むこと凡そ4時間。

出発地点から眼下に見えていた、鬱蒼とした森へと足を踏み入れる事が出来た時には既に日は落ちて、周囲は完全な暗闇に閉ざされていた。


「かなり不安だけど、この森で夜明けを待つしかないか。にしても嫌な気配のする森だな」


俺は歩いている途中で見かけた、樹齢何千年は経っていそうな大木の根本に静かに腰を下ろした。

が、眠らないようにと思ってはいても、此処まで慣れない道を歩き続けた身体は俺の言う事を聞かず…………俺はそのままの体勢で夢の世界へといざなわれるのだった。




俺が此処で眠ってしまってから、一体どれほどの時間が経過したのだろう。身体を何者かに揺さぶられる振動で目を醒ますと、俺の目の前にはしゃがみ込んで此方を心配そうな眼差しで見つめている1人の女性の姿があった。


「あの、大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」


女性は必死な表情で頻りに言葉を投げかけている。


「あ、ああ大丈夫だ。どうやら慣れない山歩きで疲れて眠ってしまっていたらしい」


俺は女性にそれだけを言うと、木の根元から立ち上がり服に付いた枯葉などを掃うと同時に眠っている間に獣に襲われていないか身体を触って怪我がない事を確かめた。


目の前の女性はといえば、現代では考えられない様な綺麗な緑髪で胸元には革製の胸当てらしき物、肘と膝にはそれぞれ胸当てと同じような素材で出来たプロテクターのような物を装着している。


「それは良かった。でも如何して『魔の森』に入ったりしたの!? しかも森の中で眠ったりするだなんて、死にたいんですか」

「えっと魔の森?」


俺は聞きなれない『魔の森』という言葉をオウム返しに女性に聞くが、女性はそれどころではないと言った表情で朝霧の漂う森の中を険しい目線で注意深く睨み付けている。


「っと、何時までもこうしてはいられません。歩けますか?」


女性は俺が何の問題もな普通に歩くのを確認すると『付いてきてください』と言って早足で森の中を歩き出した。


「ちょっと待って、魔の森ってなんなんだ? 君は一体?」


この現状に疑問を持って色々と話しかけるも、女性は『黙って付いてきてください。このままでは間に合わなくなります』と、全く取り合ってはくれなかった。


それにしても、頭が重い。慣れない世界で風邪でも引いたのだろうか? 誰かに頭を締め付けられているような酷い頭痛と、物凄い吐き気がする。


身体に異変を感じながらも、森の中を駆け抜ける女性の後を追う事20分、鬱蒼とした森を抜けて漸く立ち止まった女性に話しかけようとした次の瞬間、さっきまで俺達が居た森の様子が一変した。


俺が唯の木々だと思っていた物は木の根っこを動かして森の中を動き回り、足元に生えていた草も突如巨大化して動き出した木々と取っ組み合いの喧嘩をし始めるのだった。


「これは一体、どうなっているんだ?」

「貴方のおかれていた現状が、どれほど危険だったか分かりましたか?」

「木々や草が襲い掛かってくるなんて、幾らなんでも可笑しすぎるだろう。一体誰がこんな事を予測できるんだ」


俺がそういうと女性は困惑した表情で慌てふためいた。


「も、もしかして、『魔の森』のことを知らなかったとか言いませんよね?」 

「俺は異せ……いや、遠い田舎から出てきたばかりで此処の事はよく知らないんだ。山伝いに歩いてきて疲れたから、君が『魔の森』と呼んでいた森で一休みしていただけなんだよ」


流石に『異世界から来たから』なんて言えるはずもないので、ここは『遠い田舎から出てきた』という風に話を変えることにした。


「そうなんですか、それならば仕方ありませんね。それでは『魔の森』で一晩過ごされたという事で確認しなければならない事がありますので、私の村まで一緒に来てもらいますよ」


その後、俺は有無を言う暇もなく、女性に連れられて魔の森の外にある森の集落へと足を進めたのだった。


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