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第48話 遺跡の最奥で待っていた者

新たに『精霊』のタグを増やしました。

侵入者の気配に反応して炎が噴き出す仕掛けの罠が張り巡らされていた通路を、呪文効果がハッキリとしない【マジックシールド】を用いて通り抜けた俺達は最後の最後で左右から何者かに斬りかかられていたいたのだった。


が、事前に何らかの仕掛けがあると踏んでいた俺達は何者かの攻撃を手に持った武器で受け止めていたのだった。


相手を目視するのに邪魔だという事で炎の罠から身を守ってくれた【マジックシールド】を解除すると、其処には中身のない鎧だけの何かが剣を振り下ろしていた。


「これはリビングアーマーか!?」


そう口にしたのは剣を2本の斧で受け止めているジェレミアさんだった。


「リビングアーマー? くっ、鎧だけのくせして何処にこんな力があるんだ」


俺も、もう1体の鎧を相手にしながら目の前のコレが何なのか聞いてみると、その答えを出したのは俺達2人に守られて姿勢を低くしているアニエスだった。


そのアニエスはというと俺とジェレミアさん、2体のリビングアーマーの隙をついて部屋の奥へと逃れている。


「リビングアーマーとはゴーレムと同じように、魔法で人間の魂を定着させた生きた鎧の事です。見た目は脆そうに見えますが、定着された魂によって其の強さも異なるので注意してください」

「こいつ等に弱点はないのか?」

「鎧の何処かに魂を繋ぎとめるための刻印が施されている筈です。其処を破壊するか、二度と起き上がれない様に身体をバラバラに砕くかすれば動きを止める事が出来ます」

「そ、そうは言っても。此奴等、強すぎる」


ジェレミアさんも両手に持った斧でリビングアーマーの攻撃を受け流しながら、腕や足の甲冑を攻撃しているが効果は得られないようだ。

攻撃をして腕を本体から切り離しても、リビングアーマーが其れを拾って切られた場所に繋げれば瞬く間に元に戻ってしまうのだ。


「くっ! なんとかして動きを封じることが出来れば…………そうだ。あれが使えるかも? 【ウォーラ】」


俺はリビングアーマーから距離を取ると【ウォーラ】の魔法を使って鎧を水浸しにした。

水は旨い具合に鎧全体を湿らせ腕や足、胴体の隙間から大量の水が流れてくる。


「クロウさん? リビングアーマーを濡らして如何するつもりですか?」

「こうするんだよ、っと【ブリーズ】」


水浸しになった鎧に向けて【ブリーズ】を放つと、思った通り鎧はカチカチに凍りつき身動きが取れなくなっていた。

俺はその隙に目の前のリビングアーマーの胸当てを剣の柄で思いっきり叩き割ると、その瞬間に鎧はバラバラになって地面に転がっていった。

俺が砕いたのは鎧の胸部分だけだったのだが、【ブリーズ】の魔法で全体を凍らせていたのが幸いしたのか、頭から足元まで完全に粉々になってしまった。


其処に丁度、ジェレミアさんの方もリビングアーマーを倒し終えたのか、鎧自体を原型が留めていないほどに斧で切り裂いて身体の所々に切り傷を負ったジェレミアさんが肩で息をしているのが見えた。


「ジェレミアさん、御疲れ様です」


俺はジェレミアさんに足早に近寄ると、【ヒール】で身体の斬り傷を治してゆく。


「クロウも何とかリビングアーマーを倒せたようだな。一刻も早くコイツを倒して加勢に行こうと思っていたのだが、どうやら私が思っていたよりもクロウは強いようだ」

「運が良かっただけですよ。アニエスの助言もあった事ですし」

「いや、本来リビングアーマーやゴーレムといった種はA~Sランクの依頼に相当する魔物だ。クロウの様にDランクの、それも初めて見た者が倒せるほど簡単でもない。運も実力のうちだ誇っても良い」


丁度、ジェレミアさんの身体の治療が終えたところで目が血走っているアニエスが話しかけてきた。


「あの~~これで此処の罠はすべてだと思って良いのでしょうか?」

「100%安全とは流石に言い切れないけど、2体のリビングアーマーの強さから言って最後の砦を守っていたと考えて良いと思うよ」

「じゃ、じゃあ此処を調べてても良いですか?」


アニエスが此処まで興奮するのも分かる気がする。

今まで罠の事やリビングアーマーとの戦いの事で目に入らなかったが、部屋の両側にある本棚にはパッと見で100冊はゆうに超える多量の本が収まっていた。

更に正面の壁には、何やら白く光る宝石の様な物が埋まっている。


「ただし100%安全とは言い切れないから、不審な所には手を触れない様に。あと、分かってるとは思うけど壁に埋め込まれている何か光っている物はあからさまに怪しいから絶対に手を触れない様に。分かった?」

「はい、分かりました。行ってきます!」

「クロウとアニエスのやり取りを見ていると、妹を守っている兄の様に思えて来てならぬな」

「俺には兄弟が居ないので良くわかりませんが、もし居たとしたらあんな感じになるんでしょうか?」


そんな感じでジェレミアさんと座って話をしていると『お腹が空きました』とアニエスが言ってきた。


遺跡内を歩いて来た時間からして外は大体夜ぐらいかと思った俺達は此処で夜を明かすことにした。


食事は干し肉や果物といった携帯食しか残っていなかったが。それを食べながら俺とジェレミアさんは交代で見張りをしながら睡眠をとっていた。アニエスも寝る間を惜しんで本に噛り付くかのようにして読み漁っていたが、いつしか本に顔をうずめる様にして寝入っていた。


俺も見張りをしながら、ふと本棚から1冊の本を手に取って見てみると、其処にはデリアレイグの図書館で見た召喚術が書かれていた頁と同じ文字が所々擦れながら書き記されていた。


「やっぱり、これが古代言語という奴か」


《やっと…………1000年経って、やっと出会うことが出来た。主様……》


本を手にしているときに壁に埋め込まれている宝石のような物が光った様な気がするが、俺は何事もなかったように本を棚に戻して見張りを続けることにした。


そしてそれから6時間あまりが経過したところでアニエスが眼を醒ました。


「あれ? 何時の間にか眠ってしまってたんですね」

「遺跡を歩き続けた疲れと、腹が膨れた事で眠気が一気に襲って来たんだろう。無理もない」

「そうですね…………っと、おっとっと」


そう言ってアニエスは椅子に座って本を読んでいた体勢から立ち上がると、立ち眩みからか足をもつれさせてバランスを崩し、壁に埋め込まれている宝石に手が触れてしまった。


「「あっ!」」


俺とジェレミアさんは何があっても良いようにと臨戦態勢を整えてアニエスの傍に駆け寄るが、予想に反して何も起きはしなかった。


「全く、脅かすなよ。何か罠が作動するもんだと思ったじゃないか」

「すいませんでした」


壁に埋め込まれている宝石はアニエスが触れても、ジェレミアさんが触れても何も起きなかった。


どうやら罠が仕掛けられているという懸念はないようだ。


「此処に置いてある本を城に持ち帰って詳しく調べたいんですが駄目でしょうか?」

「置いてある本って…………どう見ても1回や2回の往復では運びきれない量があるな。外に居る衛兵に声を掛けて手伝ってもらうか」

「それには炎の罠を如何にかして無効化しないと。って、うわっ!?」


俺は2人が触って何事も起らなかったことから。何気なく壁の宝石に手を触れた瞬間、壁に埋め込まれていた白く光る宝石から夥しいほどの光の渦が巻き起こったかと思えば、宝石は触れても居ないのに壁から浮き上がり一直線に俺の胸へと飛び込んできた。


俺は上半身に鎧を身に纏っているので宝石は鎧に跳ね返って落ちる物だと思われていたが、予想に反して宝石は鎧に穴を開けることなく不自然に通過すると、激しい胸の痛みと共に俺の身体の中へと減り込んでゆく。


「グゥッ! ウガアァァァァーーーーー!?」

「クロウ!」

「クロウさん!!」


その痛みに為すすべなく、膝を付けて拳を握りしめながら耐える事5分。漸く痛みが治まった事で鎧を脱いだところ、何処にも宝石が身体に入ってきたと思われる傷は見当たらなかった。

着ていた鎧からも、何処にも損傷は見受けられなかった。


何事かと駆け寄ってきたジェレミアさんに身体を支えて貰いながら立ち上がると、何処からともなく何者かの声が聞こえてきた。


《主様、申し訳ありません。1000年経って漸くお会いすることが出来た大切な御方を傷つけてしまうとは、私は何と愚かなのでしょう》


「だ、誰だ!?」

「クロウ、大丈夫なのか?」

「別の誰かが俺に話しかけたような気がしたんだけど」

「此処には私とジェレミアさんとクロウさんの3人しか居ないですよ?」


アニエスは首を傾けながら、ジェレミアさんとともに痛い人を見るような顔で俺を見てくる。


《私は主様の身体の中から話しかけて居ます》


「身体の中って?」


《先程、主様の御身体に入った宝石に宿っていたのが私です。私に話しかける際は心の中で考えてくだされば結構です》

《こうで良いのか?》

《そうです。お上手です、主様》

《その主様っていうのは何なんだ?》

《私と波長の合う魔力を持った方にしか、私という存在を宿すことが出来無いのです。従って貴方が今から私の主様です》

《存在を宿すって言うけど、一体何が出来るんだ》

《この世界が創世された頃より存在している私の記憶、そして私の娘達こそが主様の物です》


世界が創世された頃からの記憶ってアニエスが知ったら、とんでもない事になりそうだな。

それに身体の中から響く謎の声の正体と、その娘達・・というのも気にかかる。

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