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第45話 古代遺跡に行きつくまでに

ギルドマスターであるジェレミアさんから、当日になって急に体調を悪くした魔術師の代わりに古代遺跡調査補助という依頼を受けた俺は、遠足前の小学生を思わせるかのように寝不足に陥り、遅刻寸前で待ち合わせ場所であるギルド前へと到着したのだった。


俺がギルド前に到着すると、其処には既にジェレミアさんが立っていた。

その出で立ちは何時もの露出度が高目な水着を思わせるような鎧ではなく、一般の冒険者を思わせるような胸当てに肘・膝当て、鉄製のグリーブと腰には2本の手斧が装着されている。

良く見れば後頭部のみを覆うヘルメットのような物も装備している。


「すいません、遅れました」

「いや、私も今来たところさ。それに同行する肝心の学者の姿がまだ見えないから出発はまだだね」


そうして俺が此処に来てから20分が経過したところで城の方から1台の馬車がやって来た。


普通より少し大きめな馬1頭で引っ張られている馬車は丁度俺の目の前で停車すると、中からイディアに似た年齢の女性が寝癖頭を手で押さえつけながら降りて来る。


「お、お待たせして申し訳ありません。古代遺跡調査の護衛を依頼した学者のアニエスです」

「私は今回、依頼を受けたジェレミアだ。それでこっちが…………」

「魔術師のクロウです。よろしくお願いします」

「はい、こちらこそ宜しくお願い致します。では早速、古代遺跡に向かいますので馬車に乗り込んでください」


俺とジェレミアさんは学者のアニエスさんに言われるまま馬車に乗り込むと、程無く馬車は動き出した。


馬車は思っていたよりも狭く、俺とアニエスさんとが横に並んで座り、その正面にジェレミアさんが座るだけで満席となってしまっていた。馬車の御者席には鎧を着た2人の衛兵が手綱を引いて、馬を操っている。


更に馬車のトランク部分にはテントや鍋やらが紐で括り付けてあるようだ。


「それでアニエスさん、古代遺跡ってどんな所なんですか?」


あまり仕事の事に首を突っ込むのは失礼かと思ったのだが、対面に座っているジェレミアさんも興味がありそうな顔をしてアニエスさんの顔を見ている。


「私の事は呼び捨てで結構ですよ。今回見つかった古代遺跡は数百年前の、時の賢者様にまつわる物と言われています。ただ、遺跡内に今も仕掛けられている罠によって何人もの学者や、その護衛を務めた方々が亡くなられているという話です。私と同室で研究されている方も、つい1か月ほど前に数人の衛兵を連れて遺跡の調査に向かったのですが、残念ながら帰って来られませんでした」

「今回、アニエスが遺跡調査に行くことになったのは自分から率先しての事?」

「はい、私は少しだけであれば古代語を読み解くことが出来ますから」

「そういえば昔読んだ本の中に時の賢者が召喚魔法を封じたっていう記述があったんだけど、今回の遺跡も時の賢者に関連しているなら何か関係があるのかな」

「それは古文書に記されている【火の魔神、水の魔神、風の魔神、土の魔神、世界を滅ぼし、時の賢者、之を封印せし】ですね。クロウさんも古代語を紐解くことが出来るんですか?」

「小さい頃から色んな本を読み漁っていたからね。その中に古代語で書かれていた本もあったんじゃないかな」


実際は【言語能力】の助けがあるからなんだけど、デリアレイグの図書館で見た魔法関連の本の後半部分にそれが書かれていたんだよな? という事はアレが古代語だったと考えて良いんだろうか?


「私は死ぬまでに一度でいいから、召喚魔法をこの目で見てみたいんです。時の賢者様がいらっしゃった時代には、無から有を作り出すという夢の魔法もあったそうなのです」


間違いなく【マジックウェポン】とか【マジックシールド】の事だろうな。

アレは手元に頭の中で想像した武器を作り出す、もしくは何処かから転送してくるというような魔法だからな。


アニエスの前では出来るだけ使わないようにしないと…………。


「それでそれで? クロウさんは他にどんな本を読んだんですか」

「他は大したことないよ。この国の歴史とか、魔物の生態とか、地図とか」


アニエスは俺を尊敬するような目で見ると、次から次へと質問を投げかけてくる。

対面に座っているジェレミアさんも俺とアニエスのやり取りが面白いのか、顔を下に向けたまま肩を震わせている。


恐らくは、下からジェレミアさんを覗き込むと大笑い、もしくは笑うのを我慢している顔が見られるだろう。

というか逆に俺より頭が良い筈の学者に尊敬されるって、どういう事なんだよ。


その後、ドラグノアを出発してから問題の古代遺跡に到着するまでの間、俺に執拗に質問してくるアニエスとそれを見て笑い転げるジェレミアさんという、知らない人が見たら形容し難い事態に包まれながらも馬車は休むことなく2日間走り続け、漸く古代遺跡へと到着したのだった。


「やっと到着したか。依頼を熟す前に、馬車の移動で精力を使い果たしたような気がする」

「あ~~~面白かった! 久しぶりに大笑いさせてもらったよ」

「クロウさん、御免なさい。私昔から気になった事があると、徹底的に追求したくなる衝動に駆られてしまうみたいで」


良く此処まで質問が続けられるなと思ったからな。

1つの疑問に答えたら、その返答から更に2つの質問が生まれて…………質問の無間地獄に堕ちてしまったんじゃないかと思ってしまうくらいに落ち着いて睡眠時間、食事時間も取れないままに聞いてきたし。終いにはファンタジー小説で読んだ内容まで現実に比喩した内容で話してしまったからな。後から問題が起きなきゃいいけど。


かくして何とか疲労困憊で遺跡に到着した俺達は移動の疲れを取るために遺跡の入口にあるキャンプで休憩することになったのだ。


遺跡周辺は何故か魔物の出現率が多いとの事から、遺跡の中に魔物を入れさせまいと数人の衛兵たちが交代で見張りに就いているとの事らしい。


その後、キャンプで半日過ごして英気を養った俺達はジェレミアさんを先頭にして、アニエス、俺の順番で遺跡に入ってゆくのだった。

が、遺跡に入って直ぐに俺達が眼にしたのは、遺跡の床一面に無残に転がっている人の骨だった。


頭蓋骨の目の穴から突き出ている細い槍、股先から脳天までを一気に貫かれているミイラ、人の頭蓋骨を住処にしている蛇など、いずれも遺跡の罠に掛かった人間たちのなれの果てが其処にあった。


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