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第36話 初めてのパーティー

先日の夕食時にイディアからエリスの件で改めて御礼を言われた俺は、『困ったことがあれば何時でも力になる』というイディアの言葉に甘え、パーティーを組むためにイディアが信用できると思った人物を紹介してもらう事となったのだが、流石に今すぐには無理との事で明日の朝まで待ってほしいと言われた俺は部屋へと戻り、疲れ切った身体を休めたのだった。


翌朝、朝食を摂るために食堂へと行くとイディアから声を掛けられ、用意が出来たので支度が整ったらギルドの前まで来てほしいとの事だ。


其処でイディア自身が誰よりも信用を置いている人物を、俺に紹介してくれるというのだが果たして誰なのか。


俺は逸る気持ちを抑えながら宿を後にして食堂で言われた通りにギルドの前へと足を進めると、其処にはイディアと同じような体格をし、白銀の鎧で身を固めた女性が2人で話をしていた。


彼女が俺とパーティーを組んでくれる人かと思いながら近づいて行くと、イディアも俺の姿に気が付いたのか声を掛けてきた。


「あ、クロウ。こっちだよ」

「えっと、此方の女性がそう?」

「違うよ。彼女は私の幼馴染で弓騎士のファルナ。エリスの命を奪おうとした例の2人の処罰が決まったから、態々知らせに来てくれたんだって」


ファルナと紹介された女性は口を開かないままで会釈すると、踵を返して城の方向へと歩いて行った。


「ああ、昨日のギルドで制裁を加えられていた2人か。どんな処罰になったんだ?」

「男の方はドラグノアが管理する鉱山で2年の強制労働で、女の方は鉱石の精錬所で同じく2年の強制労働」

「エリスを殺しかけておいて、たった2年の罰しか与えられないのか? 死罰とか無期限労働が相応じゃ?」

「外から来た人から見れば甘いと思われるけど、刑期を終えた後が本当の罰になるのよ。此処で罪を犯した人は、その罪に応じて眉間の所に魔法で一生消えない刻印を刻み込まれるの。国民は皆、その刻印の意味を理解してるから、何処に行っても人間扱いされなくなるわ」

「でも眉間の部分なら鉢巻とかバンダナとかで隠すことが出来るんじゃ?」

「原則として刻印が刻まれた者は、其れを隠す事は許されない。もし刻印を隠しているところを誰かに見られた場合は、鉱山の強制労働に逆戻りになると定められているから」


昔の日本みたいに、島流し=鉱山、刺青=刻印ってところか。

昔は刺青を消す商売なんて物もあったらしいけど、此処では刻印を隠す事すら御法度という訳か。


「あの女性が騎士だっていうのなら、俺とパーティーを組んでくれるって人は何処にいるの?」

「さっきから目の前にいるじゃない。私が誰よりも信頼している、私自身が今日からクロウとパーティーを組んであげるわ。改めてよろしく!」

「イディアが俺とパーティーを?」

「もしかして不満? これでも私はDランクの冒険者なんだから、少しは頼りになると思うんだけど」

「いや、不満ってことはないんだけど、本当に其れで良いのかなと思って」

「良いのよ。エリスの事が無かったとしても、私自身クロウの事が気になっていたわけだし。本当はエリスも誘って来ようと思っていたんだけど、少し考える時間が欲しいから保留にしといてだって」


まぁ、あんな事があった後なんだから気持ちは痛いほど、よく分かるな。


「じゃあ、ギルドランクEの魔術師兼剣士のクロウだ。改めてよろしく」


そう言ってイディアに向かって右手を差し出すと、イディアの方も右手を出してガッチリ握手をしてパーティーの結成と相成ったのだった。


「じゃあ今後の参考にしたいから、クロウが今までどんな依頼を受けてきたのか教えてくれる?」

「え~っと、まず最初にデリアレイグでホーンウルフの討伐、それから異常発生したスライムの原因調査及び討伐。あとは昨日まで行っていたコボルトの討伐の計3個だ。いずれもCランクの依頼だった」

「私もランクがDになるまでは採取とか細々とした依頼をして、最近になってからCランクの依頼を熟し始めたから実質はクロウとそれほど変わらないわね」

「で、早速依頼を探してみる?」

「そうね。こうしていても始まらないし」


その後、イディアを連れだってギルドへ足を踏み入れた俺は、まだパーティーを結成して間もないという事で簡単な依頼を選択しようと思っていたのだが、イディアは俺の考えとは正反対のようで俺が今まで受けてきたCランクの1段上になるBランクの依頼を勧めてきた。


イディア曰く、簡単にCランク依頼を熟す事から試しにBランクの依頼を受けてみては如何か? と言うのだ。


彼女が掲示板から剥がして持ってきた依頼書を見ると【Bランク依頼 オークロードの討伐 報酬:40,000G GP:50】と書かれていた。


「オークロードか。確か魔法に弱いんだったっけ?」

「良く知ってるわね。その通りよ、一般の魔法を使えない冒険者からしてみると強敵の部類に入るけど、クロウは魔法を使えるんだから大丈夫よね」

「使える事は使えるけど、魔法を行使しているときは無防備になってしまうから其れだけは注意しないと」

「分かってる。前衛は安心して私に任せなさい」


そう言って窓口へと依頼書を提出し、俺とイディアでパーティーを結成したとギルドに報告し手続きを完了した。


ギルドからの情報によるとオークロードの出現場所は、ドラグノアから西の方向に丸1、2日歩いた場所という曖昧な情報だったため、討伐時間、往復日数を余裕をもって考えて7日と計算するとギルドの近くにある市場で食料を買い込むことにした。


「えっと……果物と肉と調味料と、薬関係はクロウが居るから大丈夫として。飲み水は如何したら良い?」

「【ウォーラ】の魔法を使う事が出来るから、無理して此処で買わなくても良いんじゃないか? 水といっても量が嵩むと可也の重量があるし」

「じゃあこれで、占めて1500Gってところかしら。まだ共有金は無いから、今回は私が出すわ」


イディアに共有金について聞いてみると個人個人の財布とは別に、旅の費用(食事や薬代)を捻出する為の共有金制度を設けているパーティーが数多く存在するらしい。


「今回の事を例として挙げると依頼の報酬が40,000Gだから、その内の10,000Gを共有金に充てて残りの30,000Gを人数で分けるといった具合になるわね。当然、共有金を持たないパーティーもある事はあるのだけれど、必ずと言って良いほどに誰がお金を払うかで揉めてしまうことになるわ」

「じゃあ今回の依頼であるオークロードを討伐した暁には、どれだけ共有金に回せば良いんだ?」

「そうねぇ出来る事なら不測の事態に備えて、少なくとも10,000Gは常に持っておきたいところだけど」

残りの30,000Gを2人で分ける訳だから、1人辺り15,000Gの報酬が得られることになるのか。

「分かった。俺も其れで良いよ」

「後で『やっぱり止めた』っていうのは無しだからね」


その後、俺たちは購入した食料品の数々を運びやすいように纏めるとドラグノアの門を出て、帝国との国境の逆方向へ向かってオークロードが出没するという地域に向けて歩き出すのだった。



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