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プロローグ 【後編】

お待たせしました。 

プロローグ後編です。


この後で本編になりますが、更新までは間が空くと思います。


プロローグ【前編・後編】での神話に於ける天使や神様の名を使用した事に対して『二次創作違反ではないのか?』という御指摘を頂き、運営に問い合わせをしたところ特に問題はないとの事でした。

私は今、ガブリエル様と一緒に大天使長であらせられるミカエル様の元へと歩んでいる。

ただ、思い返してみても死神を首になるような失態は犯していないはずなのだ。


今期に入っての失敗も片手で数えるほどしかないし、少し前の天国に送る死者を間違えて地獄行きにしてしまった時は間一髪で間に合ったし、閻魔様の大事にしていた湯呑を落として割ってしまった時も…………って考えれば考えるほど心当たりが多すぎる。

駄目だ……どうしても後ろ向きに考えてしまう。

叱られると決まったわけじゃないのに、ミカエル様の待つ部屋に1歩近づくたびに足取りが重くなっていく。


「何を考えているのか、ある程度は予想できますが今回のこととは何も関係ありませんよ?」


私が落ち込んだ表情で歩いていると、直ぐ前を歩いているガブリエル様から声を掛けられた。


「ミカエル様から貴女に頼みたいことがあるとの事でしたので呼びに来ただけです。安心しても良いですよ」


ガブリエル様がそう仰られた瞬間、私は地獄から一転して天国に行った様な気分になった。


そしてそれから数分後、ガブリエル様を始めとする上級天使様にしか開ける事のできない扉を潜り抜けミカエル様の執務室の前へと到着した。


「さて、それでは入室しますよ」

「は、はい」

「ふふふっそんなに緊張しなくても良いですよ。叱咤するわけではないのですから」


ガブリエルは微笑すると佇まいを治してミカエルの執務室に続く扉をノックする。


「ミカエル様、死神のヘル殿をお連れしました」


まさか私がガブリエル様に敬称をつけて呼ばれるなんて…………と思っていると、目の前の扉が室内へと向かってゆっくり開かれてゆく。


開かれた扉を潜って室内へと足を進めるガブリエル様の後を追って、私も入室すると其処には驚愕の風景が広がっていた。


死神執務室とは比べ物にならないほどの広さを持つ部屋には一番奥の窓際にミカエル様のが立っており、向かって右の机にはウリエル様、その向かいにはラファエル様と私を此処まで連れてきたガブリエル様を含んだセラフ天使様が勢ぞろいしていた。


「ガブリエルご苦労だった。下がって良いぞ」

「はい。では失礼します」


ガブリエル様はミカエル様に対して、そっと頭を下げるとウリエル様の机の横にある自分の席へと腰を下ろした。

私は私で目の前で直立不動しておられる、ミカエル様を前に嫌な汗を掻き捲くっていた。


「さて、死神業務で忙しいところを申し訳ないが、一つ頼みがある」

「は、はい! 私にできることならば何なりとお申し付けくだしゃい」


受け応えする際に緊張のためか少し噛んでしまった。

私の言葉ですぐ右に座っているウリエル様から笑みが零れる。


「ふっ、固くならずとも良い。命令ではなく頼みだと言ったであろう?」

「はい」

「頼みというのは他でもない。自分の担当する世界の者を次元を超えた世界に送るだけの事だ」

「な、何を言って…………って、はっ!?」


ミカエル様の仰られていることの意味が良く理解できずに腑抜けた言葉を大天使様が勢ぞろいしている部屋の中で口走ってしまった。


「す、すいませんでした!」

「まぁ良い、それが普通の反応だ。まったく、あの狸爺め」


狸爺? 一体誰のことを言っているんだろう?


「ミカエル様、直線的すぎます。ちゃんと順を追って説明しないと分かりませんよ?」


ガブリエル様が私が質問しようとしていた事をミカエル様に尋ねている。


「分からぬか。其れもそうだな、急ぎすぎた許せ」

「いえ滅相もない」

「簡単に分かりやすく説明するとすれば、狸爺と書いてゼウス神と呼ぶ呆け老人の戯言だな」


今ミカエル様は何と仰った? ゼウス神様!? 天界で数百年もの間、死神の仕事をしていて唯の一度もお目にかかったことのない最高神様を狸爺だなんて。


「でだ、狸爺が先日他の次元の神々達との宴会のときに暇つぶしで約束してしまったんだそうだ。此方の世界からあちらの世界に生ある人間を一人、遊び半分で召喚させるとな」


神様が遊び半分で生ある人間を?

其の事を聞いたとき私は此処が何処か目の前にいるのが誰かなど関係無しに声を荒げていた。


「そのような事、許されるのですか!? 亡くなられた方なら兎も角として、其の世界で普通に生活している人間を別の世界に送り込むなんて酷すぎます!」


私は対象となる人間のことを思い、立場を忘れて涙で頬を湿らせながらミカエル様に歯向かった。


「お前の言いたい気持ちは分かる、我も同じ気持ちだ。それに狸爺には既に無限書類地獄という罰を与えてある」

「どうじで私なんでずか?」


『どうして私なんですか?』といった筈が悲しみの感情の所為か濁声でミカエル様に問いかけてしまった。


「誰よりも世界の事を知っている、管理者である死神に全て託してみようと思ったのだ。が、強制ではないので断っても良いのだぞ?」


私は『断っても良い』とは言われたが既に決められた事、誰かがやらねばと思い了承する事にした。


「分かりました。その御命令、お受けいたします」

「すまぬ」

「いえ、では先ず最初に如何すれば良いですか?」

「此れを持っていけ」


そうミカエル様に言われ手渡されたのは、とある世界の日常で頻繁に使用されている携帯電話だった。


「それを使えば直接、この執務室と連絡が取れる。そう簡単に対象者が見つかるとは思えんが、何か聞きたい事、対象者の異世界に対する要望があれば遠慮なく掛けて来るが良い」

「それほど気負わなくても良いですよ。 全ての責任はゼウス様が取ってくださいますから」


ガブリエル様がミカエル様の言葉に上乗せする形で発言してくる。


「あとは言い忘れていたが、此処で見聞きした事は他言無用で頼むぞ。既に狸爺の威厳など、無いに等しいのだが他の何も知らない者達を混乱させるわけにはいかないのでな」

「分かりました。それでは失礼致します」


そうして私はミカエル様の執務室を出て死神執務室へと戻ってきた。


室内に入って最初に飛び込んできたのは先程とは比べ物にならないほど私の机の上が綺麗に整理整頓され、その上に私の私物が積み上げられている光景だった。


「…………死神長、ペルちゃん酷いよ。十中八九、確実に私が首になると思っていたんだね?」


その後、私は自分の立場もわきまえずに散々喚き散らすと、召喚に応じる人間を探すべく、下界に向けて旅立った。




対象者を探しに下界に来てから、はや数十時間が経過していた。


始めから分かっていた事だが、現在の家族と別れて異世界に行きたい人間などいない。

逆に天涯孤独の人間に声をかけてみるも。余程今までの人生が酷かったのか、かなり性格が荒んでしまったようで『異世界の人間を皆殺しにできる、絶対的な力を付けてくれるんなら喜んで行ってやるよ!』と言われてしまった。


そのような一癖も二癖もあるような人物を送ったりしたら、それこそ私が首になりかねない。

因みに生きている人間に私達死神の事を知られるわけには行かないので、私に逢った事は夢として認識させている。


(あ~あ、死んだ人間なら『転生』という形で送還出来るんだけどな。生きた人間を別の世界に送るなんて無理だよ、ミカエルさまぁ~~~)


実際に愚痴るわけにも行かない(ミカエル様の耳に入ったら大変だから)ので心の中で思いながら、次の人間の元へと飛んでいく。


声を掛けた人数があと一人で500人になるというところで私の目に飛び込んできたのは、今まさに窓から身を乗り出して飛び降りようとしている、銀色の髪をした一人の男性の姿だった。


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