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第16話 ギルドへの報告

ギルド内でのリュリカの行動描写を少し変更しました。


7/4 本文を少し加筆致しました。

森で保護した少女リュリカとともに冒険者ギルドへと向かう途中、ギルド近くの路地裏にてリュリカを狙った何者かが俺達の行く手を阻んだ。


もう駄目かと思ったその時、偶然にも酒場の勝手口が開きガウェインさんが姿を現した事から追いつめられていた俺とリュリカはガウェインさんを押し倒す形で酒場に雪崩れ込んだのだった。


スライムに襲われた際にリュリカが見た何か(・・)が余程重要な物だったのか、俺達を襲った何者かは酒場とギルドの間に陣取り、俺とリュリカがギルドに行くことを妨害している。

その対策を考えている中でリュリカの目の前で、魔法を使ってスライムを殲滅して居るところを見られたが為に俺が魔法を使える事がガウェインさんに知られる事になってしまったのだが……。


『幾ら魔法の心得があっても此処じゃあなぁ』というガウェインさんの言葉に対して意味が分からなかった俺は、その事を聞こうとした瞬間に酒場の扉が大きく開かれた。

奴等がしびれを切らして雪崩れ込んできたのではないかと身構えていると其処に現れたのは意外な人物だった。


「よう親仁。って、何やってんだよ」

 

其処に現れたのは酒場が壊滅する原因を作った人物であり、アリアの実の姉でもある…………。


「なんだ、ディアナじゃねえか! 脅かすんじゃねえよ、馬鹿野郎」

「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは! 人が昨夜の事を謝ろうと態々来てみれば道で喧嘩を売られるは、馬鹿と言われるは堪ったもんじゃねえぜ」

「道で喧嘩って、奴等とか!?」

「ああ、こんなところで屯してたから邪魔だって言って適当に一人蹴り飛ばしたら、途端に集団で殴りかかって来てよ。あの程度の奴等じゃ、腹ごなしの運動にもなりゃしねえぜ」


だからって行き成り蹴り飛ばす、アンタの方に問題があるんじゃなかろうか。

馬鹿ディアナはそう笑いながら、手に持った数本のナイフを御手玉でもしているかのようにもてあそび始めた。


「あれ? そのナイフって奴等が持っていた物じゃない?」

「アンタか、前は悪かったな。えっと名前は何ていったっけ」

「クロウです……ってそんな事は如何でも良いんです。それより、それは酒場の前に居る奴等が持っていた物ですよね」

「あ、これか? 奴等が逃げた時に忘れてったみたいでよ。勿体ねえから拾ったんだ」


奴等が逃げたって。じゃあ、今は誰もいないのか?

そう思い、扉を少しだけ開けて外を見ると、其処にはディアナが暴れた後なのか所々地面が陥没していたりはしていたものの、酒場とギルドの間に立ちはだかっていた者達は誰もいなかった。


「誰も居なくなってる。リュリカ、今のうちにギルドに行くよ!」

「うん。オジサン、お姉ちゃん、ありがとう」


俺はいつ奴等が戻ってくるか分からないので今のうちにとリュリカと共に酒場を飛出し、そのままの勢いでギルドへと飛び込んだ。


「はははっ。俺は最後までオジサンのままか……にしても、さっきの嬢ちゃん大分前に何処かで見たような気がするんだが気のせいか?」


もしかすると『ギルドの中にも奴らの仲間が居るのでは?』と疑問があったものの、其処には俺とリュリカ以外ではギルドの職員しかおらず、急に飛び込んできた俺達を驚いた表情で見ていた。


「きゅ、急に何ですか!?」

「すみません。誰かにリュリカが狙われているようなんです」

「狙われている? 先ほどまでギルドの前で騒ぎが起こっていたのは、その事が原因なのですか?」

「はい。リュリカを狙っていた連中は、偶々其処に居合わせたディアナが蹴散らせてくれましたが」


と此処で冒険者ギルドに似つかわしくない、金ぴかの派手な鎧というキチガイ的な格好をした一人の男性がギルド内に入ってくるなり、リュリカを視線だけで射殺せそうな眼で睨み付けてきた。


金ぴか鎧の男の姿をリュリカが見た瞬間、まるでその男から逃げるようにして俺の背に隠れた。


「この件も踏まえて依頼達成の報告をしたいので何処か第三者に見聞きされる事のない、別室を用意して頂けませんか?」

「分かりました。此方へどうぞ」


ギルド職員はそう言って、俺とリュリカをギルド奥の部屋へと促した。

何故か後からギルドに入ってきた金ぴか鎧の男も俺達と一緒に別室に来ようとしたが、職員が男の入室を拒否したため途中で舌打ちし悔しそうな表情で戻っていった。


これで外部から完全に遮断された部屋に俺とリュリカ、ギルド職員が入室した事で改めて此れまであった事を簡潔に纏めて話した。


最初に俺がギルドの依頼で『スライム異常発生の原因調査及び討伐依頼』を受けたこと。

次に魔法学園裏手の門から森の中に入り、誰か(リュリカ)の悲鳴が聞こえたこと。

スライムで地面が見えないほどに一面覆われたところへ俺が魔法を使って、一気にスライムを殲滅したこと。

スライムの核を拾い集めていたところで、近くの木のうろからスライムの核が大量に詰め込まれた袋を発見した事。

夜が明けるのを待ってから森を脱出し、リュリカを連れてギルドに報告に向かう途中で10人ほどの暴漢に襲われ、酒場の主人であるガウェインさんと、偶々出くわしたディアナの協力もあって今此処に居る事などを話した。


次にリュリカの言い分だが…………。

最初に町の子供たちに『大事な物』を森の中に隠され、それを探しに森の中に入ったのだという。

其処で木の上に引っ掛かっている『大事な物』を見つけて取り返したは良いが、途端に登った木がスライムに囲まれて降りる事が出来なくなった時に、あの派手な男がやって来てスライムに攻撃し始めたのだという。


だが攻撃すればするほどにスライムの数がドンドン増えていき、やがて足の踏み場もないほどに数が膨れ上がったスライムを尻目に、剣を杖替わりにして森から逃げ帰る男と目があったのだという。

そのあとはリュリカが木の上から悲鳴を上げた事で俺が到着し、俺の最初の供述と繋がるという訳だ。


「話はよく分かりました。では此方の方でクロウさん以外の冒険者の方がスライムの討伐依頼を受けたか調べてみますので、もう暫く此方でお待ちください」


ギルド職員はそう言い残すと俺とリュリカを此処に残したまま、部屋を後にした。


だが先の供述の中で、引っ掛かる点が幾つかあった。

リュリカの事を疑う訳ではないが、最初に【町の子供たちに『大事な物』を隠された】という点と【其れを探しに森の中に入った】という事が微妙に俺の頭の中に引っ掛かっていた。


あの金ぴか鎧男を例にとるわけではないが、並みの人間(金ぴか男含む)では魔物に歯が立たないのに子供だけで森に入って『物を隠す』、もしくは『隠された物を探すこと』が果たして可能なのか如何か。


まぁ、はじめて森の中で出遭った俺に何かを隠す理由もないし、この時点で100%嘘をついていると確信できるわけでもないので此処はリュリカを信じて、ギルドの調査結果を待つことにしよう。


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