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第124話 これからの事

PVアクセス400万、ユニークアクセス73万獲得しました。


本当に沢山の人に読んで貰えて誠に有難い気持ちで一杯です。

これからも宜しくお願いいたします。

宿屋のエントランスで自己紹介後の懐かしい味の食事を終えて数分後、これからの事を話しあうためにとクレイグさんが部屋を訪れた。


事実上の宿屋のオーナーという事なので凄くいい部屋に住んでいるのではないかと思っていたが、部屋の大きさも内装も俺の部屋とそうは変わらなかった。


ちなみに此処が魔法学園だった時の学園長の部屋はというと、客室の5倍はあるという事で会議場として使用しているとの事だ。


「食事はいかがでしたかな?」

「ドラグノアに居た頃を思い出しましたよ。正体を明かせなかった事は心苦しい限りでしたけど」

「その事に関しましては謝罪いたします。ですが、あの場には神子様の事を知らない者もいました。正体を明かした途端に命を狙われるという可能性も捨てきれませんでしたので……ちなみにイディアやラファルナ達もドラグノアの地で国家反逆者として手配されており、デリアレイグに逃げてきた当初は何度か賞金稼ぎに命を狙われておりました」

「なんでイディアが国家反逆罪何ていう罪になってるんだ?」

「宰相から一冒険者に成り代わった当時に聞き及んだ話によれば、件の魔物侵攻と神子様の冤罪だった騎士・衛兵殺し、更に帝国の国境での詳細が未だに判明出来ていないテント襲撃で圧倒的に騎士や衛兵の数が足らなくなったことで急遽、冒険者の中から腕っぷしの強い者を騎士や衛兵として無理矢理召集することをゲイザムが決めたらしいのですが、当然の事ながら急にそのような事を言われても納得できるはずがありません。そこで奴は何を考えたのか、ギルドが無くなれば冒険者は路頭に迷うだろうというトチ狂った考えに辿り着き冒険者ギルドを廃止に、すると今度は件の冒険者や依頼を出せなくなった街の住民達から苦情が相次いだことから苦情を言って来た者達を反逆者として街から追放したのです」

「いくらゲイザムが防衛大臣だったからといって、そんな無茶苦茶な事が罷り通る筈ないと思いますけど。その事について陛下や他の人達は何も言わなかったんですか?」

「当時は既に城に入る事が出来ない身でしたからな。流石に其処までは分かりません」

「そもそもクレイグさんが宰相を辞めたのは、どういう経緯があったんです?」

「神子様、儂の事はレイヴと呼び捨てで結構です。元々此方が本名ですしな。さて、どうして宰相を辞することになったかという事ですが不審な点が多いのです。ある日の朝、いつものように自室で目を醒ましたところ、何故か今のエルフの姿に戻っておりました。姿見の魔道具に不具合でも生じたのかと思って調べたのですが、何の異常も見受けられず……かといって元の年老いた人間の姿には戻れずで困っておりました。儂がエルフである事を知っているのは、今は亡き先代の陛下だけなので人前には姿を見せられません。下手に城内で姿を見られようものなら、たちまち不審者として拘束されますからな。数十年間を過ごしていた場所なので、緊急の為に城が襲撃された際に街の外へと通じる隠し通路を通って脱出したわけです。ヴィリアム陛下に何も言えずに城を後にしたのは心苦しい限りですが……その後、時を同じくして何とか街を脱出してきたジェレミアやラファルナ達と合流して此処に行きついたという訳です」

「冒険者ギルドとか、騎士・衛兵になる事を拒んだ冒険者が反逆者になって街を追われたというのは分ったけど、宿を経営していたラファルナさんは関係ないんじゃ?」

「ラファルナの場合は巻き込まれた形に近いですね。本人は何も悪い事はしていないのですが」

「何があったんです?」

「あまり詳しい事は聞いておりませんがラファルナ曰く、善意で街の者達になけなしの食料を配っていたそうなのですが、ある日配られた食事を口にした巡回中の騎士が腹痛を起こしたそうです。原因は明らかに食べすぎだろうという事だったんですが、当の騎士は『故意に俺の食べ物に毒物を混入させた』と騒ぎ立てて、結果的にラファルナの宿を取り潰しにしたそうなのです」


それはまた何と言うか、運が悪かったとしかいえないのか? 

その騎士が其の場に居なければラファルナさんが此処に来る事はなかったのか。

いや、ドラグノアの現状を見る限りでは逸早く街を脱出できて逆に返って良かったのかもしれないな。怪我の功名のいうやつかな。



「さてここらで一旦休憩するとしましょうか。厨房から何か飲み物を貰って参りますので少々お待ちを」


クレイグ……いや、レイヴはそう言うと立ち上がって部屋を後にしていく。


《今の話をどう思う?》

《口調と落ち着き具合から言って、嘘を言っているようには思えませんでした》


そう言う事を聞いたんじゃなかったんだけどな。まぁ良いか……。


《話の中で気になった点はと言えば、魔道具の不具合といったところでしょうか》

《結構長い間使っていた道具という事らしいから、ガタが来たんじゃないのか?》

《私が知っている限りでは殆どの魔道具は余程強い衝撃を与えない限り、半永久的に使用することが出来ます。魔道具をも凌駕する、強い魔力結界で封じられたという事も考えられますが……魔物避けの魔道具といい、今回の件といい、私が遺跡に封じられている間に世界に何が起こっているのやら》

《でも魔道具関係の知識のある者が新しく作ったと考えれば良いんじゃ?》

《数百年前とは違い、今の技術では魔道具を作れる者は世界中を隈なく探したところで片手で数えられるほどしかいないでしょう。数百年前から生きているというのであれば別ですが》

《森に居たエルフとかならどうだ? あの種族なら確実に数百年は生きられると思うんだけど》

《可能性としては考えられなくもないですが、彼等がそのような道具作りに手を貸すとはとても思えません。便利な道具を使わずに、自然のままで生きる事が彼等の生き様ですから》


そういえば森で暮らしていた時にも、縄文か弥生時代みたいな生活しかしてなかったな。便利だという事で冷蔵箱の事を教えたけど、あれも使用するのは密閉状態の箱と内部を冷やす水(氷)だけだし。


そしてレイヴが部屋を後にしてから凡そ10分後、部屋に戻ってきた彼の手には注ぎ口から良い匂いと共に湯気を出している大きめのティーポットと2人分のティーカップ、砂糖と思われる茶色の粉末があり、さらに何故か夕食の場でも出てきたパンが皿に山のように積まれていた。


「えっと……お茶は分るんですけど、このパンは一体なんです?」

「茶は直ぐにエティエンヌが用意してくれたんですが、その際に小腹が空いたと洩らしたところ余り物で良ければと一緒に頂いたんです。神子様は腹の空き具合はいかがですか?」


そういえば夕食から大分時間が経っているか。話に夢中になっていて窓の外に目を向けていなかったな。


っと、ついでだから森から持ってきた物も取り出そう。


「そうですね、頂きましょうか。それと追加で良い物を取り出しましょう」

「良い物ですか?」


俺は少し待っていて欲しいと告げると、部屋の壁に向かって空間魔法【ディメンション】を唱え、とある物を取り出した。


「聖域の森を出る時に食料として持たされた魔物の肉の干し肉ですよ。ずっと森に帰っていないのなら懐かしい物なんじゃないですか?」


空間倉庫の隅に文字通り山になって積まれている塊から500g程度取り出すと、パンの横に置いた。


「これは懐かしい。神子様、ありがとうございます」

「元の肉がウルフかベヘモスかはちょっと分かりませんけど、まだ沢山あるので遠慮しないでください」


そう言うと待ちきれないとばかりに干し肉に手を伸ばし、指で細かく千切りながら口元に運んでいた。


人間の街だと絶対に手に入らない物だし、もう何十年も森に帰っていないレイヴからしてみれば魔物の干し肉は最高の御馳走になるんではなかろうか。


そしてレイヴがパンにも御茶にも全く目もくれずに、無言で干し肉を食べ始めてから30分近くが経過した。この頃には空間から取り出した肉の塊は三分の一以下にまで減っている。


一心不乱に干し肉を齧っているので、俺はその間にパンを片手に茶を嗜んでいた。


それから更に10分が経過したところで肉の破片すら残さずに500g近くもあった肉の塊は全てレイヴさんの腹の中へと納まったのだった。


「はっ!? 夢中になって神子様の分まで食べてしまいました。儂は何と言う事をしでかしてしまったのか」

「いや、気にしないでください。空間倉庫にまだ沢山は言ってますから、欲しい時はまた言ってくれれば何時でも取り出しますんで。ってそんな事より、あんな量を食べて腹は大丈夫ですか?」

「少し苦しいですが、何のことはありません。ところで神子様はこれから如何なさるんですか?」

「一応、この姿で身分を証明するためのギルドカードは作りました。しかし申し訳ないんですけど、流石に今更ギルドで依頼を受ける気にはならないですね。そもそも森を出てきたのは、森にドラグノアの騎士を名乗る襲撃者が来た事で今現在のドラグノアはどうなっているのか確認しに来たわけですから。っと確認で思い出しましたけど、俺の手配書に古代文字で『デリアレイグ』『ヴォルドルム』と書いてあったんですが、アレはレイヴが?」

「はい。いつか異変を感じた神子様がドラグノアを訪れた際に儂がおらずとも何か力になればと思い、書き記しておきました。神子様には御足労をお掛けいたしました」

「それはそうと俺がドラグノアを脱出した時期は魔物と同様に帝国とも小競り合いを続けていましたよね。結局戦争の行方はどうなったんです?」

「件の後、魔物の襲撃は成りを潜め、現状が落ち着いたところで帝国の国境からの連絡兵が事の成り行きを伝えてきました。其処で度重なる会議の結果、街を一時的に近衛騎士団監督の元で冒険者達に任せて数十名の騎士や衛兵達が補給物資を持って国境へと応援に向かいました。その後の報告では無事に合流した前線部隊の騎士と応援部隊は意を決して帝国領内へと侵入を試みて、前線部隊にいる冒険者達は逆に街へと戻ってきました」


グリュードやイディアは前線部隊に配置されていた事から、今現在此処にいるという事は無事だったという事に他ならないが。


「その後、受取った報告書の内容から帝国領内で魔物に襲われたり、自然災害にあったりで数人は命を落としたと聞きましたが、無事に帝国王都グランジェリドへと到着できた者の話に因れば王都の街は血と死体であふれかえり、ただ一人として生き残っていた者はいないとの事でした。ちなみに城は何かの災害が起こったのか見る影もなく瓦礫の山と化していたそうです」

「つまり帝国は滅亡したとみて良いと? 帝国領土はドラグノアの物に?」

「いえ、帝国王都グランジェリドが機能しなくなったとはいえ、別の街にはまだ帝国軍が居りますからな。それに帝国領土は此方側の肥沃な大地とは違い、植物や作物が殆ど育たない不毛な大地なのであまり有難味はありません。逆にドラグノアの領土としてしまうと損しかしませんな」


その後、何でもない事を話しながらその日の夜を過ごし、翌日にヴォルドルム卿の屋敷に再度足を運ばなければならない事をレイヴさんに聞いて俺は部屋を後にしたのだった。


ちなみに夜食として持ってきた残りのパンは後で腹が空いた時にでも頂くという事で、魔物の干し肉と交換する形で亜空間倉庫に保存する事となった。


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