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第9話 武器防具購入

ギルドで無事、冒険者登録を終えた俺は情報収集も兼ねて酒場へと入っていった。


「悪いが、酒場は夜からだ……って何だ、坊主か。冒険者登録をするんじゃなかったのか?」

「冒険者登録は既に終わりました。当面の生活費も手に入ったので、アリアに教えてもらったギルドの無料宿泊施設にお世話にならなくてすみそうです。その事でアリアに一言御礼を言いたいんですが、今何処に居るのか知りませんか?」

「アリアなら今頃は魔法学園で勉強中だと思うぜ」


魔法学園…………文字通り、魔法を教えるための教育機関って考えていいのかな。

其処に行けば俺も魔法を使う事が出来るんだろうか?

でも『学園』だからな、流石に20歳という年齢では入学は難しいだろうな。と言うより、無理か。


「魔法学園で面倒な手続きをして会うよりも、日没くらいに酒場に来ればアリアに会えるから、そん時に此処に来い」

「それはどういう意味です?」


ガウェインさんの発した言葉の意味が分からずに聞き返そうとしたのだが。


「金が入ったんだったら、次は宿屋と武器屋だな。宿屋はそうだな、此処の裏手にある宿屋が初心者向けってところだな。料金は確か、1泊2食付で1000Gだったはずだ」

「初心者向けというのが、どういう意味になるのか分からないんですが」

「ん? ああ、ただ単に安いか高いかという意味だけだ気にするな」


ガウェインさんはそう言いながら大口を開けて笑い出すが、すぐさま眉間に皺を寄せて『やっぱりやめた方が』と何やら意味深な事をぼやきはじめた。


「推薦しといてなんだが、その宿屋は欠点があってな。飯が恐ろしいほどに不味いんだ」

「金を払って食べる料理が不味いというのは頂けないですね」

「其処でだ。坊主、飯を酒場で食う気はないか? 酒場が開くのは夜だから朝飯はどうにもならんが、宿屋よりは美味い飯を作れるぞ。そうなれば、宿代も1000Gから飯抜きの600Gになって坊主も得だろ?」


まぁ確かに、宿屋の不味い飯で意気消沈してしまうよりは美味い飯を食べた方が元気が出るしな。


でも宿屋の飯がどれだけ不味いのか、其方の方も少し興味がある。う~ん、どうしようか?


「んで? どうするか決まったか」

「不味い飯というのにも少なからず興味があるので、1泊普通に泊まってから答えを出しても良いですか?」


その人の味覚によって味は変化するからな。言っちゃ悪いけど、ガウェインさんの味覚は見当がつかないし。


「それでいいさ。後は武器だったな。ついて来な」


ガウェインさんは残念そうに、それでいて可哀想な人を見るような目でそう言うと、俺を手招きしながら酒場の外へと出て行った。


俺は意味が分からずに後を付いて行くと、ガウェインさんは両手を腰に当てて町を眺めていた。。

酒場やギルドのある場所は町から見て少し高台にあるため、眼下には町の住民が住んでいると思われる一戸建ての建物が所狭しと並んでいる。


此処に来て改めて町の全容を知った俺は、眼下に広がる町の規模に驚いていた。

ぱっと見で1辺あたり1kmはあるんじゃないかと思うほどに広く、はるか前方の山の斜面を切り開いたような場所には城のような建造物も見て取れる。


「あれ、見えるか?」


俺が町の様子にあっけにとられていると不意にガウェインさんが町のある一点を指さした。


ガウェインさんの指さす方を見ると明らかに他の建物とは違う、3階建てくらいの周りから浮いている建物が其処にはあった。

ただ良く分からないのは、その建物を境目として手前には少し古臭い建物が、建物の奥には白塗りの壁の綺麗な建物が立ち並んでいる事だった。割合でいうと古い建物が6、新しい建物が4といったぐらいだろうか。


「えっと、あの少し高い建物の事ですか?」


ガウェインさんは俺の発した言葉に対して静かに頷くと、次の瞬間には声を荒げて人が変わった様な口調で叫ぶように話し始める。


「あれがこの町を牛耳っている腹黒い貴族共の命令で建てられた、役所って奴だ。此処で昔から住んでいる俺たちに対して『役所の建物から向こう側に立ち入るな。空気が汚れる』だとよ。ふざけやがって何様のつもりだ!」

「え、えっと」


武器屋の話をするんじゃなかったのかと考えていると…………。


「すまねえな、話が逸れちまった。さっき言ってた武器屋は役所の手前に道具屋と肩を並べて建っている。もしも武器選びに迷った時は、店主の爺に指示を仰げ。的確な答えを出してくれるだろう」


ガウェインさんは其れだけを言い残すと、肩を落として酒場の中へと戻っていった。

俺はその背中を静かに見送った後、教えられた建物を目安にして酒場を後にした。

そして歩き続ける事30分後、漸く武器屋の前に辿り着いた。


「なるほど、此処がガウェインさんが言っていた境界線で、アレが貴族って奴か」


丘の上から見えた役所の前に到着すると明らかに他の住民とは違うような、ド派手な格好をした肥満中年が周囲を数人の全身鎧を着込んだ者たちに守られながら、境界線である壁の向こうに歩いていく姿が見受けられた。


俺はいつまでもこうしてはいられないと思い、武器屋の中入っていった。

武器屋の中には所狭しと様々な武器が並べられていた。


「凄い武器の数だ。でも実際にどこまで使えるか…………」


剣、斧、ナイフ、槍、弓矢、錫杖など、今まで小説の中でしか見たことが無かった様々な武器に興奮していると、店の奥から杖を携えた老人が姿を現した。

この老人がガウェインさんの言っていた店主なのだろうか?


「何か気に入った武器は見つかったかいの?」

「自分の希望としては剣を使っていこうと思っているんですが、これだけの種類があると迷ってしまいまして」

「ちなみに予算的に見て、幾らほどの武器を買おうと思っておる?」


ホーンウルフの討伐依頼で貰ったお金が20,000G

宿代が1日600~1000Gと考えて、1週間で最高でも7000Gか。


明日からの稼ぎで順調にいけば、宿代くらいはなんとかなるか。魔法を使えれば戦闘に於いても、かなり有利になるよな。問題は『何処で覚えるか』だけど……って何で武器の事から魔法の事になってんだよ。


「考えは決まったかの?」

「あっ、え~と大体3000~4000Gで武器を買えれば良いかなと。あと防具も一揃え買いたいですし」

「3000Gなら鉄の剣、槍、斧じゃな。4500Gまで出してくれるならば、鋼の剣もしくは鋼の斧といったところかの」


それから悩みに悩みぬいた結果、鋼の剣4500G、鉄の胸当て2000G、鉄の肘当て2個セットで750G、鉄の膝当て2個セットで750G、鉄のグリーブ1500G、合計で9500G分の武器防具を購入する事となってしまった。


序にこの世界から来る前から着ていた洋服トレーナーや運動靴は素材とデザインが珍しいとの事で汚れなどで若干差し引かれたものの、全部合わせて1000Gで買い取ってもらえた。


更には武器屋の隣にある道具屋にて、回復ポーション5本を1000Gで購入してしまったために残りの所持金は10,500Gにまで減ってしまっていた。

道具屋でおまけとしてタダで貰った道具袋に一気に少なくなったお金を入れて酒場に戻ったころには、周りは日が落ちて空は夕焼けに包まれていた。


「なんとか武器防具を揃えて戻りました」

「おっ? 見れるようになったじゃねえか」

「持って行ったお金も、一気に半分近くが無くなってしまいましたけどね」

「装備を揃えるにはそれぐらいの金がかかるってもんよ。俺の知っている古い話では武器をケチって魔物退治に行った挙句、たった1度の戦闘で剣は使い物にならなくなり、本人は重傷を負って冒険者生命は閉ざされたという話を聞いたことがあるぜ。今でも杖を持っていなければ歩けないほどの後遺症があるらしい」


武器屋の御爺さんも杖を持って歩いてたけど…………まさかね。

とそんな事を思っていると酒場の扉が大きく開かれ、元気なアリアが姿を見せた。


「ただいま~~~」

「おっ、お帰り。今日の勉強はどうだった?」

「少し難しかったけど何とかなりました。あ、クロウさんもこんにちは」

「ああ、こんにちは。っとアリアに御礼を言わなければならないんだった」

「御礼…………ですか?」

「ほら、ギルドの無料宿泊施設を紹介してくれただろ? アレ使わなくても良くなったから」

「この町に来る前に狩った魔物の角が20,000Gで売れたんだとよ」

「えっと?」

「正確にはホーンウルフって言う魔物の討伐依頼を見つけて、報酬の20,000Gを受け取ったって訳さ」

「それは良かったですね。私はギルドの仕事があるんで此処で失礼しますね」

「おぅ頑張れよ」

「アリアの仕事って?」

「日没になったらギルドが閉まるって知ってんだろ? アリアの仕事はギルド閉鎖後の掃除だ。何でそんな事を始めたのかまでは知らねえけどな」


その後、日没が近くなったことからガウェインさんに教わった宿屋で一泊することになった。


「一泊二食で1000G、食事抜きだと600Gになりますが如何なさいますか?」


ガウェインさんから此処の食事は止めた方が良いと言われていたが、怖いもの見たさという事もあって1000Gを払い、部屋に案内してもらった。

案内された部屋は普通にビジネスホテル並みの広さで伸び伸びと過ごすことが出来たのだが、問題となったのは出された料理だった。


料理の色、形、匂いはとても言葉で言い表せられるものではなく、この時ばかりはガウェインさんの忠告を素直に聞いておけば良かったと心から反省するのだった。

例えて言うとすれば、良くてヘドロ、悪くてコールタールっていうところだろうか。


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