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第7話 冒険者登録

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

酒場でガウェインさんやアリア達と飲み明かした翌日、俺は二日酔いだと思われる頭痛に苛まれながら、テーブルに横になった状態で目を醒ました。


「う~ん、俺は確か酒を飲んでいて…………って何だ? この荒れ具合は」


目が醒ました俺が最初に目にしたのは、まるで酒場の中を台風が吹き荒れたかのように椅子やテーブルが原型を留めないほどに破壊された光景だった。


「おっ、やっと起きたか。おはようさん」


そう俺に声を掛けてきたのは、大きな箒で壊れた椅子やテーブルを片付けているガウェインさんだった。


「おはようございます。昨夜はありがとうございました」

「おぅ、悪かったな。酒に弱いのに無理矢理飲ませちまったみたいでよ」


そういえば昔、親父にウォッカのスピリッツ割という、とんでもなくアルコール度数が高い酒同士を合わせた物を飲まされた時もこんな感じだったな。


最もあの時は、病院のベッドで腕に点滴の針が刺されている状態で目を醒ましたんだっけな。

しかも件の酒を飲んだ日から3日が経過していたのは、すごく驚いた。


後日、母に土下座をして謝る情けない父の姿を見たが、ハッキリ言って自業自得でしかない。


「それにしても、この有様は如何した事ですか?」

「あ、これか? これはあの馬鹿野郎ディアナが暴れた結果だよ。更には暴れる馬鹿を止めようとしたアリア達の爺さんが乱入した結果、この有様になったという訳だな」


アリア達の祖父もディアナと同様に酒癖が悪いのかと考えていると入口の扉が開き、アリアが姿を現した。


「ガウェインさん、これ祖父から預かった今回の騒ぎに関する迷惑料と、姉さんの溜りに溜まったツケ代です」


アリアはそういうと、ポケットの中から銀色の丸いコインを5枚取り出してガウェインさんに手渡した。


「ほう、50,000(ガル)とは大奮発してくれたじゃねえか。有難く貰っておくと伝えてくれ」

「はい。わかりました」


アリアは酒場の中を見回して俺の姿を見つけると、パタパタという足音をたてながら走り寄ってきた。


「クロウさん、おはようございます。体調は如何ですか?」

「ああ、おはよう。酒を飲んだことによる後遺症で頭が少し痛いけど、時間が経てば治るから心配いらないよ」

「そうなんですか。ところでクロウさんは此れから如何なさるんですか?」

「俺も今のままでは泊まる場所や食べる物はおろか、着る物にも困るから取り敢えずはギルドで冒険者登録をして、暫くはこの町で暮らしていこうと思っているよ」

「なら坊主、食事は此処で決まりだな。客は荒っぽい奴等が多いが飯の旨さにゃあ自信があるぜ。金を持っている事が一番の条件だがな」

「冒険者ギルドでは持ち合わせがない方の為に、1人につき最大で20日間程度なら寝起きする場所を提供する事が出来ますので、少しの間だけなら大丈夫ですね」


その後、アリアは『遅刻しちゃう!』と慌てた様子で急ぎ足で酒場を後にし、ガウェインさんもまた荒れ果てた酒場の後片付けをするために戻っていった。

俺も掃除を手伝おうと思ったのだが…………。


「その気持ちは嬉しいが坊主には今、やらなきゃならねえ事があるはずだろ? さぁ行った行った」


ガウェインさんはそう言うと、手に持った箒の柄で俺を追い立てて酒場の外へと強制的に追い出した。


「それにしても『坊主坊主』って、俺はもう20歳なんだけどな。まぁいいか、それよりもまずはギルドで登録だな」


俺はそう考えると、酒場の隣にあるギルドへと足を踏み入れた。


ギルドの中には数多くの冒険者と思われる、屈強な身体の男女が犇めいていた。

腰や背に各々の武器を携えて、掲示板のような物を見ながら談話している冒険者たちに見とれていると、不意に背中から声がかけられた。


「ギルドにようこそ。本日の御用命は何でしょうか?」


咄嗟に声がする方に振り向くと其処には屈強さには程遠い物腰柔らかな、年配の女性が立っていた。


「えっと冒険者登録をしたいのですが、何処で何をすれば良いのか分からなくて」

「新規登録の方だったんですね。それでは此方にどうぞ」


年配の女性は俺に付いて来るように言うと、ギルドの入り口近くにある階段を上って2階へと案内した。

当然、俺が足を踏み入れた2階にも冒険者が居る事には居たが、何か1階で犇めいていた冒険者とは何処か格が違うような、そんな感じがした。


「では、まず最初に貴方の名前と年齢を聞かせてください」

「俺の名前はクロウ。年齢は20歳です」

「次に戦闘スタイルを聞かせてください」

「一応、剣を使って戦っていこうと思っていますが運悪く、この町に到着する直前に魔物に襲われ、その拍子に武器を砕いてしまったため、直ぐには戦えません。しばらくは町の中で出来る仕事をしていきたいと思います」


魔法を使える事も伝えようと思ったが、此処で何か魔法を使って見せろと言われると、どうしようもないので其処は誤魔化すことにした。


「そうですか、それでは最後にこの水晶球を手に持って貰えますか?」


そう言って目の前の女性が取り出したのは、直径20cmほどの無色透明な水晶玉だった。


「? 分かりました」


俺はその意味も分からずに言われた通りに水晶玉を手に取ると、水晶玉は一瞬にして無色透明から白へと色を変化させた。


「もう結構です。どうやら手配はされてないようですね」

「どういうことなんですか?」

「ギルドに新規登録する方は、必ず水晶玉で身元を判明する事が習わしとなっています。先ほどの水晶玉は貴方が別の場所で手配されていないかどうかを調べるための物でした。結果が白ならば無罪、黒ならば有罪、そのどちらでもなく、手に持った途端に砕ければ死罪という意味になります」

「いきなり死罪ですか!?」

「はい。其の為に一般の窓口ではなく、此処でギルドの新規登録を行っているのです」


俺がその『此処で』という言葉の意味が分からずに困惑していると女性が喋りはじめた。


「貴方のギルドカードが出来上がるまで時間が係りますので、その間に当ギルドの説明を致しますか? 当然、拒否する事も出来ますが」

「いえ、何もわからないので出来れば、詳しく説明してくれると有難いです」

「分かりました。ではギルドランクの事から説明いたしましょう」


女性は俺の受け答えを聞いて一息入れると、丁寧に説明しだした。


「ギルドランクにはF~Sランクまでの7段階があり、最初は皆Fランクから始まります。更に依頼書にも同様にF~Sランクがあり、ギルドの冒険者は掲示板から依頼書を剥がして依頼を受けることが出来ます」

「登録すれば、どのランクでも受ける事が出来るんですか?」

「残念ながら、それは出来ません。Fランクの貴方が受ける事が出来るのは、Bランクまでの依頼です。Aランクの依頼を受けるにはBランクにランクアップをしている事が条件です。同様にSランクを受けるにはAランクになっている事が条件となります」

「ランクアップですか?」

「はい。これは既に達成されたBランク向けの依頼書ですが、此方を見て頂けますか?」


女性は窓口から『B』という判が押された羊皮紙を取り出すと、俺に内容を説明しだした。


其処には依頼内容に『ワイバーンの討伐』とあり、その直ぐ下には報酬60,000Gの文字と、その横に『60GP』という文字が書かれている。


「依頼書にはこのように依頼内容、報酬、そしてGP(ギルドポイント)が明記してあります。依頼によっては期限を書き記してあるものありますので注意してください。期限を過ぎれば当然依頼失敗となり、報酬の十分の一を罰金として支払っていただく事になります」


それじゃあ、昨日の夜にアリアに掴みかかっていた大男は期限に間に合わなかったという事か。


「ギルドランクについてですが、FからEにアップするためには100GPが、EからDにアップするには200GPが必要という風に依頼書に書かれているGPを溜めてランクアップをするという方式になっています。ちなみにFからEにランクアップを果たした際にGPは0になりますので、また1から溜めていかねばならなくなります」


はぁ此処まで聞いてきた事を把握するだけで一苦労だな。少しばかり休憩するとしようか…………。


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