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突然の別れ。

空は真夏日の真っ只中を思わせる、雲がまったくないわけでもなく、たまに濁ってしまう紅茶みたいにはっきり晴天とは言えないような、少しくすんだ青空。そしてアスファルトから湯気が立つような、まるで蒸し風呂に入っているかのように外に30秒も出れば嫌な汗をじとーっとかく程の夏の気候でした。


最近買い替えた安物の人口合皮のビジネスシューズが原因なのか、そんな気候のせいもあったのか、妙に足の親指辺りが痒くなり、職場の隅っこで靴下を脱ぎ、その痒くなった足の指あたりを思う存分かきまくっていると、蒸れて軟らかくなった皮膚がササクレのように、15mm程ツーっと剥けてしまいました。今までにないような皮の剥けように、溢れ出す血が半端なく、慌てて絆創膏を貼り止血をしました。


思えば、この違和感をいち早く感じとっていたにも関わらず、平和ボケとも言うべきなのだろうか、さほど気にも留めずに見過ごしてしまったことが一つの悲劇に繋がる要因だったのかもしれません。やがて、10分程の小休憩を終え、かったるい仕事に戻ろうとした頃、『今日は家でご飯を作るから早く帰ってきてね』と妻からメールが入っていたので『はーい(^O^)/』と顔文字入りで返事をした。


最近、妻の優子は残業が重なる日々が続いており、家での夜食も外食や簡易的な惣菜を買って済ませる日が続いており、『今日こそは家で夕飯を作るのだ』と意気込んでいた。夫のコウは、そんな優子からのメールを受け取り、それなら今日は早めに優子が帰宅してくれるのだろうと、安心して仕事に励んでいた。


やがて終業時間になり、すんなり帰れるかと思いきや、何やらクレーム処理に追われる同僚が、随分の間電話で捕まっており、帰れるタイミングを逃してしまうと、その対応に苦しんでいる同僚を手伝っていた。やがて状況も落ちついてきて、ふと時計に目をやると夜の20時半を軽く過ぎていた。


慌てて妻に電話をし、帰宅の準備に入ったが、妻は電話に出なかった。犬の散歩にでも行っているとたまに電話にすぐ出ないこともあって、いつものことだと携帯電話をカバンへしまい、さっさと電車を待つホームへ駆け上がり、下り電車を待っていると、折り返し妻から電話があった。


『もう電車乗るところだよ。』『あ、まだ会社?コウちゃん、私も今仕事終わったの。』

『そっか。ごめん、そう言えば今日はご飯家で作るって言ってたね。今から帰るね』

『今日は、お庭で育ったナスが3本あるから麻婆ナスだよ』

『じゃあ、急いで帰るね』


こんな生活がいつのまにか何の変哲もない日常になっていた。コウは下りの急行電車に乗ってめずらしく乗った駅からすぐ座れたので、イヤホンをし携帯電話で音楽を聞きながら長い退屈な家路を刻々と削っていた。


すると、突然携帯電話が鳴り出した。それは、先ほど帰るコールをした優子からの着信だった。いつもはこういったことはない状況に、コウは『まさか何かあったのでは…』と悪い予感を感じつつ、電話に出るため、通話のボタンを押した。


通話ボタンを押した瞬間、イヤホンなのか音楽なのかゲームなのか。耳に突き刺すほどの優子の音割れした叫び声が入ってきた。


『ギャー!コウちゃん!大変!!』

コウはまた、ゴキブリでも出たのかと、

『どうしたの?ゴキブリ?』と軽く質問を投げると、

『バブルが倒れてる!動かないよ!ねえ、バブル!バブル?!』

優子が近所迷惑になるほどの大声で犬の名前を連呼する。

『やだ!バブル!バブル!!バブル!!どうしよう、コウちゃん、バブル!バブル!!』

コウは一瞬にして青ざめた。これは相当最悪な事態になっていると理解した。そして、状況がまったくわからないコウは質問を投げる。

『バブル意識ないの?』

優子はコウの質問に答えることなく、犬の名前をしきりに呼び続けた。


『バブルがすごい熱い!意識ないよ!どうしよう!!バブル!バブル!!泡吹いてる!やだよ!バブル死んじゃってるよ!』優子は涙声と叫び声がまざり犬の名前を呼び続けた。


『とにかく落ち着いて。前にもこんなことがあったんだよ。体が熱いなら熱があって気失ってるだけかもしれないから、まず水かけて冷やしてあげて。それからいつもの掛かり付けの病院に電話して!一回切るよ。』優子はいつもの掛かり付けの病院に電話をした。受付時間はとっくに過ぎており、電話が留守番電話になってしまっていた。すかさずコウに電話をかけた。

この物語は、実際に私が飼っていた愛犬とのたわいもない普通のドッグオーナーになってから愛犬が亡くなってしまうまでのお話です。ペットを飼われている皆さんなら、きっと私のような悲しい日がいつか訪れてしまいます。そうなった時、様々な思いが湧き出てきたりや家族とのすれ違いなどが生じたりして、さらなる混乱が混乱を呼びます。ペットロスとは本当に突然訪れるからこそ、今あるペットとの幸せいっぱいの日々を堪能してもらいたいのです。そして、ペットが生きていてくれる幸せや、ペットが養ってくれた優しい心を忘れて欲しくないのです。ペットオーナーにしてみたらかけがえのない存在でしょう。ただペットからすればオーナーはたった一人の家族なのです。『君に会いたい』はそんなペットが亡くなったその後、私たちに何か言葉にして言いたいことがあるとしたらどんなことなのだと思った時、きっと愛犬はそう言うのだろうと思います。だから亡くなったその後まで大切に愛してあげて欲しいと思います。

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