第5話 弟妹
「ふーん、そいつが俺らの兄貴ねぇ……なんか変な格好してるな」
屋敷の一室。
リビングって言えば良いのか?
とにかく、くっそ広いリビングに案内された訳だが……
そこにいたのは、メガネをかけたスーツ姿の育ちのよさそう青年と。
金髪に鼻ピアスの、派手ながらシャツを身に着けた、ソファーに座る頭の悪そうな高校生ぐらいのガキだった。
青年の方はまあ、金持ちの御子息って感じだが、今声をかけて来た金髪はどう考えても輩にしか見えん。
「大河、失礼だろう。弟がすみません。私は園崎玲音と申します」
「俺は大河だ。周りからはタイガーって呼ばれてる」
タイガー。
凄く……馬鹿っぽいです。
「ぷぷ。タイガーとか、その年で恥ずかしくないのー」
「うっせー!芽衣は黙ってろ!」
「きゃー!」
タイガーが芽衣を追いかけだす。
普通なら無理だが、これだけ広いリビングななら追いかけっこすら可能となっている。
まあ、兄妹仲は良さそうだな。
「二人とも止めなさい」
「ちっ」
「へへへ」
母親に叱られ、タイガーが追いかけるのを止めてソファーに戻った。
「俺は天道翔だ。天道さんと呼んでくれればいい」
「おいおい、随分と他人行儀だな」
「まあ血は繋がってるらしいけど、ほぼ初対面だしな。無理やり兄弟っぽく振舞うのは、君達も大変だろう」
俺も面倒くさい。
なのでウィンウィンな提案である。
「お、話が分かるじゃねーか。頭の固い玲音にも少しは見習って欲しいぜ」
「……」
タイガーと玲音の視線が交差し、微妙な雰囲気になる。
こっちは仲が余り宜しくない様だ。
まあ輩とエリートみたいな構図だし、そりゃそうなるか。
「ねね、翔お兄ちゃんってゲーム好き?」
「ん?まあ嫌いじゃないけど?」
「やったぁ!じゃあさ!一緒にゲームしよ!スッゴク面白いゲームがあるんだよ!」
どうやら芽衣はゲーム好きらしい。
女子が好きなゲームと言えば腐ってたり、逆ハーレムが思い浮かぶ。
まさかそういうのじゃないだろうな?
いやまあ、流石に小学生だとそれはないか。
「どういうゲームなんだ?」
「少し前に出た、フルダイブ型MMORPGだよ。もうすっごいの。本当に冒険してるみたいでさ」
「え?今ってそんなの出てるのか?」
フルダイブタイプのゲーム。
ラノベやアニメの世界なんかじゃ、よくある設定だけど、まさかそれが現実になるとは……技術の進歩おそるべしである。
「知らなかった?お兄ちゃん遅れてるねー。じゃああたしが手ほどきしてあげるから、一緒にやろ」
芽衣が俺の手を掴む。
「大河お兄ちゃん、カプセル借りるね。どうせ使わないんだしいいでしょ」
「ああ、構わねーぜ。俺は暇じゃないからな。ゲーム何てしねーし」
「へへー、じゃあいこっか」
「待ちなさい、芽衣。翔お兄ちゃんは家に来たばっかりなのよ。それなのにゲーム何て」
「いーじゃんいーじゃん。ゲームを通して、兄妹の親睦を深めるんだからさ」
「もう、この子ったら」
「ゲームはこっちの部屋だよ」
芽衣に引っ張られる。
フルダイブのゲームには興味があるので、断る理由はない。
なので彼女について行って、どういう物か体感させて貰うとしよう。
まあこの場に残っても、和やかなやり取りを演じる怠い状態になるだけなのは目に見えているしな。
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