第25話 魔刀
「お兄ちゃんどうしたの?」
芽衣が聞いて来る。
俺が急に驚いたからだろう。
「ああ、どうもこのリングを吸収してスキルを覚えられるみたいだ」
「えええええ!何それ凄い!」
「ああ、まあそうだな……」
このゲーム、装飾品系の装備は全部で3つしか身に付けられない。
そのため、枠を使わずスキルを直接取得できるのは大きい。
ただまあ……単に素手で切れる様になるだけのスキルとか、全くいらないんだが?
それぐらい、今でもやろうと思えば普通にできるし。
ああでもこの吸収能力が、他の装備にも適応されるなら優秀っちゃ優秀か。
「早速吸収してみてよ!」
芽衣が無邪気にそう言ってくる。
俺的には店売りしてお金にしたいんだが……まあどうせ大した額にもならないだろうからいいか。
「分かったよ」
はいを選択する。
するとカマキリングが光に代わり、俺の中へと入ってきた。
「わあ、消えたよ」
「ふむ……」
ステータス欄を確認すると、魔刀というスキルが増えていた。
スキル説明欄を見た感じ、腕を使って敵を斬ったり手套で突いたり出来るようになる特殊バフ扱いの様だ。
「このスキル、人に教えられるのか」
説明欄には他人に伝授可能と書いてある。
どうやら、自分以外にも取得させる事が出来る様だ。
「え?そうなの?じゃああたしにも教えて」
「いやまあ、それはいいんだが……肝心の、どうやって教えるかが載ってないんだが?」
「え?そうなの?見せて見て」
芽衣からのパーティー勧誘を受け、パーティーに入る。
この状態なら、彼女にも俺のステータスやスキルが確認可能だ。
「ほんとうだ。書いてないね。どうするんだろ」
「まあ一度使ってみるか」
スキルを発動させる。
消費はMP1とリーズナブルだ。
まあこの効果で消費がデカかったら、余りにもゴミ過ぎるから低いのは当然といえば当然だが。
「なるほど……」
俺の両手に微かな光が纏わりつく。
この感じ、感覚は魔力を手に纏うのと似てるな。
と言うかほぼ同じじゃね?
なら……
「手が光ってるね」
「ふむ……」
無造作に手を振るう
地面に向かって。
その際、自身の手に纏わりつく魔力をコントロールし、刃の形——刀身状に変える。
「わわ、地面がスパッと斬れたよ。結構威力高いね」
……やっぱできたか。
このスキル、やはり魔力のコントロールで間違いない。
異世界でなら単なる基礎技術な訳だが、どうやらこの世界だとスキル扱いになるようだ。
名前が魔刀なのは、魔力の刃で切り裂くからって事だな。
「なるほど。俺の見立てだと……これは近接じゃなくて、どちらかと言うと魔法使い系が使うスキルだな」
まず間違いなく、今使っている低レベル用の武器よりこっちの方がずっと強い。
武器を持つより素手の方が強い理由は、魔力が基礎威力になっているためだと思われる。
だから、魔力の高めの勇者が使うと結構な火力になるという訳だ。
「そうなの?」
「ああ、威力が魔力に依存してるっぽい」
魔力のコントロールで変化させられるし、魔力依存で間違いないだろう。
「あー、なるほど。だから残念スキルってなってたんだね」
素手で戦うとなると、近接クラスを想像する。
だが近接クラスは魔力が低いので大した火力が出ず、結果的にゴミスキルの烙印が押されていた訳だ。
「魔法使い系が敵に近付かれてとか、MP不足で魔法が使えず近接戦するはめになった時用って感じだな」
「ふむふむ。つまり……魔法少女にはもってこいのスキルって訳だね!」
「まあそうだな」
魔力が高めで、且つ近接戦闘をデザインされたクラスである魔法少女。
確かにぴったりなスキルではある。
まあこのスキルの威力が、どのレベルまで通用するかはしらないが。
ゲームの武器って、どんどんインフレしていくもんだ。
魔力による攻撃力上昇を武器の威力が超える用なら、武器を持った方が火力は高くなる。
現に異世界でも普通に武器使ってたし。
俺。
え?
武器に魔力を纏わせたら、その分強くなるんじゃないか?
弱い武器ならそうだな。
弱い武器なら。
例えば、だ。
刀の刃の部分に、外付けの刃——あるかどうかは知らんが――を付けたとしよう。
刃が二つになったから攻撃力は2倍だ!
とはならんよな?
だって敵を斬るのは、外付けの刃の部分だけなんだから。
それと同じ。
魔力を纏わせて敵を斬る場合、単純に魔力の刃の威力が出るだけ。
かぶせた分だけ純粋に武器の攻撃力が上がる、なんて事はないのだ。
魔力には質量もないしな。
因みに……それが通用せず弾かれたら内側から第二の刃、剣の刃が姿を現し敵を切り裂く。
何て事は起きないぞ。
まあ起きないと言うか、無駄ってのが正解か。
魔力の刃が弾かれた時点で、剣の勢いは死ぬほど落ちてる訳だからな。
その状態で物理の刃が通じるぐらい武器が強力なら、魔力を纏わせても単に威力が落ちるだけだし。
正に無駄。
なので、魔力の刃より威力の高い武器を使う場合、魔力を纏わせる意味は全くないのだ。
もちろん弱い武器なら、その攻撃力を魔力の刃の威力まで引き上げられるから無駄ではないが。
ああそうそう、魔力を纏わせるのと、魔法による属性付与は一見似てるが、全く別物だぞ。
あれは属性を帯びさせる効果で、どちらかというと追加効果だからな。
なので単純に火力は上がる。
「翔おにーちゃん!伝授お願いします!」
芽衣が、『ぺこり』という擬音が聞こえてきそうな綺麗な動きで頭を下げた。
まあ伝授自体は問題ない。
問題は……どうやれば伝授できるのか分からない点だ。
ひょっとして……普通に教えればいいのか?
それならまあ、出来なくもない。
俺自身、異世界で学んだ事だからな。
普通に教える事は可能だ。
けど、それでいいのかって気がしなくもない。
あと、単純に面倒くさいってのもある。
ゲームみたいに一瞬でとかならいいけど、手順を踏んで懇切丁寧に教えるとか、ただの時間の無駄としか思えないんだが?。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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