第22話 時間と金
「ぶおおおおおおおお!!」
ライトニングエクスプロージョンがレイドボアに直撃する。
そして奴を、その取り巻きごと、魔法によって生み出された雷の嵐が完全に打ち砕く。
ワンパンだ。
まあ、魔法の一撃でもワンパンというのかは知らないが。
「マジか……」
俺の魔法一発でボスのとその取り巻きのHPが吹き飛びきる様に、興味なさ気だった蒼すら目を見張る。
「すごいすごい!」
「1発ときたか……」
「き、規格外ですね」
「こりゃー……凄いわね。正に勇者様だわ。こりゃこの動画はバズるわよ。なにせレベル12の勇者がレベル30のボスをワンパンだもんね」
そうなってくれると有難い。
―—俺が動画撮影に協力的なのには理由があった。
まず大前提として、俺には金と時間が必要だ。
時間は勿論、このゲームでのレベル上げのための時間である。
このアルティメットワールドでトップに立つには、どう考えてもレベル上げが必要だからな。
なんなら、カンストであるレベル300を目指す必要があるといっても良い。
そしてそのためには、膨大な時間が必要となる。
なにせ、開始半年経った現在の最高レベルは160程らしいからな。
当然、この手のゲームはレベルが上がれば上がる程上がり辛くなっていく。
必要経験値100倍の俺が、カンストであるレベル300に到達するのにどれ程の時間がかかる事か。
恐らく1年2年ではすまないはずだ。
ボスを狩れば効率よくレベル上げが出来るのではないか?
もちろんそうするつもりだが、話を聞く限り、必要経験値の上昇に対してボスの経験値上昇は緩やかっぽい。
100中盤のボスを、適正レベル100人で狩っても1レベルも上がらないそうだからな。
なので俺が仮にソロで倒しても、適正レベルだと1レベルすら上がらないって訳である。
まあ格上を狩ればマシなんだろうが、ボスはそれ程数がいる訳じゃないそうだからな。
結局、レベルカンストを目指すには、大なり小なり雑魚乱獲はしなければならない訳である。
そのため、年単位で地味に狩をし続けなければならない事が予想される訳だが……
俺は何年もかけるつもりはない。
自分で言うのもなんだが、怒りや憎しみはあまり長く続かない質だからな。
数年もかけたら、『まあもういいかな』って絶対になってる。
それでは本末転倒だ。
だから可能な限り時短しなければならないのである。
鉄は熱いうちに打てって言うだろ?
そんな俺の出した答えが……
食事と寝る時間以外、レベルを上げ続ける。
だ。
こうすれば、劇的にかかる期間を圧縮できるはず。
そしてそのためには……金が必要だ。
ここで金の出番である。
世の中何をするにも金が必要不可欠。
例えば、今は母親の家にあるゲーム機を使ってこのゲームをしてる訳だが、このゲームカプセルは200万する。
いつまでも借りてプレイする訳にもいかないので、自分で買う必要がある訳だが……
金がない!
今の俺は無一文!
ゲーム以外にも、普通に生きていくのにも金は必要だ。
衣食住。
ゲームを動かすための電気代などなど。
もちろんその金もない。
まあ母親が寛大で、ずーっと俺の世話をしてくれるなら金の心配はないだろう。
だが、果たしてそんな都合よく事が運ぶだろうか?
いくら血がつながっているとはいえ、24年近く会っていない相手だ。
24年ぶりに息子に会ったら、引きこもりの穀潰しでした。
ってなった時、真面な神経をしてる人間なら、見切りをつけてさっさと追い出すはず。
子供が俺だけなら兎も角、他に3人もいて、再婚までしてるなら猶更である。
だから甘い期待はしてはいけない。
つまり、俺は自力で金を稼ぐ必要がある訳だ。
だが、そうすると寝る時間以外ゲームの作戦が崩れてしまう。
正に二律背反。
魔王城から拝借した金塊を売ろうにも、たった1個で警察の御用になってしまっているので、金塊を売ってそれで賄うという訳にもいかない。
あの1個だけなら兎も角、複数売ろうとしたらどんなトラブルになるか分かった物じゃないからな。
働きたくないで御座る。
そんな俺の元に舞い込んできたのが、この動画配信だ。
フェアリーファングギルドの公式チャンネル。
通称FF。
今現在はそれ程人気が無く、というかぶっちゃけ過疎チャンネルだ。
だがこのFFチャンネルの人気に火をつける事が出来れば、その収益は全部俺の元に入って来る。
という約束を、創世乃蒼から取り付ける事に俺は成功していた。
だから頑張るのだ。
収益だけで生計が建てられる様にするために。
でなきゃ、誰がこんなピエロみたいな真似するかっての。
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