第20話 ラノベだけにしとけ
「あれがレイドボアだよ」
ギルドでの会話で、俺の主人公補正ことヒーローパワーがボスのソロ討伐で上がる事を伝えたら、さっそくボス討伐に行こうという話になった。
で、やってきたのがレベル30のボス、レイドボアのいる場所である。
周囲は森だが、レイドボアとその取り巻き数匹がいる場所だけは大きく開けていた。
まあここで戦えよって事なのだろう。
因みに、レベル20のボスはいないそうだ。
あ、そうそう。
来る途中に寄った街で、俺はレベル10から装備できる武器防具に更新している。
たいして強化はされてないっぽいが、まあそれでも最初の装備より幾分かはマシだろう。
「さーて、皆さま。我がギルドの新鋭……クラス勇者の天道翔こと、エアマスターのソロボス討伐をご覧にいれたいと思います」
すらすらと話す、ギルドマスターの創世乃蒼の視線は、此方ではなく空中に浮かぶアイボールへと向いていた。
アルティメットワールドはゲームプレイを録画する機能があり、一つは自分視点のFPSの様な映像の録画方式と、アイボールを使った録画方式の二つである。
基本的にアイボールは有料で――イベントなどで期間限定使用権チケットなどが貰えるそうな――無料の録画機能は自分視点のみだそうだ。
で、彼女は今録画中だ。
ギルドの宣伝に使うための映像を納める為に。
もちろん納めるのは、俺のソロボス討伐である。
「エアマスターって変なあだ名付けるの止めてくれません?」
映像をとって宣伝するのはまあいいんだが……とりあえず、変なあだ名をつけられたっぽいので苦情を入れておく。
「ん?天道翔なら丁度良くない?」
全然丁度良くはない。
名前にかかってるような、かかってないような、微妙なラインにしか思えない。
かりにしっかりかかってたとしても、そんなあだ名で呼ばれたくはないし。
「不快なんでその呼び方はやめてください」
「むう、しょうがないわねぇ。じゃあどう呼ぼうかしら。うちの看板プレイヤーな訳だし、やっぱインパクトのある呼び名の方がいいわよね」
勝手に看板にすんな。
「勇者クラスだから勇者翔?うーん、でも……それだと印象が弱い気がするわねぇ。勇者になんかプラスが欲しいわ。皆、何かいい案内かしら?」
「勇者にプラスする冠詞ですか……」
「超つけたらいいんじゃね。超勇者で」
蒼の発言。
すこぶる頭の弱そうなアイデアである。
まあなりはデカくても、しょせん11歳のお子様だからしょうがない。
因みに、こいつはリアルでもこの見た目らしい。
ゲーム用に改造した訳ではなく。
発育の良いガキである。
なんでも、この見た目だか女子大生にナンパされた事もあるそうな。
俺もこいつぐらい顔が良かったらメリエスに……いやまあ、そんな事はどうでもいいか。
「それは微妙ね。却下」
「ちぇっ」
姉の乃蒼が蒼の適当な案を即断で却下する。
それに対して蒼は反抗するそぶりも見せないので、姉弟間のパワーバランスは姉の方が圧倒的に上の様だ。
まあ単に、俺の呼称に興味がないだけの可能性もあるが。
「はいはい!私思うんです!やっぱり勇者と言えばチートと異世界帰りじゃないかと!」
芽衣が核心へのド直球を投げ込んで来て、ちょっとびっくりする。
まじかこいつ……まさか超越者と繋がってて、俺の素性を知ってるんじゃ……って、流石にそれはないか。
「まあ確かに、勇者はチート貰って異世界から帰ってきがちよねぇ。でもちょっとありきたりかも……」
「翔お兄ちゃんって勇者クラスじゃないですか。だから……異世界帰りのチート勇者、アルティメットワールドでも勇者になって無双する。なんてどうですか?皆に見えないスキルとか魔法もあるし、異世界の勇者としての力をゲーム内で使ってるって感じで」
芽衣が無駄にグイグイと乃蒼にアピールする。
しかし……本当に偶然なんだよな?
「ライトノベルのタイトルみたいな肩書なのは気になるけど……確かに隠し仕様でそれっぽい演出は可能ね」
乃蒼が満更下でもない反応を見せた。
正気かよ。
どう考えてもその肩書、イロモノ枠だぞ。
少なくともギルドの看板に付ける物じゃねぇだろ。
「よし!じゃあ翔君の動画のテーマとタイトルは『異世界帰りの勇者、フルダイブMMORPGゲームでも勇者として無双する~やりたい放題チートしやがって?ただの地力ですがなにか?~』で決まりね!」
動画のタイトル長すぎだろ。
そういうのはラノベだけにしとけよ。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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