第16話 RMT
ボス討伐後、俺は帰還スクロールを芽衣から受け取って始まりの街へと戻った。
帰還スクロールは一度でも行った事のある街や村へと戻る事の出来る便利なマジックアイテムだ。
発動までに10秒程かかるのと、攻撃やデバフなんかを喰らうと中断してしまうの仕様なので、危険な状態の退避方法としては使えない。
なので、安全を確保してから使用する必要がある。
「20万160レボルになります」
街に戻った俺はまず道具屋へと寄り、今回の狩で得たドロップ品を売却した。
このAWでは、魔物を倒すと宝玉という換金アイテムがノーマルドロップとして100%ドロップする仕様だ。
そして宝玉はサイズと等級でその売却額が変わり、今売ったのはプチデビル16匹分と、イカさんのドロップである。
内訳は――
プチデビルの宝玉は10レボル。
イカさんのは20万レボルだ。
えらい価格差だが、イカさんの方は本来100人単位で討伐しなければならないボスな上に、レベルもプチデビルより10近く高かったからな。
妥当かどうかは兎も角、ある程度値段差があるのは当然といえば当然だろう。
ああ、そうそう。
この世界のお金の単位はレボルだ。
「20万って、このゲーム的にはどんなもんなんだ?」
店で金を受け取った俺は聞いてみる。
「序盤なら大金かな。ただある程度レベルが上がってきたら……まあお小遣い程度かな」
「まあ所詮、レベル10のボスか」
「そういう事。じゃあ次はゲートへ行こう」
「分かった」
ゲートというのは、街と街を繋ぐ転移ゲートの事だ。
お金はかかるが、これを使えば一瞬で別の街へと移動する事が出来る。
ま、行けない場所なんかも結構あるらしいけど。
そういうのはイベントや、直接歩いてって感じで向かう様だ。
「レベル30未満の初心者期間は9割引きですので、500レボルになります」
ゲート職員に行先を告げると、500レボル請求される。
ネットゲームでよくある、低レベルへの優遇措置としての値引きが無ければ5,000レボルしてたって事だ。
因みに、値段は向かう場所次第で変わって来る。
近ければ安く。
遠ければ高くって感じだ。
「この街にあたしの所属してるギルドのホームがあるんだよ」
移動先は芽衣のギルドが物件を借りているメーゼスの街だ。
ここに連れてこられたのは、ギルドのメンバーに俺を紹介するためである。
一応、俺は芽衣と同じギルドに入るって事にしたからな。
サブクラスでロードを取るって約束もしてるし。
「じゃーん!ここがそうです!」
街の南側にある、屋敷っぽい大きな建物。
その前で芽衣が足を止め、そこがギルドハウスだと俺に自慢気に告げる。
「でかいな。芽衣のギルドは、結構規模のでかいギルドなんだな」
デカい建物を所持してるんなら、きっとその構成人数も多いはず。
トップを目指すと芽衣が豪語するだけあって、そこそこ大きなギルドの様だ。
「いやー、それがそうでもなくって……」
芽衣が困ったような顔で頭をかいた。
なにがそうでもないんだ?
小学生にして、日本人の謙虚さの発露か?
「実は人数は、あたしを含めても6人しかいないんだよねぇ」
「え?そうなのか?それにしては、ギルドハウスが豪邸に見えるけど……」
6人という規模にしては、建物が大きすぎる気がするんだが……ギルドハウスはみんなこんな物なのか?
「妖精の牙、あ、私達のギルドの名前ね」
「フェアリーファングか。変わった名前だな」
妖精と牙にはなんのシナジーも感じない。
組み合わせとしては不自然に感じる。
「綺麗なバラにはトゲがあるって言うでしょ?発足当時は女の人三人だったから、そんな感じのを考えて……可愛い妖精と、牙を組み合わせるって名前に行き着いたみたい」
「なるほど」
名づけはテーマを元に、それっぽいのを適当に付けたって感じか。
まあ所詮ゲーム内のネーミングだし、本気で頭捻って考える様なもんじゃないわな。
「話を戻すね。でね、ギルドリーダーってすっごいお金持ちなんだ。だからこんな大きなギルドハウスを購入できたって訳」
「廃人な訳か」
無駄にデカい家を買うあたり、相当金を持っているようだ。
きっとゲーム廃人なのだろう。
でなきゃ、無駄遣いに金を使う余裕なんてないだろうし。
まあ上を目指すって言ってるギルドだからな。
そりゃトップはその手の人間に決まってる。
「ああ、違う違う。お金持ちってのはリアルの方ね」
「リアル金持ち?」
「そ、すっごいお金持ちの女社長さんなんだ」
そんな金持ちの女社長がゲーム何てしてるのか?
そこそこいい年だろうし……いやまあ、趣味は人それぞれだから口を挟む様な事じゃないんだろうが。
あんまりイメージが湧かんな。
「て事は……ギルドハウスってのは課金で買える物なんだな」
きっと課金を促すために、現金購入限定のギルドハウスなんかがあるのだろう。
「うん。まあ正確には……このゲーム、お金でゲーム内マネーのレボルを運営から買える様になってるんだ。だからまずはレボルを買って、そのお金でって感じだね」
特殊なアイテムとか衣装とかならともかく、ゲーム内の金を運営から直接買えるとか、珍しいタイプの運営方式だな。
「あと、レボルを現実のお金に換えて貰う事も出来るみたいだよ」
「マジか!?」
逆もありなのかよ。
「レートは低いみたいだけどね。買う場合の100分の1とかだったかな」
ま、そりゃ等価にはせんよな。
しかし、実質RMT解禁か……
RMTは、この手のゲームでは禁止されている事が大半である。
狩場独占などの迷惑行為に繋がり、ひいては、ゲームバランスの崩壊にも繋がりかねないからだ。
あと、金のやり取りでトラブルが発生して、運営が巻き込まれるのを避ける為ってのもあるな。
まあ要は、トラブルの種になる訳だ。
RMTは。
だから普通は禁じられているんだが……まあ、このゲームは人を越えた超越者が関わってるからな。
まあきっと、謎の力でどうとでもするんだろう。
「まあここで立ち話もなんだし、中に入ろ入ろ」
芽衣が外側の門扉の前に立つと、門が自動で開いた。
まさかの自動扉である。
「ああ」
俺は芽衣に案内され、ギルドハウスへと。
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