第12話 100倍
「これで16匹目だね。レベルのゲージはどんな感じ?」
プチデビルの集団を何回か狩ったところで、芽衣が経験値の溜まり具合を聞いて来る。
先程、パーティーでのステータス閲覧許可を出したが、実は今はパーティーを組んでいない。
そのため、彼女には俺の経験値の状態が分からないのだ。
このゲームは、レベルの低い魔物との戦いでは、経験値やドロップ率にペナルティが発生する。
そしてその基準は、パーティー内で最もレベルが高いプレイヤーとなっていた。
そのため、高レベルの芽衣と組んだまま魔物を狩ったのでは、経験値が入ってこない。
だからパーティーを解除してるって訳である。
因みに、芽衣基準の、レベル80相当の魔物と戦った場合も経験値は入ってこないそうだ。
養殖禁止の仕様として。
ま、つまり、組んでるのがレベル差のある相手だと、敵のレベルが高かろうが低かろうが、経験値は入ってこないって訳である。
「んー……1、いや、2%位かな。ゲージの」
経験値は数値表記ではなく、ゲージだけが見えている形式だ。
これもきっと体感云々って奴なのだろう。
例外的にHPとMPだけ数字で見えているのは、流石にそれが分からないと不便過ぎるからだと思われる。
「ええ!?たったそれだけ!?」
俺の返事に芽衣が驚く。
「これってやっぱり、かなり必要経験値が多いって事だよな」
16匹倒してゲージがちょろっと増えてるだけってのは、レベル1って事を考えると……
必要経験値が他職より多いのは分かっていた。
クラス説明に載っていたからな。
とは言え、これは酷い気がする。
「普通クラスなら、10匹でレベルアップするからね。あたしの魔法少女も凄く強いから必要経験値が多いんだけど、それでも他の2倍くらいだよ」
「普通は10匹で上がるのか……」
ゲージの進み具合から、俺は1,000匹近く狩る必要がある。
つまり一般クラスの100倍だ。
流石にやり過ぎだろ。
それとも勇者ってクラスは、それだけ強いって事か?
まあこのゲームの頂点を目指す必要があるから、強さが経験値に見合っているなら構わないっちゃ構わないんだが……
レベルさえ上がれば自然とトップに立てる性能なら、必ずしも俺にとって逆風とは言えないからな。
「はぁ……翔お兄ちゃんにサクサクレベル上げして貰って、さっさとサブクラスのロードを取って貰おうって思ってたけど厳しそうだね」
芽衣が大きくため息を吐く。
「まあ100倍だからな。因みに、芽衣は始めてからどれぐらいなんだ」
芽衣のレベルは現在80だ。
どのくらい時間がかかったのかが気になり、俺は尋ねる。
「あたしは始めて2か月だよ」
2か月で80か。
芽衣と同じペースだと、必要経験値50倍の俺は100か月、つまり8年ちょっとかかる計算になる
まああくまでも、同じペースでなら、の話ではあるが。
強クラスなんだし、流石に同じペースって事はないだろう。
単純な戦闘技術だけとっても、俺の方がずっと上だしな。
「まいったなぁ。お兄ちゃんがサブクラスにロードを取ってくれるって話、もうギルドの皆にしちゃったよぉ」
気の早い奴である。
そもそも同じギルドに入るともまだ答えてないんだが?
まあ誘ってくれた相手なので、余程の事がない限り入ってやるつもりではあったが。
「まああれだ。レベル上げは爆速でしてやるから、そう気を落とすな」
レベル上げは当然頑張る。
なにせ、能力にペナルティを喰らってるからな。
早々に緩和していかんと。
後、少しでも早くメリエスに報復したいし。
鉄は熱いうちに打てって言うし、俺の怒りの炎が消える前に必ずや頂点に立って見せる。
因みに、回復魔法さえ使えば俺は寝ずにレベル上げに打ち込める。
あの痛みは難点だが、それ位は我慢するさ。
「うーん。まあ翔お兄ちゃんは無職だもんね。自由な時間が多いから、いーっぱい頑張ってね」
そう、しかも俺は無職だ。
なので他の人間の何倍もプレイ時間を確保できる。
100倍だろうがなんだろうが、俺は駆け上がるぜ。
このアルティメットワールドの頂点って奴によ。
そんな厨二っぽい事を心に決める俺であった。
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