【8面】強すぎた能力
空手から翌日。
「俺も結人に付くことにした」
「えっ…」
朝、登園するなり彼にそう言われた。結人は驚きで目をパチパチとさせる。
「俺、蓬城悠莱。結人と少し被るけど宜しくだ」
(蓬なら城付ける意味あるのかな?)
しかし昨日の一件で、害意はないのだと分かっているので、悠莱とは友達になることにした。
この日はサッカーの指導だった。今日は外部指導者が来ない日らしく、ずっと試合ばかりだった。
「蓬城!決めろ!」
「はっ!」
悠莱はかなり優秀で、何点も点数を入れてくれる。心強いな、と思いながら結人は走った。
「蓬城ー!」
しかし何度目かのシュートの時だった。誰かが邪魔に入る。
「なに…?わぁっ!」
突然大きな足が、悠莱ごとボールを吹き飛ばしたのだ。ボールは空中を勢いよく舞う。
「っはァー!行ったぞー!」
「虎太…」
シュートを邪魔した正体は――澤村雅那虎だった。彼は御魔の手下で、寝れば寝るほど強くなる魔法体質だ。
それにしても嫌なプレイをするなあ、そう思った時だった。
「させないよ!」
誰かが蝶の如く舞う。側転から空中へ飛び出した誰かがボールを奪った。
「…凛紗希ちゃん!?」
それは、トリッキングプレイヤーの凛紗希だった。彼女は得意の空中戦でボールを繰り返す。
「悠莱くん!今度こそ決めてねえ」
「ああ!」
その時だった。
「やあッッ!!」
雅那虎と悠莱の隙間を縫うように、結人は思い切りボールを蹴り飛ばした。
「っ!?」
それはゴールキーパーを抜き、ネットへ勢いよく吸い付いた。
「やったぁあ!」
結人はその場で飛び上がる。それを見た悠莱も満足そうに笑っていた。
「い、威力が…やばぁ。魔法使ってる?」
その時、唯臣がそう疑ってきた。
「つ、強いよね」
彼は結人を睨見つける。どうやら魔法を使ったのだと疑われているようだ。
「ま、魔法じゃないよ」
「澤村くらいの力持ってるじゃん」
「あ…いや…」
思わず、悩んでいると慌てて先生がやってきた。
「ふたりとも!ストップ!結人くん、魔法は使っちゃ駄目だよ!この年で使ったら他の子が怪我しちゃうからね」
「ま、魔法じゃないですよ」
これが本来の肉体の実力だが、幼児には少し強すぎたみたいだ。
難しいなあ、と思いながらサッカーを終えた。
その日の夕方。
『御魔…、久しぶり』
『来たか。久慈乃詩』
御魔が呼び出した人物は久慈乃詩永遠。澤村雅那虎と並ぶほどの優秀児である。




