【3面】色鮮やかな鞭
「しゅう!」
凛紗希という女の子が、体を回転させながら宙を舞う。
(すごーい…)
結人は幼稚園児離れした技に驚いていた。そういえば、この世界は魔法が使えるのだった。
「すごいでしょ?凛紗希ちゃん」
その時、ひとりの少女が結人に話しかけてきた。
「え?君は?」
「私は散里澤色葉。絵を描くのが大好きなの」
「ちりさわ…いろは…。すごい名前だね」
「玖神くんもカッコいい名前だね。苗字の方がカッコいいから苗字で呼ばせてね」
「あ、いいよ…」
慣れないなあ、と思いながら会話を続ける。
「…ねぇ、色葉さん」
「なぁに?」
「ここの子って、すごく頭が良いんだね」
思った通りのことを言った時だった。
「だって、ここはエリート幼稚園だもん」
「そ、そうなの!?」
初めて聞いたからこそ驚いた。
「そうだよ。ここはあらゆる成績が評価されるんだ。もちろん魔法の勉強もね。だから私みたいに精神年齢が高い人がいるの」
「へ、へぇ」
指でリズムを刻んでいると、色葉が頰を作らませてきた。
「話、聞いてる?」
「えっ?聞いてるよ」
「こんこん叩いてるね。太鼓が好きなの?」
「ご名答」
「正解なの?」
「うん。正解だよ」
色葉は洞察力が鋭いな、と思う。
その時、彼女がニヤリと笑う。
「君さ、どうして男なのに男と話さないの?」
「…えっ?」
次の瞬間、背後から糸が鞭のように彼を襲う。それは、ばしっ!と痛々しい音を立てて床をひっぱたいたのだ。
「よけたよけた…。凄いね」
「な、なに!?急に!?」
「大体の人は避けられないのに。君、ただの子供じゃないよね?」
すると更に彼女は、色鮮やかな色の糸を鞭のように振りかざす。それを結人は反射神経ひとつで交わす。
(…単調だ。なにも問題はないね)
そして彼は手を広げる。
(これが魔法だとして…、実体にダメージを与えられるってことは…)
そして伸び切った色付きの鞭を、ぎゅう!と強く握った。少々痛みが疾走ったが気にしない。
「よッ!」
掛け声と同時、鞭を引き抜く。
「…なっ!?」
「鞭の動き読み易いよ」
そう言って鞭を、力を込めて投げつけた。それは色葉の額をたたいた。
「っつぅ!?」
色葉が怯むと同時、結人は背後にいた。
「背後にはその絵、鞭にできないよね?」
「っ!?」
そう言ってスケッチブックを没収した。
「危ない危ない…」
「す、凄い…」
「さては君、魔法少女かな?」
「ちぇ!すぐにバレちゃった…」
結人は、スケッチブックに何も仕掛けがないことで、彼女の特性を見抜いたのだ。
「…すごいね。私の絵魔法でみーんなやっつけられるのに」
「そりゃあ、殆どの子にはどうしょうもないよね」
それを聞いた色葉は、ふふっと笑う。
「私決めた。キミの手下になる」
「え、手下?」
「そ。私以上の子がいてすごいから」
「配下じゃない?まぁ、アリか」
こうして、たった数分戦闘しただけで、散里澤色葉を味方にしたのだった。
【次回】 愛馬凛紗希vs玖神結人 トリッキングバトル!
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