【2面】魔法の幼稚園 愛幼京幼稚園
朝の冷たい空気が、ベッドに盛られた布団に染み渡る。陽光のあまりの眩しさで、結愛は目を覚ました。
「おは…よう?」
その時、やけに体が軽いと思った。
「…えっ!?」
結愛は言葉を失う。何故なら手が小さくなっていたからだ。あまりの驚愕で数秒間は凍ってしまった。そして周りの空気も何やら違う。少しばかり温かい気がした。
「こ、子供になってるだけじゃなくて…、声も性別も…変わってる!?」
昨夜…の会話は辛うじて覚えている。しかし何故か男の子の声になっていたのだ。
その時、何者かの声が頭の中で響く。
《彼女は『死にたい』と言っていた。だったら、前世の記憶を残せど、性別と精神も一新するべきだ》
「…あなた、誰!?」
《私は神羅。この世界の統一者です》
「と、統一者!?」
思わず、男児となった結愛は驚いた。
《あと…男の子ということで、何か名前はありませんか?》
「ゆい…ゆい…と…」
《ゆいと、結人くんですね?素敵な名前ですね》
「結人か」
その時、親の声が聞こえた。少しばかり若々しい声であった。懐かしさすら感じてしまった。
気がつけば、幼稚園にいた。
結飴は元々保育園通いだった。だが何故か、今は幼稚園にいる。どうやら時代だけが変わっただけではないようだ。
「結人くん、おはよう」
「あ、おはようございます」
結人は丁寧に挨拶する。目の前の女性は驚いていた。結人は、彼女の胸元の名札を見つめる。
「四季山明子…」
「えっ?」
その時、女の子がこちらを指さす。小さな指だなあ、と心のどこかで思った。
「…誰?」
「あ、凛紗希ちゃん。駄目でしょう?」
「てんこうせいってやつ?」
「違うよ」
四季山は凛紗希という女の子に戸惑っている。どうやら落ち着きが無いようだ。
「あ、凛紗希ちゃん!いたー」
「色葉ちゃん、凛紗希ちゃん連れて遊んでてくれる?」
「はーい。あ、北宮くんだけど…」
「えー、もうまたー?」
どうやら、てんてこ舞いらしい。結人は苦笑を禁じ得なかった。
「…ここの保育園、何か変だな」
結人は四季山と廊下を歩きながら、違和感を感じてしまった。壁一面に杖や本棚が飾られていた。
「四季山先生、ここって色々なグラフがありますよね?」
「よくそんな難しい言葉を…、いや、ここに来たなら知ってるか」
すると四季山はこちらを見てこう言う。
「ここはね、成績が全てなの。サッカー、剣道、空手、茶道…あと和太鼓」
「えっ?和太鼓♡」
「…全てが結果で評価されるの」
「こ、怖いですね」
「それが社会勉強だから」
どうやら愛幼京幼稚園は、少しシステムの勝手が違うようだ。
そして、このあと魔法世界の幼稚園での恐ろしさが牙を剥く――。
【次回】 玖神 vs 散里澤 色鮮やかな暴力…
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