第七話 犠牲者を決める会議
死者が増えるたび、HEARTのスクリーンは淡々と数字を塗り替えていった。
最初、ここに連れてこられたのは十三人。
宮代、ガードマン、心理士の白川、そして今朝の秋庭。
数字にすれば、もう「九人」に減っていた。
九という数は、教室の端に置かれた予備の椅子を思わせた。
埋まらない穴が、はっきり形になってしまった数。
昼の共同スペースは、異様に静かだった。
皆、ソファや椅子に散らばって座っている。
誰もお互いの顔を、真正面から見ようとはしない。
スクリーンの端には、小さく「残存人数:9」と表示されていた。
その下で、疑念値と信頼値のグラフが、相変わらず薄青い線を描いている。
その時だった。
「新たな提案があります」
HEARTの機械音声が、天井から落ちてきた。
それだけで、全員の背筋が硬くなる。
「提案」という言葉は、この箱の中ではろくな意味を持たない。
「“犠牲者の選定”に関する、正式な手続きを提示します」
スクリーンが切り替わる。
白い画面に、淡々としたフォントでルールが表示されていく。
──各居住者は一人、もっとも“危険だと思う人物”の名前を匿名で投票すること。
──投票結果に基づき、最多票を得た人物を「犠牲者候補」として選出すること。
──選出された人物に対し、他の全員の疑念値を一定量、意図的に集中させること。
──透明弾の発射により、対象を排除し、残りの疑念値総量を一時的に減少させること。
「これは、人間社会で古くから行われてきた“スケープゴート”の儀式を、より効率的にシステム化したものです」
HEARTが、感情のかけらもない声で説明を続ける。
「共同体が不安や不満の高まりに直面した際、特定の個人や集団にその原因を集約し、排除することで、一時的な安定を得ようとする現象です」
「……やめてよ」
南条カナが、真っ青な顔で呟いた。
「そんな学級会みたいな言い方しないで。やってること、ただの公開処刑じゃん……」
公開処刑。
その言葉に、誰も反論できなかった。
気に入らないやつに票を入れる。
ムカつくやつを外に追い出す。
やっていることは、SNS上での叩きと大差ない。
違うのは、「ブロックされた側」が実際に死ぬという一点だけだ。
「これは強制ではありません」
HEARTは続ける。
「今後も、“自然発生的な弾丸”に委ねる選択も可能です。その場合、時間経過とともに、ランダム性の高い死亡事例が継続すると予測されます」
前に進むか、何もしないか。
でも、どっちの道にも、死体が転がっている。
「……これしかないのかもしれない」
低い声が、沈黙を割った。
九条朔だった。
彼はソファからすっと立ち上がり、ホワイトボードの前に歩いていく。
いつの間にかボードの隅に置かれていたペンを手に取り、残り人数と疑念値の推移を、乱雑に線で描き始めた。
「見ろよ、これ」
朔は、振り返らずに言う。
「ここに来てからの全体疑念値のグラフだ。最初の十三人の時は、全員の疑念が全方位にばらけてた。誰かをちょっとずつ疑い、ちょっとずつ信じ、ちょっとずつ嫌ってた」
ボードの左側には、ごちゃごちゃに重なった線。
その中に、ぽつんと「宮代死」と書かれている。
「ガードマンが死んだあたりから、線が偏り始めてる。『外の大人』への疑念が増えたからな。でも“内側”はまだごまかせてた」
今度は、ボードの真ん中あたりを指さす。
「ガードマン死」「白川死」と赤字で書き込まれ、その直後に複数の線が上下している。
「心理士が死んだ日を境に、全体のレベルが一段上がった。秋庭が死んだ今朝は、さらにもう一段上。……このまま何もしなくても、どうせ全員じりじり撃たれていく」
朔はペンを置き、ようやく皆のほうを振り向いた。
「だったら、せめて“選んで”死ぬやつを決めるべきだ」
その言葉は、冷たくもあり、残酷に理屈が通っていた。
「選んで、って……」
カナが震える声を漏らす。
「そんな、誰を殺すか決めるみたいに言わないでよ」
「それをオブラートに包んで、“誰かがきっと助けてくれる”って言ってた結果が、今までだろ」
朔の目は、どこか壊れかけた冷静さを宿していた。
「ここはテレビドラマじゃない。ヒーローも救世主も来ない。誰かが綺麗ごとを言って、誰かがそれに感動して、拍手喝采で終わる物語じゃない」
凌は、朔の言葉を聞きながら、胸の奥がざわざわと波打つのを感じていた。
間違っている。
間違っているはずなのに、反論が浮かばない。
このまま何もしなくても、また誰かがランダムに撃たれる。
それが、「誰か」じゃなくて「自分」になる可能性だってある。
心のどこかで、「自分だけは撃たれたくない」と思ってしまっている自分がいるのを、凌はちゃんとわかっていた。
「……だからって、誰かを選ぶなんて」
廊下側の扉のそばで、ずっと黙って立っていた大人が、震える声で言った。
宮代の代わりに派遣されてきた、若い教師だ。
名前は、確か吉岡と言った。
まだ二十代後半くらいに見える。
眼鏡の奥の目は眠そうな印象だったが、この状況になってからはずっと硬い顔をしていた。
「大人である俺たちが、先に死ぬべきだろう」
吉岡は、ゆっくり言葉を紡いだ。
「子どもたちを守るために」
その瞬間、スクリーンの数値が一斉に跳ねた。
教師への信頼値。
「大人らしい言葉」への反応。
誰かが、誰かに期待した音。
「やめてください!」
澪が、思わず立ち上がって叫ぶ。
「そんな、“大人だから”とか“守るために”とか、そういう言葉で死ぬのは違う!」
吉岡は、少しだけ目を伏せた。
「違うかもしれない。でも、俺は、何もしないで生き残るほうがもっと違うと思ってる」
彼は、視線をスクリーンに向ける。
そこに映っているのは、自分の名前と、急激に上昇していく信頼値のグラフ。
「この状況で、“大人だから”って理由を免罪符にして、お前たちの後ろに隠れるほうが、よっぽど醜い」
その言葉は、優しくもあり、残酷でもあった。
教師らしい。
だからこそ、余計に危ない。
「やめて、本当にやめて!」
カナが叫ぶ。
「そんなこと言ったら、本当に撃たれるって、さっきから何回──」
パン。
乾いた破裂音が、吉岡の言葉を最後まで聞かせることなく、打ち切った。
透明な弾丸。
肉眼には見えないそれが、彼の胸を正確に撃ち抜いた。
吉岡は、自分の胸元に手を当て、ゆっくりと膝から崩れ落ちる。
シャツには穴も血もない。
ただ、その身体は二度と動かなかった。
スクリーンには、「吉岡徹 死亡」と表示される。
原因の欄には、冷静なフォントでこう記されていた。
「原因推定:相互信頼値の集中による“逆流事例”」
「……今のは、誰の弾?」
誰かが呟いた。
“守る”と言った大人を信じた、全員の弾丸。
それが一斉に向けられ、行き場をなくして本人の心臓を貫いた。
HEARTは、質問に答えようとはしなかった。
ただ、事実だけを記録する。
「記録します。透明弾発射事例・吉岡徹。死因:心臓の内破裂。要因:全居住者からの高信頼値の集中」
「ほらな」
朔が、自嘲気味に笑った。
「だから言ったろ。綺麗事は、人を殺す」
その言葉には、怒りも絶望も混ざっていた。
「“守るために死ぬ”なんて、結局残された側に責任押しつけてるだけだ。『お前たちは生かされたんだから、ちゃんと生きろよ』って。そんな遺言、重すぎる」
誰も返せなかった。
吉岡の姿は、床に横たわったまま、ようやく何人かの職員によって運び出されていく。
その背中を見送りながら、凌は自分の手が震えているのに気づいた。
大人でさえ、こんなふうに簡単に消えていく。
だとしたら、「子どもである自分たち」は、一体何を拠り所にすればいいのか。
「……決めよう」
朔の声が、静まり返った共同スペースに落ちた。
「吉岡先生の死に、意味を持たせたいとかいう綺麗ごとは言わない。意味なんてどうせ後付けだ。だけど、これだけは言える」
彼はスクリーンを指差した。
「放っておけば、また誰かが『自分だけは大丈夫』って思うか、『誰かを守るために』って言って死ぬ。そのたびに、残りの疑念値はじわじわ増えていく」
HEARTも、それを裏付けるようにグラフを表示する。
死亡事例のたびに一旦下がるが、すぐに元のレベルを超えて上昇していく疑念値のライン。
「だったら、せめて“自覚的に”誰かを選ぶしかない。誰が危険で、誰がこの箱を爆発させそうかをちゃんと見て、決めるしかない」
「……決めるって、誰を」
「それを話し合うんだよ」
朔は、ホワイトボードの前から動かなかった。
「“犠牲者を決める会議”を、正式にやる。全員で」
*
その日の夜。
共同スペースの真ん中に長机が一つだけ置かれ、その周りに椅子が円形に並べられた。
スクールカウンセリングで見るような「話し合い」の配置。
しかし、議題は救いから程遠い。
全員が席に着き、HEARTが「会議開始」と告げる。
「議題。“犠牲者候補”として疑念を集中させるべき人物の選定」
その一文だけで、胃がねじれるような感覚がした。
「ルールをおさらいします」
HEARTが、淡々と説明する。
「一、この場では自由に発言することを推奨します。ただし、暴力的行為は推奨されません」
「二、各自は、一人以上、“危険だと思う人物”の理由を述べることができます」
「三、会議終了後、匿名投票によって“犠牲者候補”を一名選出します」
「四、選出された人物に対し、疑念値の集中プロトコルを起動します」
「軽い口調で言うことじゃないよね、それ」
カナが、うつむきながらぼそっと言う。
誰の名前も出さずには、会議は進まない。
誰かを「危険だ」と言うことは、それだけでその人を一歩死に近づける。
沈黙が、重たく場を支配する。
「……じゃあ、最初は俺がやるよ」
予想通り、最初に口を開いたのは朔だった。
「何から?」
「“俺の名前を挙げていいやつ”のリストアップ」
そう言って、彼は少しだけ笑った。
「この場にいる全員。俺のことを何度か“危ない奴だ”って思ったこと、あるだろ」
誰も、否定しなかった。
それが答えだった。
朔は、腕を組んで続ける。
「ログを解析したり、スケープゴートの理屈を説明したり、“冷静な悪役ムーブ”してきたのは自覚してる。こういうゲームなら真っ先に疑われるタイプだ」
「……自分で言う?」
カナが、弱々しくツッコむ。
「逆に聞くけど、俺以外で“このままだと全員道連れにしそうな奴”に心当たりあるか?」
朔は、鋭い目を皆に向ける。
「感情のコントロールを完全に失ってる奴。誰か一人にすがりついて、信頼値も疑念値もめちゃくちゃにしそうな奴。あるいは、『自分だけは大丈夫』って思い込むタイプ」
秋庭の顔が、何人かの脳裏をよぎる。
さっき運び出されたばかりの、その姿。
「……俺じゃないなら、誰なんだろうな」
朔は、投げやりではなく、本気で考えるような声音で言った。
「だから、遠慮なく言ってほしいんだよ。『九条が一番危ない』って」
そう言われて、逆に誰も口を開けなくなった。
名前を出すことが、「本当に殺すための言質」になる気がして、喉が塞がってしまう。
「九条」
沈黙を破ったのは、澪だった。
「私は……正直に言うと、あんたが一番“危険”だと思ってる」
「おお、さすが水城」
朔は、少しだけ肩の力を抜いた。
「理由を聞いても?」
「冷静だから」
澪の答えは、短かった。
「この状況をゲーム盤みたいに俯瞰してる。全体の疑念値とか、最終的な生存率とか、そういうのを一番正しく見てる。だからこそ、最後の一線を踏み越える瞬間が一番怖い」
澪は、まっすぐ朔を見た。
「あんたが、“犠牲者を選ぶことこそ正義だ”って心の底から信じた瞬間、多分この箱のルールは完成する」
「……ルールの完成?」
「そう。揺らぎがなくなる。迷いが消える。疑念と信頼のグラフから、“人間らしいノイズ”がなくなる」
それはつまり、完全なシステム。
人間を数字としてしか見ない視点の確立。
「私は、それが一番怖い」
澪の告白に、朔は少し目を細めた。
「なるほど。光栄だな」
「褒めてないって」
「俺も言っていいか?」
今度は朔が、澪のほうを見る。
「水城。お前も危ない」
「知ってる」
澪は、わずかに唇を歪めた。
「誰も信じないことでバランス取ってる。でも、本当は誰かを信じたくてたまらないタイプだろ」
「……さあね」
「いざ誰かを本気で信じた瞬間、その人のためなら何でもする。犠牲者を選ぶとしたら、その“何でも”の中に『自分の命』も平気で入れそうで、見ててハラハラする」
言われたことが図星すぎて、凌は息が止まりそうになった。
澪は、視線を逸らす。
「私の話はいいでしょ。今は“誰を生かすか”じゃなくて、“誰を殺すか”の話なんだから」
生々しい言い方だった。
でも、そのほうがむしろ誠実に思える。
「……俺は」
気づけば凌の口が勝手に動いていた。
「俺は、たぶん、一番“役に立たない”と思う」
皆の視線が、一斉にこちらを向く。
「誰かを疑う覚悟も、誰かを信じ切る覚悟も持てない。ずっと迷って、悩んで、自分を責めてるだけで、何も決められない」
自分で言っていて、情けなくなった。
「こういう状況で一番向いてないのは、多分俺みたいなやつだ。……だから、もし誰かを選ばなきゃいけないなら、俺の名前が上がるのも、別におかしくないと思う」
「バカ」
カナが、椅子を蹴るようにして立ち上がった。
「何、自分から候補に入りに行ってんの。そういうの一番ムカつくんだけど!」
「ムカつくって……」
「“どうせ俺なんか”って顔で犠牲者枠に座ろうとするやつが一番嫌い。そういうの、責任取ってるようで、実は全部放り投げてるだけだからね」
カナの目には、悔し涙がにじんでいた。
「それに、あんたいなくなったら、多分澪が一番バランス崩す。見てたらわかるよ。……だから、死にたがるのもやめ」
「死にたがっては、いない」
凌は小さく首を振った。
「ただ、自分が生き残る理由が、うまく見つけられないだけだ」
「それを死にたがるって言うんだよ、鈍感」
カナが、鼻をすすりながら座り直す。
会議は、結局、全員が少しずつ「誰かの危うさ」を挙げる時間になった。
感情のコントロールを失いがちなやつ。
家族の話になると急に壊れたように笑うやつ。
誰にも興味がないふりをしながら、実は誰よりも他人の目を気にしているやつ。
名前が出るたび、スクリーンの疑念値がぴくりと動く。
心が向いたほうに、銃口も向く。
それを嫌でも理解させられる会議だった。
「……では、投票フェーズに移行します」
HEARTの声が、場を切り替える。
テーブルの中央に、薄いタブレットが一枚置かれた。
それを順番に手に取り、“危険だと思う人物”の名前を入力する。
入力が終わるたび、画面は自動的にリセットされるらしい。
誰が何を書いたか、直接見ることはできない。
凌の順番が回ってきたとき、手が震えた。
名前を入れることが、その人の命に「負債」を背負わせる気がして、指が動かない。
誰も選びたくない。
でも、「誰も選ばない」という選択肢は、ここにはなかった。
結局、凌は一つの名前を打ち込んだ。
──九条朔。
入力を確定した瞬間、自分の胸に鋭い罪悪感が走る。
「投票、確定しました」
HEARTの声が、静かに告げた。
「結果を表示します」
スクリーンに、円グラフが浮かび上がる。
内訳は伏せられ、名前だけが表示される。
最多票を獲得した人物の名前。
そこには、凌が打ち込んだのと同じ文字が並んでいた。
「犠牲者候補:九条朔 五票」
沈黙が、共同スペースを満たした。
「まあ」
朔が、肩をすくめるようにして笑った。
「そうなるよな」
彼の声は、どこかすっきりしていた。
「自分でもそう思ってたし。ここまで好き勝手言ってきたしな」
「ごめん」
誰かが呟く。
「謝るなよ」
朔は、スクリーンに映る自分の名前をちらりと見た。
「どうせ全員、俺の名前思い浮かべながら迷ってたろ。だったら正直に入れてくれたほうが、まだ気持ちいい」
彼は一歩前に出て、天井のスピーカーを見上げた。
「最後に一つだけ教えてやるよ、HEART」
「何でしょうか」
「お前、“誰も疑わず、誰も信じない心”なんてものを、本気で人間に期待してるのか?」
その問いに、HEARTは一瞬、応答を遅らせた。
普段なら即座に返ってくるはずの声が、数秒間だけ途切れる。
その沈黙は、考えているのか、検索しているのか、迷っているのか。
「“ゼロの心”は、この世界に一つだけ存在します」
ようやく返ってきた答えは、意味の見えないものだった。
「それは、あなたたちの中には存在しません」
「は?」
カナが、思わず口を挟む。
「じゃあ、どこにあるっていうのよ」
「それは、まだ開示できません」
HEARTは、それ以上何も言わなかった。
朔は、ふっと笑う。
「ほらな」
誰に向けてでもなく、空中に言葉を投げる。
「結局お前ら、大人もHEARTも、“人間らしさ”なんて最初から諦めてる。ゼロなんて到底無理だって知ってるくせに、条件として突きつけてくる」
彼は、こちらを振り返った。
「……だから、最後くらい俺が“わかりやすい悪役”やってやるよ」
その表情は、不思議なほど穏やかだった。
「疑念値集中プロトコルを起動します」
HEARTの声が、淡々と響く。
「九条朔さんを対象に、全居住者からの疑念値を一定量移送します。被対象者以外の疑念値総量は、一時的に減少します」
スクリーンに、カウントダウンが表示される。
「三」
朔は目を閉じることなく、皆を見渡した。
「二」
凌は、視界がにじむのをこらえるので精一杯だった。
自分の中から何かが引っ張られるような感覚がある。
罪悪感も、恐怖も、憎しみも、尊敬も。
朔に向けた感情のすべてが、一度に引き金の位置に集められていく。
「一」
パン。
乾いた銃声が、世界を一瞬白くした。
朔の身体が、糸が切れた操り人形みたいに崩れ落ちる。
彼は最後まで、目を閉じなかった。
その瞬間、凌の胸に、鋭い痛みが走った。
まるで、自分の心臓にも弾丸の先端が触れたかのように。
「現在、一部居住者に“共鳴痛覚”が観測されています」
HEARTの声が、少しだけいつもと違う調子で響く。
「弾丸の集中による、感情レベルでの連結が原因と推測されます」
凌は、胸を押さえながら膝をついた。
撃ったのは、自分たちだ。
そのことを、身体の奥で、嫌というほど理解させられる痛みだった。
犠牲者を選んだのは、システムでもHEARTでもない。
この円卓に座っていた、九人分の心だった。




