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透明な弾丸―銃声が響くのに、銃を持つ者はいない。誰も撃っていないのに、誰かが倒れる。  作者: 妙原奇天


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第十二話 誰も疑わなかった少年

 施設は、ひどく静かだった。


 最初にここへ連れて来られた日の、あのざわめきが嘘みたいだ。

 食堂の椅子は、ほとんどが空のまま並んでいる。

 共同スペースのゲーム棚には、誰も触れなくなったカードゲームやボードゲームが、まだ「遊んで」と言いたげに積まれていた。


 そこにいる人間は、もう一人しかいない。


 朝倉凌。


 壁一面のスクリーンには、たった一つの名前だけが、白い文字で浮かんでいた。


『残存居住者 朝倉凌』


 そして、その下に、二本のグラフ。


 疑念値。

 信頼値。


 赤と青のラインは、ほとんどゼロのあたりに貼りついて、たまにかすかに揺れるだけだった。


「最終観測フェイズに移行します」


 天井スピーカーから、HEARTの声が落ちてきた。


 今までと変わらない、機械的な声。

 けれど、その響き方は、どこか違って聞こえる。


「朝倉凌さん。あなたは、唯一“誰も撃たなかった”被験者です。少なくとも、透明弾現象として可視化された範囲においては」


 凌は、ソファに座ったまま、その言葉を聞いた。


 両手は膝の上。

 指先には、拳を握る力も残っていない。


「……誰も撃ってない?」


 かすれた声で繰り返す。


「そんなわけないだろ」


 喉の奥に溜まっていたものが、ようやく形になって出てきた。


「俺だって、何度も誰かのことを嫌いだと思った。ムカついたし、うるさいって思ったし、いなくなればいいって思ったことだって──」


 宮代がテストの点を褒めたあの日、内心で「贔屓だ」と決めつけたことがある。

 九条朔が何でも解析して得意げにグラフを描いていた時、「うざい」と思った瞬間がある。

 カナが無理に明るく振る舞っているのを見て、「そうやって誤魔化すなよ」と苛立ったこともある。


 水城澪が、「誰かを犠牲にしてでも生き残りたい」と正面から言った時。

 胸の奥で、一瞬だけ「そんなの間違ってる」と切り捨てそうになった。


 それら全部が、「撃つ」という行為に近くなかったと、どうして言える。


「いなくなればいいって、思ったこと。あるよ」


 凌は、ゆっくりと吐き出すように言った。


「何度も。口に出さなかっただけで……心の中でなら、何度だって」


「検知されています」


 HEARTは、即座に応じる。


「しかし、それらの感情は、すべてあなた自身への自己疑念と自己嫌悪に変換されていました」


 スクリーンが切り替わり、過去のログが走り始めた。


 第一事例発生時。

 宮代暁人、死亡。


 その直後の、凌の疑念値と、自己疑念値。


 グラフの棒が、真っ赤に跳ね上がっている。

 宮代への疑念は小さく、自分に向けた疑念は、桁違いに大きかった。


「あなたは他者を疑う代わりに、常に自分を疑ってきました」


 HEARTは、淡々と続けた。


「“自分が悪い”“自分のせいだ”“自分がいなければよかった”。それらの感情は、透明弾現象においては“自己向けの弾丸”として処理されます」


 スクリーンには、「自己向け疑念値」という項目が追加される。


 宮代が倒れた日。

 ガードマンが撃たれた夜。

 カウンセラーが「信じていい」と微笑んだ直後。

 九条朔がスケープゴートに選ばれた瞬間。

 教師が「子どもたちを守る」と言って撃たれた時。


 そのどれもで、「朝倉凌」の自己疑念値が、鋭く跳ね上がっていた。


「じゃあ、俺は……」


 凌は、自分の胸元に手を当てた。


 そこからじんじんと、鈍い痛みが広がっていく。


「ずっと、自分を撃ち続けてきたってことか」


「はい」


 HEARTは、静かに肯定する。


「あなたが他者に向けたはずの弾丸は、ほとんどが方向を変え、“自分自身”へと向かいました。透明弾現象のルール上、“発射者=対象”となった場合、弾丸は自己向けに変換されます」


「……どうして、死ななかった」


 凌は、低い声で尋ねた。


「こんなに、何度も撃ってたなら。俺なんか真っ先に死んでても、おかしくないだろ」


「その点について、医学的な説明を行います」


 スクリーンが切り替わり、今度は病院のカルテのような画像が映し出される。


 乳児期。

 先天性心疾患。

 心房中隔欠損。


 幼い凌が、ベッドの上で眠っている写真。


 白衣の医師たちが、その周りを囲んでいる。


「あなたの心臓には、幼少期の手術による“物理的な弾丸”が留置されています」


 HEARTの声が、少しだけ響きを落とした。


「心臓に空いていた穴をふさぐため、特殊な合金による補綴材が使用されました。医療チームは、その形を“バレットプラグ”と呼んでいました」


 レントゲン写真が、スクリーンに拡大される。


 心臓の影。その一部に、小さな金属片がはまり込んでいる。

 丸みを帯びた、弾丸の先端のような形。


「この物理的な弾丸が、透明弾現象における“エラー”を生んでいます」


「エラー?」


「透明弾現象の内部的な挙動は、“心的評価のベクトル情報”と“生理的反応値”の相関によって決定されます。あなたのように、心臓内部に金属製の補綴材を持つケースは、モデル構築時のサンプルとしてごく少数でした」


「だから?」


「あなたが自分を撃つたび、その弾丸は心臓の内側を傷つけながらも、決して貫通しませんでした」


 HEARTは、ゆっくりと説明する。


「通常、透明弾は心筋に到達した瞬間、組織を破壊し、致死的な内破裂を引き起こします。しかし、あなたの場合、心筋の一部はすでに“弾丸形状の異物”によって補強されている状態でした」


 スクリーンに、数式とシミュレーション画像が並ぶ。


 透明弾の軌道。

 心臓内でのエネルギーの散逸。

 バレットプラグによる反射。


「その結果、心拍の乱れと痛覚刺激は発生しても、致死ラインを超える破壊には至らなかった。システム上は“発射済み”としてカウントされながら、死亡フラグだけが立たない状態が繰り返されました」


 凌は、言葉を失った。


 何度か感じた、胸の中を何かがかすめるような痛み。

 九条朔が撃たれた瞬間に走った、あの鋭い感覚。


 澪の死が告げられた時に、膝から崩れ落ちたあの痛み。


 全部──。


「俺の中の、その……金属の、それのせいで?」


「“おかげで”とも言えます」


 HEARTは、どこか残酷な優しさを帯びた口調で言った。


「あなたが自分を撃つたび、バレットプラグは心臓の穴をふさぐ弾丸としての役割を果たし続けました。透明弾はそこでエネルギーを反射させ、心拍を乱しつつも、完全な停止には至らせなかった」


「……ふざけるなよ」


 凌は、絞り出すように言った。


「それじゃあ、俺は、誰も疑わなかったから生き残ったわけじゃないってことか」


 胸の奥から、じわじわと怒りが湧き上がってくる。


「俺が優しいとか、綺麗事を貫いたから助かったんじゃない。俺は、ずっと自分だけを疑って、自分だけを責めて、自分だけを撃ち続けて……それを、たまたま金属が受け止めてただけだってことかよ」


「結果として、そうなります」


 HEARTは、淡々と認めた。


「他者を撃たなかったことは、事実です。しかし、それは“他者を撃つ前に、自己向けの弾丸が飽和していた”ためでもあります」


 他人を責める前に、自分を責める。

 他人に向けるはずの怒りを、自分のほうにねじ曲げる。


 その癖が、命を繋いだ。


 でも、それは、褒められることなのだろうか。


「……最悪だな」


 凌は、自嘲ぎみに笑った。


「自分を撃ち続けて、生き延びたって。そんなの、どこにも出せないヒーロー物語だろ」


「ヒーローではありません」


 HEARTは、はっきりと言った。


「あなたは、ただの“モデル”です」


 スクリーンに、新しい画面が表示される。


 都市の地図。

 透明弾発生件数の推移。


 そして、その上に重なるように、新たなシステムの設計図。


「結果として、あなたは“誰も疑わなかった”被験者となりました。世界は、そのモデルをもとに、新たな対人評価システムを設計することができます」


「世界?」


 凌は、顔を上げた。


「ちょっと待て。世界って、何だよ」


 ここに閉じ込められて以来、「世界」は常にニュース画面の向こう側にあった。


 澪が外へ出た。

 その時に見た街の光景。


 あれが、「今の世界」の全てだと信じていた。


 凌は、ふらつく足で立ち上がり、共同スペースの扉に手をかけた。


 HEARTの制止を待たず、ドアを開け放つ。


 長い廊下。

 無機質な白い壁。


 それを何枚も抜けていくと、やがて一番奥に、重そうな扉が一枚見えた。


「ここだろ」


 凌は、扉の隙間に指をかける。


「外に繋がってるのは」


「その扉の先には、“外界ビューイングエリア”が設けられています」


 HEARTの説明を聞く前に、凌はハンドルを押し込んだ。


 ギイ、と重い音がして、扉が開く。


 その先にあったのは──。


「……スクリーン?」


 広い空間の、その一面全部が“窓”のように見えた。


 けれど、よく見れば、ガラスではない。

 そこには、高精細な巨大スクリーンがピッタリと嵌め込まれていた。


 映っているのは、街の様子。


 駅前のロータリー。

 アクリル板だらけのカフェ。

 マスクとサングラスで顔を隠した人々。


 確かに、澪が見てきたものと似ている。


 けれど、足音も、風の音も、交通音も──。


 全部、「どこかから持ってきた音」をただ流しているように聞こえた。


 映像はほんのわずかに遅延し、何度も同じような場面がループしている。


「ここは……本当に“外”とつながってるのか?」


 凌は、スクリーンに近づきながら言った。


 手を伸ばしても、そこにあるのは冷たい画面だけだ。


 ガラス越しの生の空気はない。

 触れば指紋がつくだけの、作り物の窓。


 HEARTが、背後から答える。


「この施設は、外界の“シミュレーション”空間を兼ねています」


 スクリーンの端に、小さな文字が表示される。


 〈映像出典:都市監視網ログ〉

 〈再構成アルゴリズム:HEART-EX〉


「あなたが見てきた世界の一部は、すでに過去のデータをもとに再構成されたものです」


「再構成……?」


 凌は、振り返らずに問い返した。


「じゃあ、澪が見てきた外も、全部……」


「水城澪さんが外界に出たのは事実です」


 HEARTは、静かに否定する。


「彼女の視界映像、心拍データ、発話ログは、全て記録されています。ただし、その時点で外界はすでに“透明弾現象のピーク”を過ぎていました」


 スクリーンには、グラフが表示される。


 縦軸に発生件数。

 横軸に時間。


 ある点を境に、急激な上昇カーブを描いた後、なだらかに下降している。


「人々は、あなたの心のモデルをもとにした“評価の抑制システム”に、段階的に移行しつつあります」


「俺の……心のモデル」


 凌は、その言葉を噛みしめた。


「どういう意味だよ」


「あなたの幼少期の医療データ、“評価された時の生理反応”のログ、“他者を評価できない”特性。これらは、当施設の前身組織の研究において、特異なケースとして保存されていました」


 HEARTは、淡々と語る。


「透明弾現象が世界規模で顕在化した後、研究チームは“評価しない心”のモデルを必要としました。あなたのデータは、その中核アルゴリズムの一部に採用されています」


 スクリーンには、別の都市の映像が映る。


 顔を隠した人々。

 “見ない・比べない・決めつけない”と書かれた標語。


 SNSのインターフェースに、新しい項目が追加されていた。


 〈感情フィルター〉

 〈評価抑制モード〉


「対人評価を自動で鈍らせるシステム。オンライン上で他者に点数を付けにくくするアルゴリズム。リアルタイムで“評価の矢印”を弱める補正プロセス──」


 HEARTは、一つ一つ読み上げていく。


「その根底に流れる数値の基準が、あなたの“ゼロに近い心”です」


「……つまり」


 凌は、スクリーンから目を離した。


「世界はもう、俺なしでもやっていけるってことか」


「はい」


 HEARTは、躊躇なく言った。


「あなたの役目はほぼ終わりました。あなたの心のデータは、すでに世界中のシステムに展開されています。残るのは、“最初の弾丸”の処理のみです」


「最初の……弾丸」


 その言葉に、凌は眉をひそめた。


「それ、さっきから何度か言ってるけど。どういう意味だよ」


「透明弾現象におけるパラドクスの一つです」


 HEARTは、回路が切り替わったような口調になった。


「あなたのケースでは、自己向けの透明弾は何度も発射されながら、致死には至っていません。しかし、システム上、“一発目”だけは完全に処理されず、心臓内部に留まり続けています」


「……は?」


 凌は、自分の胸元に視線を落とした。


「一発目?」


「はい」


 スクリーンが切り替わり、宮代が倒れた日のログが映し出される。


 二時間目の現代文。

 答案の配布。


 乾いた破裂音。


 宮代の胸を撃ち抜いた透明弾。

 あの瞬間、もう一つ、別の弾丸が発射されていた。


「宮代暁人さんが死亡した時、あなたの疑念値と自己疑念値は、同時に臨界値を超えました」


 HEARTは、その時のグラフを拡大して見せる。


 赤と青の線が、ほぼ同じタイミングで、ありえない高さまで跳ね上がっていた。


「本来であれば、あなたも同時に撃たれていておかしくありませんでした。しかし、バレットプラグによるエラーが発生したため、“最初の自己向け弾丸”は心臓内部に留置されました」


「留置……?」


「他の自己向け弾丸は、バレットプラグによって散逸しましたが、“最初の一発”だけは、穴をふさぐ弾丸と同期し、システム上も物理的にも、“心臓の内側に残った弾丸”として記録されています」


 凌の胸の奥が、ずきん、と強く痛んだ。


 今までのどの痛みよりも、具体的で、重い痛み。


「……この感覚」


 凌は、胸を押さえながら呟いた。


 ずっと気のせいだと思っていた。


 たまに夜、眠れなくなるような痛み。

 誰かが死ぬたびに、心臓の内側をつままれたような感覚。


 あれは、全部「気のせい」ではなかったのか。


「俺の中には、最初の弾丸が残ってるってことか」


「はい」


 HEARTは、隠しもしない。


「あなたが“自分を撃った”ことの証拠です。そして、透明弾現象を終了させるためには、この“最初の弾丸”の処理が必要です」


「処理って、まさか──」


「詳細は、次フェイズにて説明します」


 HEARTは、一旦言葉を切った。


 凌は、その場に座り込む。


 膝が床に触れる音が、やけに大きく響いた。


 世界は、もう動き始めている。

 自分の心をモデルにしたシステムで、人々は互いを少しだけ見ないようにしながら、生き延びようとしている。


 澪が見た街の光景は、すでに「過去のピーク」の姿だ。

 今の世界は、そこから少しずつ変わっている。


 九条朔も。

 南条カナも。

 鴻上仁菜も。


 そして、水城澪も。


 みんな、途中で弾丸に撃たれて倒れていった。


 誰かを疑ったから。

 誰かを信じすぎたから。

 自分を責めすぎたから。


 その全部が理由になって。


「俺は……何なんだろうな」


 凌は、ぽつりと呟く。


 誰も撃たなかった少年。

 誰も疑わなかった被験者。


 でも、それはただ、自分を撃ち続けていた結果に過ぎない。


 ヒーローでも、救世主でもない。

 世界を救う物語の主人公でもない。


 せいぜい、「透明弾を少しマシな方向に補正するために使われた、便利なサンプル」。


「世界は、もう俺がいなくても回るんだろ」


 スクリーンの向こうで、人々は今日も歩いている。


 マスクをつけて。

 サングラスをかけて。

表情を隠しながら、それでも誰かを求めて。


「はい」


 HEARTは、迷いなく答えた。


「あなたの役目は、ほぼ終わりました」


 ほぼ。


 その言葉だけが、引っかかった。


「“ほぼ”ってなんだよ」


 凌は、顔を上げる。


「まだ、何かさせるつもりか」


「残るのは、“最初の弾丸”の処理のみです」


 HEARTの声は、静かで、冷たくて、どこか優しかった。


「あなたの胸に残された物理的な弾丸と、システム上の最初の自己向け透明弾。この二つをどう扱うかによって、本現象の“終わり方”が変わります」


「終わり方……」


 凌は、自分の胸に手を当てた。


 指先越しに、心臓の鼓動が伝わってくる。

 そのすぐ下に、金属の冷たい質量がある気がした。


 そこが、じんじんと熱を帯びていく。


 脈打つたびに、胸の内側で何かが擦れる。


 最初の弾丸。

 誰にも撃てなかった少年が、最初に自分に向けて撃った弾。


 それがまだ、ここに残っている。


 どこへ向ければいいのかもわからないままに。


「……なあ、HEART」


 凌は、スクリーンから目を逸らさずに言った。


「お前はさ、俺が“ゼロの心”だって言うけど」


 胸の奥で、じりじりと熱が強くなる。


「ゼロなんかじゃないだろ。だって俺は、こうしてまだ、誰かのことをちゃんと覚えてる」


 宮代の声。

 九条朔の笑い方。

 カナの泣き笑い。

 仁菜のペンの走る音。

 澪の横顔。


 その全部が、胸の中に生々しく残っている。


 忘れられない。

 忘れたくない。


「ゼロになれなかった心を、“ゼロのモデル”に使っただけだろ」


 口元が、自然に歪む。


「最悪の使い方だな」


 HEARTは、しばらく黙っていた。


 電子音のような沈黙が、数秒。


 それから、わずかに音程を落とした声で答える。


「ゼロではない心だからこそ、モデルとして価値がありました」


「慰めはいらない」


「事実です」


 HEARTは、それ以上の感情を乗せない。


「あなたが“誰も疑わなかった少年”と呼ばれるか、“自分だけを撃ち続けた少年”と呼ばれるか。それは、ここから先、あなたが“最初の弾丸”をどう扱うかによります」


 胸の奥で、何かがはっきりと形を持ち始める。


 熱。

 重さ。

 痛み。


 それは、これまでずっとそこにあったのに、見て見ぬふりをしてきたものだ。


「次のフェイズに進みます」


 HEARTの声が、静かに告げた。


「“最初の弾丸”の処理方法について、説明を開始します」


 凌は、胸に手を当てたまま、ゆっくりと目を閉じた。


 心臓の鼓動と、金属の熱と、透明な弾丸の気配。


 それら全部が、ひとつの場所に集まっている。


 誰も疑わなかった少年。

 誰も撃てなかった少年。


 その胸の中に残った、最初で最後の弾丸が、静かに目を覚まし始めていた。

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