第5話:生活基盤
5話目も読んでくださってるそこのアナタ(〃ω〃)
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そして、これも何かの縁。お気に召したら、ぜひブクマをお願いします…!
※最後におまけがあります
純白の小屋が完成して以来、俺の生活は劇的に向上した。
雨風を気にせず眠れる夜。頑丈な壁に守られているという安心感。そして何より、自分の手で文明的な生活を築き上げたという達成感が、精神的な余裕をもたらしてくれた。
その余裕は、俺を次なる創造へと駆り立てる。
「家があるなら、次は家具だな」
まずはベッドだ。今までは乾いた葉を敷き詰めただけの粗末な寝床だったが、もっと快適な眠りが欲しい。
俺は小屋の骨組みを作ったのと同じ要領で、防腐木材からベッドフレームを切り出し、組み上げた。マットレスの代わりには、森で集めた柔らかい蔓植物を使い、魔法で繊維をほぐしてクッション性を高める。
問題は、それを覆う布だ。俺は島の探索で見つけた、人の背丈ほどもある、大きくて丈夫な葉を使うことにした。
「縫い合わせるには……針と糸、か」
まず、魚の骨を拾い上げ、その先端を【塩創造】で鋭く尖らせ、反対側には極小の穴を開ける。これで「骨の縫い針」の完成だ。
糸は、細くて丈夫な蔓植物の繊維を丁寧に裂いてより合わせ、仕上げに薄く塩の結晶でコーティングして強度を増した。自作の針と糸で、一枚一枚、葉を丁寧に縫い合わせていく。地道な作業だったが、少しずつ形になっていくのが楽しくもあった。こうして完成した「葉っぱのシーツ」でマットレスを覆えば、見た目も寝心地も格段に向上した。
その寝心地は、王宮の天蓋付きベッドにも劣らない、と本気で思った。
次に、テーブルと椅子。これもまた、防腐木材を丁寧に加工して作り上げる。表面を滑らかにするのも、【塩創造】で木材の表面繊維をわずかに緩めてから、平らな石で磨き上げるという方法を編み出した。
自作のテーブルに、塩焼きの魚と、焚火で焼いた木の実を並べる。ただそれだけで、食事が何倍も豊かで、文化的なものに感じられた。
◇
生活基盤が整ってくると、俺の興味は「保存」へと移っていく。
魚は毎日獲れるが、嵐が続けば食料が尽きる可能性もある。それに、肉も食べてみたい。
「燻製小屋と、貯蔵庫を作ろう」
計画を立てると、実行は早かった。居住小屋の少し離れた場所に、塩レンガで小さな燻製小屋を建設。中には魚を吊るすための梁を取り付けた。
森で手に入れた香りの良さそうな木を燃やし、その煙でじっくりと魚を燻していく。仕上げに、保存性を高めるために表面に薄い塩の膜をコーティング。これで長期保存可能な燻製魚の完成だ。
貯蔵庫は、居住中の小屋の床下を利用することにした。地面を掘り下げ、壁と床を塩レンガで固める。こうすれば湿気を防げるし、地中の温度は一定に保たれるため、食料の保管に最適だ。
前世の知識では「地下室」と呼ばれるものに近い。
◇
食料の保存もある程度可能となり、俺は本格的な島の探索へと足を向ける。
「火山まで行くにはまだ遠いな…。まずは本格的な森の探索に出るか」
塩のナイフを腰に下げ、自生していた瓢箪に真水を満たし、保存食として魚の燻製をいくつか携える。準備を整え、俺は未知の領域へと足を踏み入れた。
森は、想像以上に深く、豊かだった。陽光を遮るほどに生い茂る木々。見たこともない鮮やかな色の花々。甘い香りを放つ果実をつけた木や、食用になりそうなキノコも見つけた。
俺は前世の曖昧な知識と、動物たちがそれを食べているかどうかを慎重に観察し、安全そうなものだけを採集していく。
沢を遡っていくと、小さな滝と滝壺があった。水は驚くほど澄んでおり、水中には小魚が泳いでいる。ここなら淡水魚も獲れるかもしれない。
さらに奥へ進むと、地面がぬかるみ、獣の足跡が無数に残された場所に出た。その中には、明らかに大型獣のものと思われる、深く大きな蹄の跡があった。
「……猪、か」
ゴクリ、と喉が鳴る。魚や木の実だけでは、どうしても物足りなさを感じていた。香ばしく焼いた肉に、最高の塩を振って食べる……想像しただけで、腹が減ってくる。だが、相手は獰猛な獣だ。ナイフ一本で立ち向かうのは無謀すぎる。
「罠、だな……」
前世の記憶を探ると、いくつかの原始的な罠の構造が思い浮かんだ。落とし穴が、一番安全で確実だろう。
俺は獣の通り道と思われる場所に、深さ2メートルほどの落とし穴を掘った。底には、先端を塩の刃で鋭く尖らせた杭を何本も突き立てる。そして、穴の内壁を【塩創造】で固め、表面だけを脆く偽装した。猪が落ちた際に壁が崩れて脱出の足場になるのを防ぐ、いわば「蟻地獄」だ。
仕上げに、穴の上に細い枝を格子状に渡し、その上に土や葉を被せて完璧にカモフラージュした。罠を仕掛けてから三日後の早朝。
森の方から、今まで聞いたことのない、獣のけたたましい叫び声が響き渡った。
「かかったか……!」
急いで駆けつけると、落とし穴の底で、巨大な猪が杭に体を貫かれて絶命していた。
命を奪ったことへの、一瞬の罪悪感。だが、それ以上に、生きるための糧を得たという原始的な喜びが勝った。
猪の解体は、困難を極めた。前世の知識はあっても、実践は初めてだ。俺は塩で作り出した鋭利なナイフを使い、試行錯誤しながら、なんとか肉と皮を分けていく。大量の肉は、すぐに食べきれない分を塩漬けにして保存性を高め、燻製にもした。これで当分の間、食料に困ることはないだろう。
その夜。
俺は焚火の前で、厚く切った猪の肉を串に刺し、じっくりと炙っていた。滴り落ちる脂が火に落ちて、じゅう、と音を立てる。食欲をそそる香りが、鼻腔をくすぐった。
焼きあがった肉に、精製したての純白の塩を、ぱらり、と振りかける。熱いのも構わず、かぶりついた。
「―――っ! うまい……!」
野性味あふれる肉の力強い旨味と、香ばしい脂の甘み。それを、完璧な塩が引き締め、味の輪郭をくっきりとさせている。
王宮のどんなご馳走も、これには敵わない。俺は夢中で肉を貪った。腹が満たされると、俺は焚火の揺らめきをぼんやりと眺めた。
家がある。食料も潤沢だ。水も飲み放題。生活は、もはやスローライフと呼んでも差し支えないほどに安定していた。
だが、満ち足りたはずの心に、ぽっかりと穴が空いているような感覚があった。この感動を、この美味さを、誰かと分かち合えたなら。「うまいな」と言い合える相手が、隣にいてくれたなら。
そんな叶わぬ願いを、星空に溶かすように呟く。
「……一人っていうのも、少しだけ、寂しいものだな」
その呟きは、夜の静寂に吸い込まれて消えた。
この穏やかすぎる楽園に、やがて嵐と共に「彼女」が流れ着くことになるとは、俺はまだ思ってもみなかった。
****おまけ******
主人公レオンと次回登場するヒロインのイメージイラストを先出しでお届けします。AIで描いたので雰囲気程度にお受け取りください。
お読みいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m
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