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第11話:源泉かけ流し露天風呂

いつも読んでくださりありがとうございます!


最新話をお届けします。

楽しんでいただけると嬉しいです。


明日も更新予定です(*^^*)


それでは、どうぞ!



 

 温泉の発見は、俺たちの生活に新しい目標と、弾むような活気をもたらした。


「どうせなら、寝転がれるスペースも欲しいな」

「足場が悪いと危険ですわ。岩を削って、階段を作りませんと」

「湯加減を調整できるように、近くの沢から水を引く仕組みも必要だな」


 翌朝の食卓は、まるで秘密基地の計画を立てる子供たちのように、俺たちの尽きないアイデアで持ちきりだった。

 

 計画が決まれば、行動は早い。


 俺たちは必要な道具を準備し、再び源泉地へと向かった。それはもはや未知への冒険ではなく、自分たちの庭を造りに行くような、楽しいピクニックだった。

 

 現場に到着すると、まずはエリの出番だ。


「レオンさん、少しお待ちください。まずは、このお湯の性質と周辺の安全性を、私のギフトで詳しく調査します」


 彼女は真剣な表情で【鑑定眼】を集中させ、お湯や周囲の岩盤をじっと見つめる。その横顔は、王宮のどんな魔術師よりも頼もしく見えた。

 

 しばらくして、彼女は顔を上げた。

「…レオンさん、わかりましたわ。このお湯は、肌を滑らかにする成分と、筋肉の疲れを癒やす成分が非常に豊富です。まさに『癒やしの湯』です。ただ、わずかに酸性が強いので、長湯は避けた方がよさそうです」


 専門家のような分析結果に、俺は感心して頷く。

 彼女はさらに、岩盤の強度や最適なお湯の流れまで計算し、完璧な設計図を頭の中に描き出した。


 俺はその設計図に基づき、【塩創造ソルト・クリエイト】で必要な資材を作り出していく。熱に強く、肌触りの良い「耐熱平滑塩レンガ」や、パイプの役割を果たす「塩セラミック管」。俺の魔法は、エリの知識という指針を得て、その真価をさらに発揮していた。

 

 そこからの数日間は、俺たちの楽園における、最初の大規模土木工事となった。


 俺が【塩創造ソルト・クリエイト】で硬い岩盤を削り、エリが設計した通りの形に湯船を掘り下げる。掘った湯船の内側には、二人で協力して「耐熱平滑塩レンガ」を敷き詰め、安全で美しい湯船を完成させた。


 湯温を調整するため、近くの沢から冷たい水を引き込むための細い水路も「塩セラミック管」で設置した。

 

 最後に、着替えるための簡単な目隠しとなる「塩の壁」と、脱いだ服を置くための棚も作り上げた時、俺たちの目の前には、自然と調和した、完璧な露天風呂が姿を現していた。


 大変な作業だったが、不思議と疲れはなかった。二人で一つのものを創り上げる喜びが、それを上回っていたからだ。

 

「よし、俺が毒見ならぬ、湯加減見だ」


 その日の夕方、完成したばかりの露天風呂に、俺は一番乗りで足を踏み入れた。

「うわっ…!」


 思わず声が出た。じんわりと身体の芯まで染み渡る、極上の温かさ。手足を思い切り伸ばし、満天の星空を見上げながら、俺は心の底から呟いた。


「最高だ…」

 一日の疲れが、お湯に溶けて消えていく。これまでの苦労が、全て報われた瞬間だった。

 

 次に、エリの番だ。

 彼女は少し恥ずかしそうにしていたが、お湯に身を浸した瞬間、その極上の心地よさに、思わず「はぁ…」と、魂の抜けたような、しかし幸福に満ちたため息を漏らした。


 湯煙の向こうで、彼女が心からリラックスしているのが伝わってくる。

 

 湯上がりのエリは、いつもより肌が艶やかで、頬をほんのりと上気させていた。その姿は、月の光を浴びて、まるで物語に出てくる妖精のようで。俺は思わず見とれてしまい、自分の心臓がどきりと音を立てたのに気づいて、慌てて視線を逸らした。

 

 持ってきた果実水を飲みながら、俺たちは並んで腰掛け、静かに星空を見上げていた。


 心地よい疲労感と、満ち足りた幸福感。

 エリが、静かに言った。

「…本当に、夢のようですわ。追放された身でありながら、こんなにも穏やかで、贅沢な時間を過ごせるなんて」


「ああ」と、俺も頷く。「エリがいてくれるからだよ。一人じゃ、こんなもの絶対に作れなかったし、そもそも見つけられなかった」


「それは、レオンさんがいてくださるからですわ」

 俺たちは自然と微笑み合った。

 この楽園は、もう孤独な場所ではない。二人で創り、二人で楽しむ、かけがえのない場所なのだ。その事実が、何よりも俺たちを温かく満たしていた。

 

 だが、そんな穏やかな時間の中で、俺は空の様子に、ほんのわずかな違和感を覚えていた。

 星の瞬きが、いつもより少ない。そして、遠い水平線の向こうが、不気味なほど黒く淀んでいる。

 海風も、心なしか湿り気を増している気がした。

 

「レオンさん…?」

 俺の視線に気づいたエリが、不思議そうに顔を上げる。

 

「いや、なんでもない。少し、冷えてきたな。そろそろ小屋に戻ろうか」

 俺はそう言って笑顔を作ったが、胸の内で、小さな不安の種が芽生えたのを、否定することはできなかった。

 

 この楽園を包む穏やかな空気が、永遠に続くものではないのかもしれない。

 そんな、漠然とした予感が、嵐の前の静けさのように、俺の心を微かに揺らしていた。

お読みいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m


次回からまた物語が一気に進みます!

楽しみにお待ちください。


今後の展開に向けて、皆さまの応援が何よりの励みになります(>_<)


少しでも「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ぜひ**【ブックマーク】や【評価(★〜)】、【リアクション】、そして【感想】**で応援していただけると、作者が泣いて喜びます(そして執筆が捗ります)(#^.^#)


誤字脱字報告も大歓迎です。


皆さまの声が、皆さまが考えてる100万倍、私の創作活動の大きな原動力になります。


次回更新も頑張りますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです(*^ω^*)

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