お化け屋敷
「それにしても、すっごい似合ってたね奏良さん」
「……へっ?」
「ほら、さっきのメイドさん。遠目からでもすぐ分かったよ。あっ、奏良さんだって。私も入りたかったんだけど、すっごい並んでたし後にしよっかなって思って」
「……あ、ああ……その、恐縮です」
それから、ほどなくして。
そんなやり取り交わしつつ、華やかな廊下を歩いていく秋奈さんと僕。……うん、見てたんだね。あと、後で来る予定はあるんだね……うん、すっごい恥ずかしい。
ともあれ、その後も他愛もない話に花を咲かせつつ歩いていく。そして――
「……あっ、あれが良いな!」
「……へっ?」
「あれ、嫌? あっ、ひょっとして怖いとか?」
「……あ、えっと……」
そう、楽しそうに尋ねる秋奈さん。……いや、怖いといいますか……その、少々気まずいといいますか……。
さて、秋奈さんの示した先は真っ黒なカーテンに覆われたお部屋――お化け屋敷の会場たる、一年A組の教室で……うん、気まずい。
「……うわぁ、なんか本格的だね。遊園地と変わんないレベルの」
「……確かに、すごいですね」
それから、10分ほど経て。
そう、感嘆の声を洩らす僕ら。今いるのは、仄かに明かりが灯るだけの暗い空間。言わずもがなかもしれないけど、お化け屋敷の中にいるわけで……うん、まあ断る口実もないしね。
……ただ、それにしても……うん、本当に本格的で。遊園地、とまでは流石に言わなくとも、そう言いたい気持ちも分かるくらいに。……そして、結構怖い。……まあ、そういう場所だしね。
……ところで、それはそれとして――
「……あの、秋奈さん。その……少し、恥ずかしいのですが……」
「へっ、なんで? どうせ誰も見てないよ? こんなに暗いんだし」
「……まあ、それはそうかもしれませんが……」
「……それとも、嫌? 私とこうしてるの」
「あっ、いえ嫌というわけでは!」
「そっか、なら良かった」
そう、おずおずと告げる。すると、事も無げに答える秋奈さん。暗がりのためはっきり顔は見えないけど、弾けるようなその声音から楽しんでいるのは伝わって……うん、楽しんでくれてるのならそれは何よりだけども。
さて、何が恥ずかしいのかというと……その、この空間に入ってからずっと腕を絡めているわけでして。怖いから離れないでほしい、とのことだれけど……うん、こう言っては申し訳ないけど怖がってるようにはとても思えな――
「――う〜〜ら〜〜め〜〜し〜〜や〜〜」
「………………へっ?」
「……いやぁ、びっくりしたね奏良さん。流石に、あれは予想外だったよ……」
「……はい、僕もです秋奈さん。ほんと、びっくりですよね……」
それから、数分経て。
比較的人の少ない踊り場の辺りで、少し呼吸を整えつつそんな会話を交わす僕ら。……うん、ほんとびっくりです。
さて、何があったのかというと――卒然、ライトアップと共にふっと現れたのは真っ白な着物を纏った黒髪の美少女。頭に白い三角の布をつけていることからも、幽霊のコスプレで間違いないだろうけど……なんと、その子が出口までずっと追いかけてきて。……うん、ほんとびっくりだよね。それまでの皆さんはその場で驚かせるだけだったのに。
あと、何より怖かったのは、その綺麗な手に握られたギラリと光る銀の刃。まあ、偽物であることは分かってるけど……うん、それでもほんと怖かった。




