願い
「――改めてだけど、ありがとな三崎。お陰で、ちょっと楽になったわ」
「……いえ、笹宮くん。少しでもお役に立てたのなら何よりです」
それから、数分経て。
そう、少しバツの悪そうに告げる笹宮くん。……やっぱり、余計なことだったかな? いや、でも楽になったと言ってくれてるわけだし……うん、ここは素直に信じなきゃね。
……ただ、それはそうと……うん、どうしよう。なにか、話した方がいいかな? それとも、やっぱり今はまだそっとしておいた方が――
「……俺さ、昔は全然しゃべれなかったんだよ」
「……へっ?」
そんな思考の中、ポツリとそう口にする笹宮くん。そして、そんな彼の言葉に唖然とする僕。……全然しゃべれなかった? 笹宮くんが? それは、今の彼からだと何ともイメージしがた――
「……まあ、今だって別に口達者なわけでもねえんだけどな。でも、昔はほんとしゃべれなかった。……いや、どころかマトモに人と目も合わせられなかった」
「……そう、だったのですね……」
「……でも、そんな引っ込み思案な俺をいつも引っ張ってくれたのが灯里だった。名前の通り、灯里はいつも明るくて友達も多くて……それで、自分の友達と俺が仲良くできるよう取り持ってくれたりもして。だから、俺が少しは話せるようになったのも、友達ができるようなったのも全部灯里のお陰で。
……それに、それだけじゃねえ。俺が馬鹿にされたりしたら、そいつらに怒ってくれたりもした。弱くて情けない俺を、いつも護ってくれた。だから、っていうのもおかしいかもしれねえけど……それでも、今度は俺が支えたい、護りたいって思うんだ。烏滸がましい、過ぎた願いなのかもしれないけど……それでも、俺にとって灯里は恩人で、誰より大切な人だから」




