……うん、ほんとすごいね。
「…………ふぅ」
翌日、公園にて。
澄み切った夜の空の下、深く呼吸を整える僕。……いや、僕が緊張したところで、ではあるんだけども……それでも、どうにも抑えられなくて。
と言うのも……まあ、説明するまでもないかな? 理由は、昨日の――露天風呂で話していた、笹宮くんの告白の件に関してで。そして、今頃はきっと――
――トゥルルルル。
「…………あ」
ふと、ポケットから響く音。発信主は……うん、確認するまでもないよね。徐にスマホを取り出し、応答ボタンに指を添える。そして――
『――こんばんは、奏良先輩。今、少しお時間宜しいですか?』
そう、スマホ越しに届く澄んだ声。まあ、彼女しかいないよね。少なくとも、今このタイミングでは。ともあれ、返事をすべく口を開いて――
「……はい、もちろんです白河さん。昨日は、お電話せず申し訳ありません」
『……いえ、お気になさらず。そもそも、あくまで可能であれば、というお話でしたし。なので、こうしてこちらからお電話するのも本来は憚るべきなのですが……その、どうにも先輩のご様子が気になってしまって』
「……白河さん」
そう伝えると、穏やかな声音で答えてくれる後輩の美少女。そんな彼女の応対に、優しさにいっそう申し訳なさが心に募る。……だって、昨夜も電話できなかったわけじゃないから。ただ、僕の――
『……あの、奏良先輩。ひょっとして、何かありましたか?』
『…………へっ?』
すると、ふとそう問い掛ける白河さん。だけど、何かあったわけじゃない。少なくとも、僕自身には何も――
『……お電話せず申し訳ありません――聞き違いでなければ、先輩は先ほどそう仰っていましたよね? もちろん、単なる言葉の綾であり深読みでしかないのかもしれませんが……『できず』、ではなく『せず』であったことに少々違和感を覚えてしまいまして。もしかすると、時間などのご都合がつかず掛けられなかったのではなく、何かしらの理由によりご自身の意思でお掛けにならなかったのかなと』
「…………」
すると、少し躊躇う様子でそう口にする白河さん。そんな彼女に、僕はただ茫然と……そして、脱帽するばかりで。……うん、ほんとすごいなぁ。
……ただ、それはそうと……さて、どうすべきか。クラスどころか学年も違う彼女に伝えても、恐らくは問題ないとは思うけど……でも、やはり僕の口から容易く話して良いものかは――
『……あの、ひょっとしてですが……笹宮先輩が、桜野先輩に告白をなさった、とか?』
「…………へっ?」
思案に暮れていた最中、不意に届いた笑劇の問いに茫然とする僕。……えっと、なんで? なんで、白河さんがそれを――
『……まあ、あくまで推測ですけどね。私自身、笹宮先輩とお顔を合わせたことはありませんが……それでも、今までにお聞きしていたお話から、彼が桜野先輩に好意を寄せていらしたのは明確――ならば、修学旅行というこの特別な機会にと告白を決意しても何ら不思議はありませんし。そして、それならば昨日、先輩が私にご連絡なさらなかった点も腑に落ちます。先輩にとって、それはとても心の揺さぶられる出来事のはずですから』
「…………」
すると、そんな僕の疑問に答えるように理路整然と説明をしてくれる白河さん。……うん、ほんとすごいね。もはやエスパーかと思うくらい。




