……まあ、無理もないよね。
「――にしてもほんと広えよなぁ、ここ。家にもあったら良いのになぁ」
「ふふっ、そうですね笹宮くん。でも、流石に一人だとこの広さは落ち着かないかも。やっぱり、大勢いてこその場所なのかなと」
「ははっ、そりゃそうだな」
それから、ほどなくして。
隣で頭を洗いつつ、無邪気な笑顔でそう口にする笹宮くん。今更ながら、こういった冗談を言ってくれるような間柄になったんだなぁと沁み沁み思ったり。……ところで、それはそれとして――
「……ん? どうかしたか三崎」
「あっ、いえ! ……その、何でもないです」
「……?」
すると、首を傾げ尋ねる笹宮くん。そして、そんな彼に慌てて答えつつさっと目を逸らす僕。……うん、我ながら怪しいことこの上ない。
ともあれ、彼の問いの理由は、僕が彼の――しっかりと鍛えられたその逞しいお身体をじっと見ていたからだろうけど……うん、言えないよね。僕が褒めても、気持ち悪いと思われちゃうかもしれないし。
「……ふぅ、気持ちいいなぁ。こう、疲れが一気に取れてく、みたいな?」
「そうですね、笹宮くん。全身がすっと癒えていく感じがします」
それから、数十分後。
のんびりとお湯に浸りつつ、そんなやり取りを交わす僕ら。微かに頬を撫でる夜風がほどよく、いっそうの心地好さを感じる。
「……なぁ、三崎。今日、神社に行ったじゃん? それで、あん時……」
「……笹宮くん」
すると、ふとそう口にする笹宮くん。少し言い倦ねている様子だけれど、続く言葉なら大方察せられて。なので――
「……お祈りでしたら、健康のことを」
「……へっ? あっ、そうなのか……いや、と言うか健康かよ。まあ、大事だけどさ」
そう伝えると、少し呆気に取られたような――それでも、ほどなくふっと微笑む笹宮くん。……まあ、縁結びの神社だしね。それでも、他のことをお祈りしてもさしたる問題はないはずで。
「……それでさ、三崎。俺さ、この旅行で……いや、何でもない」
「……笹宮くん」
すると、そう口にして自身で留める笹宮くん。僕と違い、いつもはっきりとした彼にしては珍しい様子だけれど……まあ、無理もないよね。だって、言おうとした言葉はきっと――




