歌唱タイムです。
「……へぇ、お上手ですね三崎先輩」
「……ふん、まあまあだな」
「……あ、ありがとうございますお二人とも」
それから、10分ほど経て。
この上もない緊張の中歌唱を終えると、ほどなく感想をくださる弓島さんと江川くん。……その、大変恐縮です。そして、ふと隣を見ると、先ほどとは異なるたいそう嬉しそうな笑顔の白河さんが……ふぅ、良かった。
「……そんじゃ、次は俺が歌っていいか?」
「ええ、もちろんです江川くん」
その後、ほどなくすっと立ち上がりそう問い掛ける江川くんに微笑み答える白河さん。そして、彼女に続き弓島さんと僕も同様の答えを返す。……まあ、僕に聞かれてるわけでもないだろうけど。
ともあれ、どんなふうに歌うのかなと楽しみにしつつ江川くんをじっと見つめる。そして――
「……とても格好良かったです、江川くん」
「ええ、とても素敵でしたよ江川くん。久方ぶりに聴きましたが、やはり十八番だけあってこの曲は合っているように思いました」
「……そ、そうか? まあ、このくらいはな!」
それから、数分経て。
そう、それぞれ感想を述べる僕と白河さん。そんな僕らに――いや、白河さんに対し照れたような様子で答える江川くん。一方、そっと視線を移すと何処か複雑な表情の弓島さんが。……えっと、何と声を……いや、よそう。僕が出しゃばっても、きっとお節介にしかならないし。
「……それじゃ、次は私だけど……それじゃ、『いつも通り』一緒に歌ってね、拓真」
「……お、おう」
その後、徐にマイクを取りそう口にする弓島さん。どうやら、お二人は一緒に歌うようで……うわぁ、楽しみだなぁデュエット。
「……とても素敵でした、お二人とも」
「ええ、とても素晴らしかったです。息もピッタリ合っていましたし」
「……おお、ありがとな」
「……その、ありがとうございます」
それから、ほどなくして。
そう、再びそれぞれ感想を述べる僕と白河さん。そして、そんな僕らに控えめな様子で答える江川くんと弓島さん。……まあ、江川くんはやはり僕には言っていないのだろうけども。
「……さて、次は私ですが……何か、リクエストはありますか? 奏良先輩」
「……へっ? ……あっ、その…………その、白河さんのお好きな曲を歌っていただけたらと」
「……そうですか。はい、了解しました」
すると、ふとそう問い掛ける白河さん。そして、そんな彼女に躊躇いつつ答える僕。……うん、何か言えば良かったよね。我ながらノリが悪い。
……ただ、決して歌ってほしい曲がなかったなんてわけではなく。なのに……どうしてか、今それを口にするのは躊躇われてしまって。




