勉強会
「――改めてだけど、ほんとありがとな三崎! いやーほんと今回は赤点取るとやばくってさ!」
「いえ、笹宮くん。どれほどお役に立てるか分かりませんが、一緒に頑張りましょう」
「おう!」
それから、10分ほど経て。
少しばかりの雑談を経て、鞄から教科書やノートを取り出し告げる笹宮くん。そんな彼の朗らかな言葉に、笑顔にこちらまで気合いをもらえて……うん、僕も頑張らなきゃ。
「……それじゃ、まずは……いや、やっぱもうちょっと雑談を――」
「やる気あんの?」
すると、笹宮くんの言葉に即座に厳しいツッコミを入れる桜野さん。だけど、その雰囲気が何とも穏やかでクスッと微笑ましくなってしまったり。
「……それで、ここはカンマがないから少し分かりづらいですけれど、shouldが倒置により前に――」
「……へぇ、なるほどなぁ。さっきからずっと思ってたけど、教えるの上手いよな、三崎」
「……へっ? あっ、いえそんな……ですが、ありがとうございます、笹宮くん」
それから、数十分経て。
そう、感心のご様子で告げてくれる笹宮くん。教えるのが上手いだなんて、僕には過分にして勿体ないお言葉だけど……でも、ありがとうございます、笹宮くん。
ところで、ここまでの感想だけども……正直、今まで赤点があったのが不思議なくらいで。尤も、まだ一教科目だし他の教科は分からないのだけど……それでも、今取り組んでいる英語にしても以前は赤点だったなんて全く信じられないくらい笹宮くんは理解力が高くて……うん、少し気が早いかもだけど言い切れる。これなら、絶対に大丈夫。
「……でもさ、やっぱ情けねえなって。勉強とか、本来は自分でやるもんだろ? 灯里も三崎も……たぶん、みんなもそうしてるだろうし。なのに、俺は……」
すると、勉強が一段落した辺りでそう口にする笹宮くん。まあ、みんなもそうしているかどうかは分からないけれど……ともあれ、そんな沈んだ表情をする理由なんてどこにもない。だって――
「……そんなことないですよ、笹宮くん。苦手なことや分からないことを、正直に打ち明けるのはとても勇気のいること……それでも、貴方は打ち明けた。教えてほしいと、素直に頼んでくださった。敬意こそ抱けど、情けないなど皆目思いません」
「……三崎」
そう、ゆっくりと口にする。ちょっと恥ずかしいけれど、じっと彼の瞳を見つめながら。……どう、だろう? 少しでも届いてくれたのなら僕は嬉し――
「……聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥、なんて言葉もあるわけだしね。でも、あたしが教えてもほとんど効果なかったのに、三崎ならあっさり覚えるってどういうこと?」
「……いや、それは……その、すまん」
すると、ほどなく頬杖を突きつつ不服の意を示す桜野さん。だけど、言葉とは裏腹に声音はとても柔らかで。
その後も、軽く雑談を交えつつ和やかな雰囲気で勉強を続ける僕ら。……そう言えば、こうして誰かと一緒に勉強するって初めてだったけど……うん、すっごく楽しい。




